voice of mind - by ルイランノキ


 百花繚乱40…『潮風』

 
「今のなに……?」
 
一行は海の上で小さく見えるグリーブ島の方角を見遣った。
 
「魔物でしょうか」
「船には結界が張られてんだろ? 襲いに来ても問題ねぇよ」
 と、シドは船の縁に寄り掛かり、水平線を眺めた。
 
「じいちゃんは大丈夫かな」
 シオンが不安げに訊く。グリーブ島の方から魔物の声がしたからだ。
「島は安全だよ」
 と、デイズリー。「テオバルトさん、もう何年あそこに住んでると思ってんだ」
「そだね」
 シオンは笑った。
 
 
船尾にいたヴァイスは、操舵室に寄り掛かり、上空を見上げていた。
空を飛び交う魔物の数が増えている。
そしてそれらは旋回しながらグリーブ島へ向かっているようだった。
まるでそこに餌でもあるかの如く。
 
潮風に乗って人間の血の匂いが流れてきたことに気づいたのは、ヴァイスだけだった。
 

──シオン
 
やり場のない悲しみや怒りを感じたなら、
私にぶつけくれてかまわなかった。
 
全て私のせいなのだから。
 
でも、お願いだから仲間には当たらないでほしかった。
彼等はただ、巻き込まれただけなの。
私の運命に。
 
ごめんなさい
 
シオン どうか
 
私を許して……
 

第十六章 百花繚乱 (完)

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