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「レコーディングテストの結果、掲示板に貼り出されてるって!」
「行こ行こ!」
ざわつく教室内の声に釣られて、皆で廊下に張り出されている掲示板を確認しにやって来た。
人だかりを掻き分けて、ようやく掲示板の見える位置まで辿り着く。
「やっぱり1位はお前らかよ」
「ま、当然かな」
圧倒的点差で1位は一ノ瀬くんとなおくんのペアだった。あの一ノ瀬くんの気迫の入った歌を聴けば、誰もが納得の結果だと思う。
だって凄かったもん、一ノ瀬くんの歌。
2位はレンくんと優子、3位が一十木くんと七海さんのペアと続く。
隣に立つなおくんは顎に手を当てて、ふーんと呟いている。
「あいつ、3位か…」
「何か言いましたか?」
「いや、」
順に文字を目で追っていくと、翔ちゃんはもちろん、聖川くんや四ノ宮くん、セシルくんも知っている顔は皆上位に食い込んでいる。みんな、すごいなぁ。そういえば、私ほとんどみんなの歌聞けなかったや。
そんな中、一番下の行にようやく自分の名前を見つけた。
【審査対象外 Sクラス 水谷 香織】
分かっていたはずなのに、いざ目の当たりにすると胸がズキンと痛んだ。
…そうだよね、当然だよ。
だって、ちゃんと披露できなかったんだもの。
それでも歌を聴いてもらえただけで良かったと思わなきゃ。それでもやっぱりショックは隠しきれなくて、つい俯いてしまった。
「…香織」
翔ちゃんが私の肩にそっと触れた。
皆が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「あっ…ごめんね!私は大丈夫だから」
一番最初のテストなのに、とんでもない失敗をしてしまった。今後の成績にも影響すると思う。
梅澤くんの件は仕方がないと言えばそうだけれど、今はただこの結果を受け止めるしかなかった。
「水谷ツインズ、ここに居たか」
「日向先生…」
そんな私達に後ろからかけられる声。
話しかけてきたのは日向先生だった。
後ろに立つとその背の高さに圧倒されちゃう…。というか、水谷ツインズって…。
「お前ら二人と…あ、あとそこにいる奴らも全員来い。学園長が呼んでる」
「私達も…ですか?」
なおくんや翔ちゃん達と顔を見合わせる。
個別に学園長室に呼ばれるなんて…入学して間もないけど初めてだ。
疑問を抱えつつも呼ばれたからには行くしかない。なおくんと翔ちゃん、一ノ瀬くん、レンくんと優子と一緒に学園長室へ向かった。
───
「あ、トキヤー!香織も!みんないるー」
どうやら学園長に呼ばれたのは私達だけではなかったみたい。
先に待っていたのは一十木くん、聖川くん、四ノ宮くんとセシルくん。それにオレンジの髪と赤い髪の女の子が二人。し、知らない子だ…。多分Aクラスの子達だと思うけど…。
呼ばれたメンバーを見て何かに気付いたのか、一ノ瀬くんが学園長に尋ねる。
「まさか、この間のレコーディングテストと関係が…?」
「…察しが良いデスネー、Mr.イチノセ…」
一ノ瀬くんの質問に、学園長のサングラスがキラリと光った。
「ここに居るのはレコーディングテストの成績上位者だ。このメンバーである課題に取り組んでもらう、いわゆる追加テストだ」
「追加、テスト……」
その日向先生の言葉に、心臓がどくん、と鳴った。
それなら…私は明らかに場違いだ。
こんな所に、居て良い訳、ないのに…どうして…
「何か言いたいことがアリマスカ?Ms.水谷…」
「あ、えっと…その、」
「水谷の──香織については特例だ。その意味は、自分で考えろ」
私が何か言うより先に、日向先生の言葉。
でもそうは言っても──
「今回の追加テストの結果はぁーっ、特別に成績に反映させてあげる!」
「…!」
月宮先生の言葉に下に向けていた顔を上げる。
そうなんだ…!これはもしかして、この間のテストの、挽回のチャンスを学園長がくれたんじゃ…
学園長の方を見るとサングラスで表情は見えなかったけど、またキラーンと光った気がした。
「まぁどういう形であれ、ここにいるお前らは期待されてるってこった」
「それじゃあ追加テストの内容を説明するわね!アイドルコースの生徒が9人、作曲家コースが3人。…ということでそれぞれトリオ曲を作って披露してもらいます!」
「トリオ曲…」
みんなで顔を見合わせる。レコーディングテストとは全く違う形式だ。
ユニット曲というだけで、難易度は数段上がる。作曲もそうだろうし、音を取ってハモリをするから練習も何倍も必要。
全員その事を分かってるみたいで、一気に緊張感が漂った。
「またくじ引きか…」
「そうだね…」
翔ちゃんの呟きに、小さく返事をした。
大きな白い箱を、輪になって取り囲む。
ユニット曲となると、自分が誰と組むかというのはかなり重要だ。
息を飲んで、箱から飛び出ている白い棒をそれぞれ掴んだ。
ユニット曲…一体どんなメンバーになるんだろう。
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