戦場のメリークリスマス

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『戦場のメリークリスマス』




 
 季節は冬。

 身も凍る寒さに震えながらも、しんしんと舞い落ちる粉雪に自然と微笑みも深くなる。



「綺麗ね…」



 雪が降っていると聞き、ファルコンの甲板に出ていたセリスとロック。
 かじかんだ手に、はぁっと息を吐きながらセリスは空を見上げて呟いた。

 静かに舞う六花。
 その美しく儚い結晶は、彼女の目を捉えて離さない。

 そんなセリスを微笑ましく見つめ、ロックは手摺りに背を預けながらセリスに問いかけた。



「セリス。クリスマスプレゼント何がいい?」



 クリスマスイブは3日後。

 捩れた魔導士との決戦を目前に控え、今は大事な時期だとは判っているけれど、せめてクリスマスくらいはその事も忘れて過ごしたいものだと全員一致で思っていた事により、その日だけは思い思いに過ごそうと皆で決めていた。



「そんな…特に欲しいものなんてないわよ」



 思いがけない質問にセリスは少し驚きながら、苦笑混じりに返事を返す。



「それは嘘だな。お前欲しいものあるだろ?喉から手がでるくらいのさ」
「べ…別にないわよ?そんなの」
「だって俺知ってるもん。お前が何欲しがってるか」
「なっ…何よ。言ってみなさいよ」



 やけに自信ありげに食い下がってくるロックにたじろぎつつ、セリスはとりあえず答えを聞いてみる。



「そりゃ〜モチロン、俺の愛だろ?」



 満面の笑みを返され、セリスは少し照れながらも「間に合ってるわ」と笑って躱した。



「…というのは冗談で。何がいい?欲しいものくらいあるだろ?」
「あるにはあるけど…」
「あるんじゃん。言ってみろよ。俺があげれるもんならあげるからさ」



 期待して解答を待つロックに、セリスは言うか言うまいか逡巡する。
 けれど、言うまで引き下がらないようなロックに根負けしたかのように、やがて静かに口を開いた。



「私が欲しいのは…」

「うん?」










「……英雄の盾」









 ……一瞬にして、ロックの笑顔とこの場の空気が凍りついた。




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