voice of mind - by ルイランノキ


 相即不離38…『VOICE・RUI』


〜RUI Voice of mind〜

永遠など存在してはいけない。
 
生まれてくるものは必ずいつか消滅し、新たにまた生まれてくる。
そのサイクルもきっといつかは滅びて失われる日が来る。
 
永遠が手に入るならと、魔力を持つ人間は誰しも思うのかもしれません。
 
でも僕は“永遠”というものに魅了されることなどありませんでした。
 
アールさんはどう思いますか。

アールさんはなにか、永遠に残しておきたいものはありますか?
 
こんな話しをしたことがあったでしょうか。
ある男性魔術師が、大金を叩いてエテルネルライトを手に入れたのです。
小さなエテルネルライトを、何年もかけて、いくつも集め、そして30cmほどのひとつのエテルネルライトをつくりあげました。
 
彼はそれを最愛の娘にプレゼントしたのです。
娘はまだ10才でした。
 
彼は娘に言いました。
「永遠に残しておきたいものがあるなら、この石の中に閉じ込めなさい」
 
アールさん、彼の娘はエテルネルライトの中に何を眠らせたと思いますか?
 
 
僕がこの話を聞いたのは、彼女と同じ10才の頃でした。
エテルネルライトというものが実際に存在するのかも疑問でした。実際に目にした人は殆どいませんでしたから。
 
彼女は、小さなお花を入れたのです。
なんの変哲もない、小さな花。
父親が何年も掛けて莫大なお金をつぎ込んで手に入れ、ひとつの大きなエテルネルライトを作り出したその石の中に。
 
彼は尋ねました。
「何故、花を眠らせたんだい?」
 
それはとても純粋な思いからでした。
 
けれど彼女の思いは報われませんでした。
誰かの手に触れ、エテルネルライトは光と形を失い、眠り続けていた花は塵になって しまったからです。
 
やはり永遠などないのかもしれません。
人の念いも、永遠に生き続けるなんてこと、ないのかもしれません。
 
だけどそれでもその時の念いは永遠であると信じて疑わなかった。
それに誰の手にも触れられていなければ永遠であったのかもしれないという希望も拭えない。
 
アールさん
 
僕は もしエテルネルライトが手に入るのなら
 
貴女の涙を閉じ込めたい。
貴女の痛みや悲しみを忘れないように
いつでも 貴女の心と向き合えるように
 
触れて消えてしまえばそれでもいい。
 
貴女がくれた優しさでもかまわない。
貴方の何かを閉じ込めておきたいと思う気持ちは変わらない。
 
忘れてはいけないと思うのです。
運命が、どちらに傾いても。
 

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