構ってくれないなら

「ねー真斗ー!」
「なんだ」
「練習いつ終わるの?」


ここは事務所の練習室。大きなグランドピアノがあって、ステージでもピアノを演奏する機会が多い俺が、よく訪れる場所だ。

先日配られたばかりの新曲。イントロと間奏にピアノソロがあり、少しでも早く身につけたく練習している。それなのになまえは、構わず俺に話しかけてくる。


もちろん邪魔な訳ではない。
だが、どうしても他に優先したいこともある、そんな日もあるだろう?



「これから一十木と神宮寺と合同練習だ。悪いが先に部屋に戻っていてくれ」
「うー」


そう、その新曲はアルバム収録される一十木と神宮寺と三人の曲。これから二人が練習室に来て、歌合わせをする予定だ。

なまえに構ってやりたいのは山々だが、互いに多忙な中、ようやく出来た練習時間も無駄にはしたくない。


それでもなお、口を尖らせるなまえ。
そんななまえの髪にそっと指を潜らせ、唇にキスを落とす。




「…足りない」
「後でゆっくり構ってやるから」
「今、したいのに」
「なまえ、あまり俺を困らせるな」


わかった、と小さな声で言うなまえだが、一向にその場から離れる気配はない。
一体どうしたのかと問おうとするのと同時に、練習室のドアが開いた。



「マサー!お待たせ!練習しよー」

一十木と神宮寺が部屋に入ってきた瞬間、なまえは勢いよくその場にしゃがんだ。

顔見知りなのだし、俺となまえが交際していることは周りも承知している。だから今更隠れる必要はないはずなのだが…。

それでもなまえは立ち上がる様子もなく、ひょこひょこと移動して、ピアノの下に潜り込んできた。



「(どうしたんだ?)」
「聖川、ピアノの方は順調かい?」
「あ…あぁ、大丈夫だ。ありがとう」
「よーし!そしたらAメロから練習しよっか!」
「そうだな…っ!?」



下半身に感じた違和感に、思わず目を見開く。
あろうことか、なまえはいつの間にか俺の足の間に入り込んでいて、俺の股間を手で優しく撫で上げていた。

「(なまえっ!何をしてるんだ!)」
「(真斗が構ってくれないからだよ)」


二人に聞こえないくらいの小声で会話をし、なまえを制止しようとするが、なまえは全く止めようとしない。
それどころか、ファスナーから俺のモノを取り出し始めた。



「(なまえ…っ、やめろっ…!)」

いやらしく下から上へと撫であげるその感覚に背筋がゾクっとし、小さく呻き声を挙げてしまう。


「マサ、今何か言った?」
「いやっ…、何でもない。すまないっ…」
「そう?それならいいけど…」


二人と歌合わせをしている間にも、なまえはどんどん激しく擦り上げてくる。
止めようにもピアノを弾いているため、両手が塞がってしまっている。なまえにされるがままだ。


「くっ、はっ…」
二人に気付かれぬよう、必死に息を整えながらピアノに指を走らせる。
俺のソロパートに差しかかったところで、下部が温かく包まれる感覚と、強い快感が走る。


なまえめっ、口にまで含んできたかっ…


ヌルッとした感覚に、つい違う鍵盤に指を引っ掛けてしまった。
一度音楽が止まり、一十木が不思議そうな顔で俺を見つめてくる。


「マサが間違えるなんて珍しいね…どうしたの?」

ぴちゃ、くちゅという音を立てながら、ソレを咥えて上目遣いで見つめてくるなまえ。
その顔を見て、またドクンと俺のモノが脈を打った。




「ちょっ、マサ!顔赤いよ?具合悪いんじゃない?」
「ほ、んとにっ…大丈夫だ、気にするなっ…」
「大丈夫じゃなさそうだよ!少し休もう?」
「大丈夫だ!早く、っ、練習をっ」


心配そうに一十木が俺の近くまで駆け寄ってくるが、それを手で止めた。
こんなさらけ出している下半身と、なまえの姿を見られる訳にはいかない。




「イッキ、聖川も具合悪そうだし、今日の練習はここまでにしようか」


ずっと黙っていた神宮寺が口を開く。
その言葉を聞いたなまえはピクンと肩を揺らすが、更に激しく、じゅくじゅくと口を上下に動かしてくる。
込み上げてくる射精感を必死に抑えながら、なまえの頭を片手で掴んだ。



「…そうだね。マサ、お大事にね!」
「す、まないっ…また連絡するっ…」
「気にしないで!じゃね〜!」


元気よく部屋を出ていく一十木とは対象的に、神宮寺はまるで全てを分かっていたように、ニヤリと笑った。


あやつ、絶対気付いてたな…!




「なまえっ…!いい加減にしろ…!」


パタンとドアが閉まったと同時になまえに話かける。なまえは俺の物からゆっくり口を離して顔を上げた。唾液と先走りの液が口の端から垂れているのが、何ともいやらしい。



「出しちゃってよかったのに…」
「意地でも出してやるかっ…」


ガタンと椅子を引き、なまえの腕を引いて強引に立ち上がらせる。


「あっ…きゃ、」

バランスを崩したなまえがピアノの鍵盤に手をつき、不協和音が響くが、そんなこともう気にしてられなかった。


すでに、ぐしょぐしょに濡れているなまえの下着をずらし、立った状態のまま、前戯もせず一気に突き立てた。


「俺のを咥えて感じていたのか…っ、」
「あぁっ!ゃ、まさ、っ…!」
「変態」
「やっ…」


にやりと笑ってそう言えば、首を横に振って否定するなまえ。あんな行為をしておいて、今更もう遅い。

今までの仕返しをとばかりに、激しく腰を打ち付ける。そのまま動きを繰り返していると、なまえは喘ぎながらも嬉しそうに笑った。



「やっとかまって、くれたっ…!」
「ま、ったく…仕方のない奴だなっ、」



ほら、やはり変態じゃないか。

そんななまえに振り回されるのが、俺は案外嫌いではないらしい。

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