voice of mind - by ルイランノキ


 シャットダウン23…『■■■』

 
アールは戦闘を終え、刀剣を仕舞いながら振り返った。呆然と立ち尽くすカイを、ルイは心配そうに見ていた。
 
「なんだ? 裸の写真じゃねーのか?」
 と、シドが笑いながら言った。
 
アールはカイの前まで歩み寄り、意を決して知りたかったことを口にした。
 
「一緒に写ってた人、だれ?」
 その質問に、写真を見ていない2人は眉をひそめる。
「友達だよぉ……」
 カイはアールから目を逸らしたままそう答えた。
「友達? 名前は?」
「なんでもいいだろー? さ、歩こー!」
 
そう言って歩き出すカイに、アールは答え合わせをするかのように、ずっと脳裏にこびりついていた名前を口にした。
 
「“タケル”じゃないの?」
 
ひやりとした冷たい風が、全身に広がってゆくのを感じた。
一瞬、時が止まったような錯覚に陥った。口に出してはいけない名前。
 
カイの歩みは止まり、シドとルイは黙ったまま視線を落とした。
 
──ようやくく訊くことが出来た。もう引き下がれない。
 
「ねぇ、写真にはルイもシドも写ってたよ。私に話せない理由があるの?」
「……お前には関係ねぇよ」
 と、シドが言う。その顔からは血の気が引いていた。
「関係ないならなんでそんなに気まずそうにするの?」
 アールは、黙っているルイにも尋ねた。
「ログ街についたら全部話してくれるって言ったよね……?」
 
ルイはアールと目を合わせたが、その視線はすぐに地面へと落とされた。
 
「“タケル”って、なに? だれなの? ……私と同じ世界から来た人?」
 そう訊くと、3人は驚いたようにアールを見遣った。
「写真に写ってた靴、あれ有名なブランド物なんだよ。ちゃんとロゴも写ってたし……こっちの世界にあるわけない」
「アールさん、ここで話すのは……」
「じゃあどこだったら話してもらえるの?! もう十分待ったよ? いつになったら話してくれるの?!」
 痺れを切らし、語調が強くなった。「私リアさんに訊いたの」
「え……?」
「電話でリアさんが言ってた。『“彼”は勇敢だった』って。それから、彼は私の──」
 
 サンプルとしてこの世界に来た
 
そう言ったリアの言葉が脳裏で煩くこだました。
 
「アールさん……この話は、夜にしましょう。昨日お休みしたので、今日は──」
「わかった……」
 と、アールはルイが話し終える前に返事をした。どうせまた話してはくれないのだろうと思っていた。
 
それから一行は夜が更けるまで歩みを進めたが、いつもの様に言葉を交わすことはなかった。
 

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©Kamikawa
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