愉快なお客さんたち




「涼花ちゃーん!おしぼりとお冷、3番個室に持って行ってー!」
「はぁーいっ」

ここは私のバイト先である居酒屋。
店長の個人経営の小さな居酒屋なんだけど、お洒落で料理もおいしい、素敵なお店。ちょっと値段も高めだから、私達が行くような大衆向けな居酒屋とは少し違う。

そういったこともあって、たまーに有名人が足を運ぶことがある。
まさに、今来たお客さんのように。




「いらっしゃいませー!」

「きたきた!賀喜ちゃん、こんばんはー!」


このお店を気に入ってくれている4人組のお客さん。もうすっかり顔馴染みになってしまった。

この人たちも、今をときめく超人気アイドルで、多分、日本に知らない人はいないと思う。



「ご注文お決まりですか?」

「とりあえず僕ちんは生!ランランもでしょ?」
「ああ、それから焼き鳥三点盛りととシーザーサラダとオム焼きそばと枝豆と水餃子と…」
「ちょっとぉ!僕ちんの奢りだからって頼みすぎじゃない!?」

「僕はウーロン茶。カミュは?」
「いちごみるくサワーホイップクリームチョコレートソースがけを頼む」
「よくそんなの甘ったるそうなの飲めるよね」
「ははは…」


大人気アイドル、QUARTET NIGHTの裏の顔がこんなに愉快な人たちだなんて、普通の人は知らないんだろうな。

よくお店に来てくれるし、私にも声をかけてくれる。もうすっかり友達…とまではいかなくても、楽しい近所のお兄さん的存在だ。



「お腹空いているみたいですし、鶏の唐揚げサービスしておきますね」
「まじか!神だな!」
「落ち着きなよランマル」
「ふふふ、店長には内緒ですよ?私の奢りですから」


ぺこりと挨拶をして、キッチンへとオーダーを通しに向かう。
最初来た時はすごくびっくりしたし、どう接していいか分からなかったけど、寿さんをはじめ、フレンドリーな方達で、安心したのを今でもよく覚えている。



──

「いや〜!ここのお店本当良いよね!料理は美味しいし、店長は優しくて賀喜ちゃんみたいな可愛い従業員さんはいるし!」
「そうだね、人もそんなに多くないから静かでいいよ。あとカミュ酒臭い。」
「どぅまれぇぇぇ愚民がぁぁぁぁ!」
「もう、食えねぇ…」


そして黒崎さんはもの凄い量の料理を平らげて、酔いつぶれているカミュさんを美風さんが介抱していて、大体寿さんがお勘定をしている。

もうすっかり見慣れた光景。でもお客さんの満足した顔を見るのが大好きで、ずっとここでアルバイトを続けている。


「ありがとうございましたー!」
「ねぇねぇ、今度音やん達も誘ってさ、一緒に飲みに来ようよ!」



寿さんの言ったその言葉は、私には届いていなかった。




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