綺羅の手を引いて行列に並ぶ。

それはパークの中でも屈指の人気アトラクション。
はちみつが大好きな黄色いくまさん…あ、プーさんのことね。そのプーさんと森の中を冒険するアトラクションだ。



「絵本…」
「そう、絵本の世界を再現してるんだ。可愛いでしょ?」


私がそう話かけている中でも、綺羅は周りの景色をぼーっと眺めている。

いつも通りだから何も驚かないんだけどね。でも楽しんでくれてるかどうかはさすがに不安になってしまうけど、


「…可愛い。黄色い…くま…」
「!?」

ぼそっと!今ぼそっと言った!私は聞き逃さなかった!
た、確かに…よく顔を見ていると心なしか、目が笑っている…気がする。
よし!これははしゃぐ綺羅が見られるかも!
そう期待を込めて、いざ乗り物に乗った。


「ねー見て綺羅!可愛いね」
「……(こくん)」


相変わらず反応薄!分かってた、分かってたけど!こんなファンタジーな世界でこんな真顔なのは綺羅だけだと思う。でも私は聞き逃さなかった。

「…ふーんふん、ふん…」


あの綺羅が、鼻歌を歌っている…。これは確実に楽しんでいる。間違いない。


綺羅ってば、あんなクールな顔立ちとキャラで、実は可愛いものが好きなのか。
うん、それはそれでアリだ。実にイイ。あ、変態眼鏡みたいになっちゃった。



「綺羅!楽しかったね」
「……悪くは、なかった」
「ふふ、よかった。せっかくだからプーさんのお土産屋でも見る?」
「…プー…さん、…見る…」


その後、綺羅は私の気づかぬ間にプーさんの小さなぬいぐるみを購入していた。


「ナギへの…みやげ…」
とかなんとか言い訳していたけど、そのぬいぐるみが綺羅の自室にこっそり飾られていることを私は知っている。可愛いやつめ。






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