voice of mind - by ルイランノキ |
その日の夜、カイは上機嫌だった。
新しく変えた武器、ブーメランをあっという間に使いこなせるようになり、立ち塞がる魔物に次々と命中させ、立派な戦力になれたことが嬉しかったのだろう。
遠距離攻撃が出来るようになったことも、彼に向いていたらしい。できる限り魔物には近づきたくはないし、近づいてきても逃げ足は速く、魔物から距離をとって遊び感覚でブーメランを投げ、命中させる。
ブーメランの殺傷能力は刀剣より劣るが、十分敵の体力を奪い、動きを止めることが出来た。
「いやー、仕事を終えた後の水はうまいねぇ」
と、水筒の水を豪快に飲み干すカイ。
「ふふ、お疲れさま」
アールはテーブルに肘をつき、向かい側に座る彼に笑顔を向けた。
一行は休息所にテントを張り、夜を迎えていた。旅の疲れを取り、体力をつける晩御飯を食べ終え、眠る前の自由時間。
アールは空に浮かぶ星を眺めた。カイが生き生きしていて嬉しい。これまでずっと愛用していた刀を手放すのは心苦しそうだったが、こうしてまた共に旅を続けられる喜びに浸っていた。
ルイが洗い物を終えて、自分を含めた3人分のホットコーヒーをテーブルに置いた。
「今日もお疲れさまでした」
「ルイもお疲れさま」
と、アールはコーヒーを受け取る。「シドとヴァイスは?」
「シドさんはいつも通り腕をならしに。ヴァイスさんもいつも通り、夜の散歩に」
「夜の散歩!」
と、カイが笑う。
「そういえば最近、スーちゃんの存在を忘れるよ、ヴァイスとばっかいるんだもん」
アールはテーブルに伏せ、ふて腐れた。
「一番落ち着くのかもしれませんね」
「それはわかるけど……」
ヴァイスは余計なことを言わないし、余計なことはしない。ダラダラと話しかけると鬱陶しそうな顔をするが、基本は黙って話しを聞いてくれる。落ち着いているからか、傍にいる側としても落ち着くのはわかる。でも元はスーを授かったのは自分なのだ。アールはスーに嫌われたようで寂しかった。
「ルイといても落ち着くと思うけどなぁ」
「わかった」
と、カイ。「ヴァイスんは魔物だからだよ」
「なにそれ」
「自分で言ってたじゃん。魔物は魔物と一緒にいる方が楽なんだよきっと」
「魔物ねぇ……」
ヴァイスがライズの姿のときは、魔物と言われてすんなり受け入れられるが、人型になったヴァイスを見ても魔物とは思えなかった。
「あ、そーだ。ちょうどいいから俺の話し聞いてよ。俺の、可哀相な過去を」
「うん……」
アールは椅子に座り直して背筋を伸ばした。
「僕はいてもいいのでしょうか」
と、気を遣うルイ。
「うん、ルイにも話してなかったし、聞いてよ」
ぎこちなく笑い、カイは幼い頃の自分を思い浮かべながら話しはじめた。
Thank you... |