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ついにやってきたぜ大会当日!
今日までの間のことは説明がめんどいからやっぱり端折らせてもらうぜぃ!
んで、そろそろ試合が始まるから控えてんだけど…


「なぁ、いい加減機嫌直せよぃ…」

「…」


……赤也がむくれてんだよ。

実は木村さんが大会に申し込みしてくれたんだけど、そのときにちゃんと年齢相応の小学生低学年の部で申し込んだせいか年上の強い奴を倒したい精神の強い赤也はすっかり機嫌損ねたんだ。

今日は俺の父さんが保護者で赤也の家族は都合がつかなくて応援に駆けつけられないらしいからそれも機嫌が悪い一因なんだろうな。


「赤也、俺の父さんがビデオで撮ってくれるって言ってたから精一杯格好つけとけ。んでおじさんおばさんに見せようぜ」

「!、うん!」

「それに今回優勝できたら木村さんも上に挑戦させてくれるんじゃね?」

「…よっしゃ!俺ぜってーソッコーで試合終わらせる!そしたらぶんちゃんの試合も応援してやるよ!」

「はは、生意気いうじゃねーか!」

「うわ!ぶんちゃんやめろって、頭ぐちゃぐちゃになるだろ!」


笑いながら赤也の頭のかき回した。…まあ、無事機嫌直せたんだしいっか!

そうこうしているうちに時間になり応援にきていた父さんと弟を赤也のほうに行くよう促す。
試合をすると勝つほうが多いが実際、俺はスクールの人以外との対戦経験は皆無と言っていいぐらいだ。
正直赤也は勝ち進めても俺は途中で負ける可能性は高い。
なら優勝する可能性のある赤也についてもらってビデオをまわした方がいいに決まってる。

…まぁ自分の負けるところを撮られたくないって気持ちもあるんだけどな。
もちろん今日の為に必死に練習もした。だけどそれも意味がないくらいに緊張してガチガチになってる。
考えることも全てマイナスの方にいってしまう。

俺がそんなことを考えていても顔には出てないのか周りからは落ち着いてるだの冷静だのと聞こえてくる。

…冷静?そんなわけないだろ!!

1人頭の中で勝手にキレてると、ふ、と俺に影がかかった。


「なんだ、俺の対戦相手ってこんなチビかよ」

「なんか文句あんのか?」


ジャイアンみたいな体格の少年が俺を見下ろしていた。
言っておくが確かに平均より身長は低いが決してそこまで気になるほど背が低いわけじゃない。
でも低い身長を気にしていない、といえば嘘になる。
先程の少年の発言に表面には出さないがキレた。…お陰でガチガチだった身体もパニックになってた頭も落ち着いたんだけどな。

だが俺は決めた。こいつを何が何でもテニスでボロボロに負けさせてみせると!

サーブは向こうからで、まずは一球、一歩も動かず見送った。
……球がやたらと遅く感じるのは気のせい…じゃないよな。
あのスクールは大人ばっかで試合するときも大人を相手にしてたからこういう同い年くらいの子供のはやっぱ遅く感じるのか?
…『テニスの王子様』のキャラクターはこうもいかないんだろうけど。


「おおっと、チビ相手に本気出し過ぎたか」

「どうでもいいからさっさと打てよぃ」


どうやら先程のは俺が動けなかったと思ったらしい、馬鹿にしたように話しかけてくる。
気分が悪くなってきそうだぜぃ。
そして俺の返答に相手の怒り指数が急上昇。
だけど俺の気分は急降下。

よし、さっさと決めて赤也に癒してもらおう!
そう決心して俺はリターンで仕掛けにいった。



......



「優勝おめでとさん、赤也」

「おめっとー!」

「おめでとう赤也くん」

「へへっありがとう!」


小学生低学年の部は人数も少なく、どうやら赤也の実力が飛び出ていたこともあったせいか午前中に優勝が決定した。
俺もその後順調に勝ち進めている。今の昼食が終わればいよいよ準決勝だ。


「ごちそうさま。それじゃあ俺次の対戦表見てくるよぃ」

「あ、待って俺も行く!」


靴を履きだした俺に倣い、焦りながら赤也も靴を履く。
父さんは俺らを微笑ましげに見ながらのんびり手を振って見送ってくれた。


「次はどんなやつなんだろうな?」

「でもぶんちゃんならちょちょいのちょいだって!」

「ははは…」


俺よりも興奮している赤也をみて出てくるのは乾いた笑い。次の対戦相手が今の発言を聞いたら絶対キレるに決まってるしな…。


「えーっと、次の対戦相手は…幸村精一って人か」

「…丸井、ブン太くん?」


突如後ろからよく通る声に話しかけられた。そちらの方に顔を向けるとなんとも美少女と言われそうな子が立っていた。
…だけど違う、この人は男だ。何でわかるのかって言われると自分も女顔だからわかるってだけ。


「…なに?」


見知らぬ子に声をかけられて少し警戒してしまっているのか返事が素っ気なくなってしまった。


「ああ、俺は次に「ブン太ー!」

「ど、どうしたんだよぃ…」


目の前の子の言葉を遮られてしまったけど、普段温厚な父さんが大声をだしながら走ってくるから相当大変な事が起こったようだ。


「ブン太、母さっ頭、頭頭が、頭ぁ!」

「い、いや頭連呼されても困るしまず落ち着けって!それと史貴はどこだよぃ」

「あ!おいてきちゃった…」

「父さんのばかー!…あ、悪い行かなきゃだからまたいつか会えたらな!」


忘れかけていた子を視界の隅に捉え急いで声をかける。
この際細かいことは気にしてられないし早く弟のもとに行かなくてはならないので深く考えずに赤也たちとその場を後にした。



「んで、急にどうしたんだよぃ」

「あ、ええと、頭、頭があた「頭はもういいって!」

「…そうじゃなくて、さっきの父さんの言い方だと母さんの頭が大変なことになってるみたいじゃん」

「出てき、出てき、た!」


母さん、頭、出てきた…って、は?それって生まれ…!


「大会に出てる暇ねーじゃん!棄権して早く病院!」

「えっ!?ぶんちゃん優勝できるかもしんないのに!?」

「優勝よりも家族優先!史貴迎えに行くの俺やるから父さん手続きしといて!」


そういって走るスピードを上げる。赤也は若干不服そうではあるけど理解はしてるみたいだった。



赤也は優勝

俺は途中棄権で敗退



そうして俺と赤也の初めての大会は幕を閉じた。

今日みたいなことがあったら嫌だから大会にはもう出ないようにしようと決めた。
…まあ中学に入る頃にはいろいろ落ち着いてるだろうからその時にまた挑戦しようと思う。




忙しい、というより騒がしかった1日




11/02/21


忙しい1日(8/19)
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