ル イ ラ ン ノ キ


 PAGE:3 (3/3)



「おかしもらおー」
 と、少年らが落としたお菓子を拾うシーツ。

昨夜会った少年は、呆然と口をあけたまま、動けずにいた。そんな少年に、カボチャは言った。

「はっぴぃーはろうぃん!」

3人の少年らを脅したときの低い声ではなく、おどけた声でそう言った。

「そろそろ帰ろう」
 と、カボチャはシーツに呼び掛ける。
「もっとおかし。もっとおかし!」
 シーツはまだお菓子を拾い集めるのに夢中だった。
「そんなに持ってても飾れない。そんなに持っていってもゾンビのやつも困るよきっと」
「そっか困る。じゃああげよう」
 と、シーツは集めたお菓子の半分を少年に渡そうとしたが、カボチャがそれを止めた。
「だめだ。ルールはまもらなくては。──さぁ、言ってくれ」

そう言われた少年は、一瞬わからずに首を傾げたが、すぐにこう言った。

トリック・オア・トリート!

するとシーツは拾い集めたお菓子の殆どを少年に渡して、カボチャは去り際にこう言った。
「オイラたちはいたずらされる側じゃなくてする側だからな」

闇へと消えていこうとするカボチャとシーツに、少年は慌てて立ち上がって力いっぱい叫んだ。

「ありがとう! 助けてくれてありがとう!!」

そんな少年の声を背中で聞きながら、シーツはカボチャに尋ねた。

「なんでありがとうなの?」
「おかしあげたから」
「ああ! でも助けてくれてありがとうって言ってたけど?」
「おかしが死ぬほど欲しかったところにオイラたちがあげたからだよ」
「ああ! ゾンビのやつもありがとう言ってくれるかな!」
「あいつしゃべれないから呻くだけ」
「ああ! でもきっと喜んでくれるよね!」
「しらん。オイラは行かないからよろしく伝えておいて」
「え、なんでよ! ゾンビともだちなのに!」
「あいつの体臭はオイラも好かん」
「ああ! なっとく!」

へんてこな会話をしながら、森の中へと消えてゆく。

10月31日。日本でいうお盆のように、死者の魂が戻ってくるとされ、家中のお菓子などをかき集めて持て成し、悪霊を追い出すお祭りと言われている。

「ジャック、今日のカボチャもイカシてたよ。カブの時代よりいいよ」
「カブのほうがくり抜きやすいんだけどな」
「ジャックも大変だね、毎年カボチャの被り物つくるの」
「年に一度のオイラたちのお祭りだから、苦じゃないよ」

そして静かに夜が明けるのだった。
また来年。

end - Thank you
お粗末さまでした。121025
編集:161227
次ページおまけ(?)


画像提供:http://blogdt.jp/

[*prev] [next#]

[top]
©Kamikawa

Thank you...
- ナノ -