■■■■ 色のない世界に2 ――――あなた、誰…? 今でも鮮明に甦る、『彼女』の声。 それと共に押し寄せる、忘れることのできない絶望と、胸を引き裂くような悲しみ。 あの時の感情が、淡い期待を抱く心を戒める。 あの時の記憶が、無意識の内に心奥に訴える。 あんな思いはしたくないのだと、心が悲痛な叫びをあげる。あなたは一体誰なの…?知らないわ、あなたなんて。あなたが来ると、家族が悲しそうな顔するの。出ていって…!! 近くなっていたはずの二人の距離は、いつの間にか離れて、また遠くなってしまった。 手を伸ばしても、もう届かない。 迷いもなく歩き、再び遠ざかっていくその後ろ姿を黙って見つめる事しかできず、俺はただその場に立ち尽くしていた。 その時。 金の髪が澱んだ風に煽られた。 瞬間、垣間見えた横顔。 そのたった一瞬で。 あれはセリスだという、不遜なまでの確信が過ぎる。 けれど、俺はもう名を呼んで振り向かせようとはしなかった。 …今は、まだ会えない。 この悲しい記憶と、悲しい過去に囚われ続けた自分自身と決別するまでは。 だから。 俺は視線の先の彼女に背を向けて、足を踏み出した。 前を見据えて、振り返る事もせずに。 彼女とは違う道を歩き始めた。 いつか… 心の戒めを解いて、彼女の本当の笑顔と再び出会う為に…。 色のない世界に、ぽたりと落ちた希望の色。 ほんの僅かなその色が、混じりあって溶けあって。 少しだけ、目の前が淡く色づいていくのを感じた。end.(2008.11.21) *prev next back 人気急上昇中のBL小説BL小説 BLove - ナノ -
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