voice of mind - by ルイランノキ


 内証隠蔽11…『voice KAI』



〜KAI Voice of mind〜

  
出会ったときからずっと、俺はアールの下にいたんだと思う。
強さとか、そういうので。
 
アールはどんどん、俺との距離を離して行った。
スタートラインは斜めになっていて、俺のほうがちょっとだけ前にいたのかもしれないけれど。
 
アールは第一コースを戸惑いながらも走り続けている。
いつの間にか一周回って俺は抜かれて、また一周回ってきたアールに抜かれ。
 
だから、それほど距離が離れているからアールが何度立ち止まっても、追い抜くことはできなくて。
 
それでも隣のコースを、同じ場所で走っていることには変わりはなくて。
 
走った距離も速さも全く違うけど、同じ場所で走っているから手を繋ぐことは出来る。声を掛けることも出来る。見守ることも出来る。
 
それなのに
コースから離れて行ってしまったから
俺はもうなにも出来ない。
 
届くかどうかもわからない声を張り上げて、名前を呼び続けることしかできない。
 
アール、走ることを止めた君を呼び戻すために叫んでるんじゃないんだよ。
 
俺、アールがもう走りたくないって言ったら、俺も遅い足を止めるけど、それはそれで不安だと言うなら、  
変わりに走るよ。
 
アールのように風に乗って走るなんてこと出来ないけど、がんばるよ。
ゴールがあるなら、走ってみるよ。走れなくなったら這ってでも。
なんの意味もないとしても。アールの不安がほんの少しでも、やわらぐなら。
 

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]

[top]
©Kamikawa
Thank you...
- ナノ -