voice of mind - by ルイランノキ


 カスミ街と海1…『VOICE RUI』


〜RUI Voice of mind〜

 
僕は二人に対して傷の舐め合いだと軽蔑を込めて思うことは、ありません。
 
むしろ、彼ではなく僕が君の傷の痛みを理解出来たら……
そんな風に思うこともありました。
 
心の傷だけはどうしても癒せない。
心の傷を癒す魔法はいくら探しても僕には見つけられなかった。
その魔法を使える権利を僕は持っていないから。
 
君の心の変化を真っ先に気づいたのは僕なのかもしれません。
君が崩れてしまいそうなとき、誰よりも早く手を差し延べられるように注意を払っていたから。
 
君の心の変化はとても些細なものだったけれど、気づいたときにはもう、動き出していました。
止めようとすればするほど、動き出そうとする動力が増してゆくような気がした。
 
それは自分自身にも心当たりがありました。
 
君はきっと認めたくはないのだと思います。認めてはいけないと思っているのだと思います。気づきたくもないのだと思っています。
自分の心に芽生えた新たな感情を、無意識に邪魔なものとして排除しようとしていたのではないでしょうか。
 
何故なら、
裏切りたくない人を裏切ってしまうことになるから。
 
 
そんな真っ直ぐな君だから僕は
心が痛むとわかっていながら排除出来ずに受け入れたのだと思います。
 
アールさん、僕はあなたの夢をよく見ていました。
夢の中であなたが幸せそうに笑いかけてくれるときは必ず僕は僕でなく、
あなたの薬指に嵌められた指輪が繋がる相手でした。
 
 
覚えていますか
アールさんが僕に、「完璧だね」と言ったことを。
 
その言葉に僕がどう答えたのかを。
 
その答えの意味を知ったとき、僕に向けられたあなたの目は、恐怖や不安が入り混じり、深い傷として僕の心に刻まれたけれど、その傷を癒したのもあなたでした。
 
だから今度は
今度こそは、僕にチャンスをくれませんか
 
あなたの心をほんの少しでも癒すチャンスを
僕にください。
 

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©Kamikawa
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