voice of mind - by ルイランノキ


 シャットダウン40…『夢幻泡影17』- KAI


〜KAI Voice of mind〜

 
タケルを見た瞬間、真っ先に思ったのは、友達になれそう!だった。
 
思った通りタケルは、いい奴だった。
 
「ゲームさせて!」
 テントに入ると必ず俺はおねだりする。
「いいよ、なんのゲームする? パズルゲームとかも入ってるけど」
「じゃあそれー!」
 タケルは気前がよくて、すぐに携帯電話を貸してくれた。
 
「タケルぅ、怪我大丈夫だったぁ?」
「あ、うん。ルイが治してくれたから」
「怪我しちゃうなんてまだまだだねぇ」
「えへへ……そうだよね」
「でもいざという時は、俺が助けてあげるよー。シドでもどうにもならないときとか」
「え、カイってシドより強いの?」
「うん強いの。普段は無駄に力を使わないように温存してるだけ」
「あははは、そっかぁ。じゃあ頼りにしてる!」
「おー、まっかせなさぁーい」
 
 
俺が言う嘘や冗談に、タケルは気づいていたんだと思う。
タケルと俺は、似てるところがあるから。
 
弱いのに、強がっちゃうところ。
 
この世界に来たタケルは前向きで、強さを感じさせるけど、過去のタケルは俺にそっくり。
だからか、俺のこと、否定しないでくれた。
 
昔から、こんな友達が欲しいって思ってた。
痛みを理解しあえて、趣味を共有出来る友達。
 
「カイ、見てて! 俺が今からあのモンスターを1分以内に倒すから!」
「えー、1分じゃ無理でしょー」
「じゃあ賭ける? もし1分で倒せたら、今日のおかずの品、1品譲るっていうのはどう? 俺が負けたらカイに譲るから」
「よぉーし乗ったぁ!」
 
──見事あっさり1分もかからずに倒したタケル。どんどん強くなってる。
 
強くなってるというか、自分の力を上手く使えるようになってきた?
まぁ俺にはよくわからないけど、シドがそんな風なこと言ってた。
 
「から揚げ貰うね!」
 タケルはそう言って俺のから揚げに箸を伸ばした。
「あっ! から揚げはダメだってぇ! プチトマトならいいよ。──ほら、プチトマトちゃんが恥ずかしそうに頬を赤らめながらタケルのお口に入りたいって言ってる」
 俺はプチトマトのヘタを持って見せた。
「プチトマトはおかずに入るのかなぁ……」
「まぁ! プチトマトちゃんに失礼じゃない?! 謝りなさいよ!」
「なんでオネェ言葉……? 隙あり!」
 と、タケルは俺のから揚げを奪って自分の口に放り込んだ。
「あーッ! なにすんだよぉ!」
「約束しただろ? 賭けに勝ったら1品もらうって」
「だからプチトマトあげるって言ったじゃん!」
「そんなにプチトマトが好きなら俺のプチトマトとカイのから揚げ交換しよっか!」
「いやぁあああぁあぁ! プチトマトなんかから揚げの足元にもおよばないよぉ!」
「あはははは! あーぁ、プチトマトちゃんが怒って顔真っ赤にしてるよ」
 
──食卓は、笑いが耐えなかった。
タケルはよく笑うんだ。俺以上に。
 
「今日も疲れたね。戦い疲れと、笑い疲れ!」
「タケルってよく笑うよねぇ」
 布団の中で、眠るまでタケルとするたわいのない会話は好きだった。
「あんまり笑ってこなかったからね」
「え? あぁ、向こうの世界で?」
「うん、俯いてばっかり。沢山頑張って沢山笑うとさ、今日も一日充実したなって思えるんだ」
「そっかぁ。じゃあ俺も頑張ろっとぉ。──ってことで、ゲームやらせて!」
「頑張るって、ゲームを?」
 と、タケルは笑う。
「うん、もちろん!」
「いいね! またパズルゲーム?」
「え、いいの?」
「いいんじゃないかな。とにかく、何かに夢中になって頑張るっていいことだと思うよ。パズルゲームは脳にもいいし!」
「俺……」
「ん?」
「俺タケル大好きだぁ!」
 布団から出て、タケルに抱き着いた。
「うわぁ! な、なんだよぉ! 俺そういう趣味ないから!」
 そう言いながらも、大好きだと言われたことに嬉しさを隠せず笑みをこぼすタケル。
「俺もない! ハグだよハグぅ!」
「わかったから離れてよ!」
 
──タケルとは沢山話をしたから、タケルのことはよく知ってる。
 
「タケルの髪色ってきれいだよねぇ、俺も綺麗だけど」
「あ、ほんと? 思い切って青に染めたんだ。やりたいことリストの中に、派手な髪色に染めるって書いて。緑と迷ったんだけどね」
 
「好きなタイプ?」
「そう! 俺はねぇ、女の子全般! タケルはー?」
「幅広いね。俺は自分に自信がない子……かな」
「なにそれ! 変わってるねぇ」
「うん。でも自分に自信はないけど、変わろうと努力してる子かなぁ。俺、そういう子の気持ちなら痛いほどわかるから。どれほど苦しんで、頑張ってるのか」
「ふぅーん」
「だから放っておけないっていうか、一緒に支え合えたらって思うんだ」
「見た目はどんな子が好きなのぉ?」
「見た目かぁ……選べる立場じゃないけど、あんまり派手じゃない子かな」
「ふむふむ……」
「髪とか染めてなくて……でも決して地味なわけでもなくて……」
「ふむ……ふむ……」
「大人しいというか、おしとやか?」
「……」
「でも話すと楽しくて、癒される子かなぁ」
「…………」
「あれ? カイ……寝ちゃったか」
 
 
タケルはサッカー好き。でも経験はほとんどない。
タケルはロック好き。でも自分は音痴。
タケルは落ち着いてる子が好き。派手な子は苦手。
タケルはゲーム好き。何時間でもやれる。
タケルは笑うことが好き。頑張ることが好き。
タケルは俺に携帯電話のパズルゲームをさせてくれた。その間タケルは俺のアナログパズルをやっていた。
 
他にはなにがあったかな。
 
タケルの本当の髪色は黒。
タケルはから揚げ好き。
タケルは寝るのが遅い。
タケルは
 
タケルは……
 
 
死んだ
 
 
タケルは裏切られた。
タケルは騙された。
タケルは偽物。
タケルは実験台。
タケルは
 
恨んでる……?
 
 
タケルはきっと大嫌いだ。
俺達のこと。
 
タケルを騙し続けた俺達のこと。
 

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]

[top]
©Kamikawa
Thank you...
- ナノ -