voice of mind - by ルイランノキ


 涙の決別19…『voice KAI』


〜KAI Voice of mind〜

 
アール、
シドの町に寄ったときのこと、覚えてる?
 
もしかしたら、アールはクロエとのことしか覚えてなかったりする?
あれは忘れられないよね。
 
俺はね、あの時のことも、忘れるわけないんだ。
 
俺はアールが強くなっていくことが正直いやで、寂しかった。
アールは俺を置いて、俺に背を向けてスタスタと行ってしまうようで。
 
背が小さいこととか、アホなとことか、からかえる存在でいてほしくて。俺が守ってあげなくちゃって思える存在でいてほしくて。
 
でもそれは叶わなかった。
どんどん成長して、俺はアールの背中を見ることが多くなったんだ。
 
気づいたらみんなの背中が見えているときがあって、俺が振り向いても後ろには誰もいなくて。だから俺がそっと立ち止まっても、みんな気づかずに行ってしまうんだろうなって……。
 
俺が一番、疑問に思ってた。
でもなるべく思わないようにしてた。強くありたいから。仲間でいたいから。
 
それでも俺が一番、疑問に思ってた。
 
アールを支える4つの光のひとつが、俺だと。
なにもできないのに。なにもしてないのに。
 
   カイ、聞いて……?
 
アールがあの時言ってくれた言葉。
忘れるわけないんだ。
 
アールも、俺にとって必要な存在だよ。それは選ばれし者だからじゃない。
たとえ違ったとしても……
 
だけどそれを証明することが出来なくて……
 
ごめんね。
 

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©Kamikawa
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