voice of mind - by ルイランノキ |
〜KAI Voice of mind〜
見なかった。見れなかった。
当時、俺の中のタケルはあの日のまま止まっていて、忘れてはいけないものだから、あの日感じた痛みや後悔もそのまま記憶の中に保存していたんだ。
タケルに抱いた罪悪感や、後ろめたさは消えることはないと思ってた。
タケルはもういないから、タケルの声はもう聞けないから。
だから、俺たちの知らないタケルのことを聞いて、動揺した。
知らないタケルを受け入れるには、タイミングが悪いと思った。
色んなことが立て続けにありすぎたから……。
アール、もしね、こんな形じゃなくて、互いにどこかの平凡な村人として出会っていたら、きっと、アールのこと、もっともっと好きになっていたと思うんだ。
アールは別の世界から来て、いずれ帰ってしまう。それにこの世界を救ってくれる偉大な人。
無意識にアールと自分の間に線を引いていたんだと思う。
タケルに対してもそうだったのかもしれない。後悔してるんだ。
タケルが何者でも、いずれ別れが訪れるってわかっていても、今、命をかけて一緒に戦って同じ時間を生きてる。それが大事だから、境界線なんかとっぱらってしまえばよかったって。
アール
君がなに者でもいいんだ
もうくだらない境界線なんかないよ
アールは? 俺たちとの間に境界線、引いてるの?
どこにいるの
境界線があるなら、飛び越えておいでよ
それとも怖いの?
Thank you... |