真斗とやってきたのはパークで一番怖いと言われている、フリーフォールタイプのアトラクション。
ホテルをモチーフにした大きな建物を前にして、真斗が立ちすくんでいる。
「こ、これに乗るのか…」
「大丈夫!見た目より怖くないから」
「本当か!本当だな!?」
恐怖で震える真斗(ちょっと可愛い)をなんとか説得して列に並ぶ。あっという間に順番がやって来た。
「わー!久しぶり!楽しみだなぁ。ね、まさ…」
「これは修行だ滝行と思えばいい大丈夫だシートベルトをしているから死ぬことはないはずだ、だがあんなに高いところから落ちるのにシートベルトだけでよいものなのか、あああの高さからこれ本当に落ちるのか」
あ、やっぱりダメっぽい。
そんな真斗を余所に、座席はぐんぐんと上へと昇っていく。
あまりに怖がる真斗がちょっぴり可哀想になってきた私は、手すりを握る真斗の手に、そっと自分の手を重ねて握った。
う、いつもは気づいてくれるのに。今はそんな余裕はないらしい。
隣の真斗はがくがくと震えていて、手を重ねているのに甘さのかけらも無かった。ちょっとしょんぼり。
ぐんぐん昇った座席が頂上に達してすぐ、目の前の扉が開き、絶景が現れた。
「見て真斗!景色きれ、」
「これは修行だ己を高めてより立派なアイドルになるための試練なのだそれであってこれを克服した暁には」
って!見てないし!!
目を強く瞑る真斗にツッコむ間もなく、座席が一気に下へと落ちる。
「きゃあー!」
「うわああああああああ!!」
周りの声が全てかき消されるような真斗の悲鳴に、申し訳なくなったと同時に、さすがアイドルは声量が違うと何故か感心する私であった。
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