voice of mind - by ルイランノキ |
アールは戦闘を終え、刀剣を仕舞いながら振り返った。呆然と立ち尽くすカイを、ルイは心配そうに見ていた。
「なんだ? 裸の写真じゃねーのか?」
と、シドが笑いながら言った。
アールはカイの前まで歩み寄り、意を決して知りたかったことを口にした。
「一緒に写ってた人、だれ?」
その質問に、写真を見ていない2人は眉をひそめる。
「友達だよぉ……」
カイはアールから目を逸らしたままそう答えた。
「友達? 名前は?」
「なんでもいいだろー? さ、歩こー!」
そう言って歩き出すカイに、アールは答え合わせをするかのように、ずっと脳裏にこびりついていた名前を口にした。
「“タケル”じゃないの?」
ひやりとした冷たい風が、全身に広がってゆくのを感じた。
一瞬、時が止まったような錯覚に陥った。口に出してはいけない名前。
カイの歩みは止まり、シドとルイは黙ったまま視線を落とした。
──ようやくく訊くことが出来た。もう引き下がれない。
「ねぇ、写真にはルイもシドも写ってたよ。私に話せない理由があるの?」
「……お前には関係ねぇよ」
と、シドが言う。その顔からは血の気が引いていた。
「関係ないならなんでそんなに気まずそうにするの?」
アールは、黙っているルイにも尋ねた。
「ログ街についたら全部話してくれるって言ったよね……?」
ルイはアールと目を合わせたが、その視線はすぐに地面へと落とされた。
「“タケル”って、なに? だれなの? ……私と同じ世界から来た人?」
そう訊くと、3人は驚いたようにアールを見遣った。
「写真に写ってた靴、あれ有名なブランド物なんだよ。ちゃんとロゴも写ってたし……こっちの世界にあるわけない」
「アールさん、ここで話すのは……」
「じゃあどこだったら話してもらえるの?! もう十分待ったよ? いつになったら話してくれるの?!」
痺れを切らし、語調が強くなった。「私リアさんに訊いたの」
「え……?」
「電話でリアさんが言ってた。『“彼”は勇敢だった』って。それから、彼は私の──」
サンプルとしてこの世界に来た
そう言ったリアの言葉が脳裏で煩くこだました。
「アールさん……この話は、夜にしましょう。昨日お休みしたので、今日は──」
「わかった……」
と、アールはルイが話し終える前に返事をした。どうせまた話してはくれないのだろうと思っていた。
それから一行は夜が更けるまで歩みを進めたが、いつもの様に言葉を交わすことはなかった。
Thank you... |