voice of mind - by ルイランノキ |
雪斗のことをやたらと思い出すようになった理由を知っている。
本当は知っている。
認めたくはないだけ。
此処は誰の声も聞こえない。
誰の声も届かない。
だから自分の声も誰にも聞こえないし誰にも届かない。
思い切り叫んでも、スッキリすることはない。
誰も恨んでない。
誰を恨めばいいのかわからない。
未だに言えない。
助けてって。
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誰も乗っていないブランコが風に揺れている。
少し強めの風が緑のない広場を駆け抜ける。2段の噴水の水面がさざなみ、枯れ葉が地面を滑るように渦を巻いて走る。
広場の奥のベンチに一人。
12歳くらいの女の子が空を見上げながら足をぶらぶらとさせていた。
そして大好きな曲の歌詞を口ずさむ。
目を閉じれば 目の前に君がいて
記憶の中の君の声が 私のすぐ耳元で囁くの
だけど 目を開くと君の姿はどこにもなくて
現実はなんて残酷なんだろうと 涙にくれた
「君の笑顔が好き」そう言ってくれたから
いつだって笑顔を絶やさずにいるのに
微笑み返してくれる君はいなくて
I miss you so much. I want to feel you.
私の幸せを願うなら どうして
私を突き放してくれなかったの
「別れよう」の一言もないまま 君は
I'd rather have gone with you.
There's hardly any chance that mydream will come true.
君のいない時間の中で 君との未来を今も胸に抱いて・・・
「──そろそろ帰ろうっと」
女の子は広場を後にした。
帰り道に出会う人はひとりもいない。静寂につつまれた小さな村。
人の気配がない、ただそこに建っているだけの家並み。
「モクモク雲さん出ておいで。一緒に帰ろう、ごはんだよーだ!」
駆けてゆく女の子の後ろから、黒い煙りのような塊が体を引きずるように現れて、女の子を追いかけて行った。
第十八章 花の故郷 (完)
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