voice of mind - by ルイランノキ


 指名手配25…『ひたすらに待つ』

 
ルイは、ログ街南西の正面口付近にあるホテルの駐車場に身を隠していた。
電話が切れた携帯電話をポケットにしまう。
 
周囲を気にしながら、壁づたいに正面口が見える場所まで移動した。正面口には武器を構えた男達が腰を下ろして待ち構えている。これでは例え全員無事に揃ったとしても、街の外へ出るのは困難だ。
 
ログ街には、各方角に出入口がある。ルイ達が入ってきたのは此処、南西にある正面口だ。多少遠回りになっても他の出入口から出た方が無難かもしれない。メインである正面口よりは人も少ないだろう。
しかし、この状況で全員に連絡するのは不可能だった。特にカイは、女の子の家を抜け出してからというもの、全く連絡が取れなくなっていた。
 
ルイは駐車場の奥へと移動し、トイレを見つけ、誰もいないことを確認してから掃除道具が置かれている個室に身を隠した。
 
下手に動かないほうがよさそうだ。
 
カイのことは心配だが、下手に動き回ると自分が捕まりかねない。アールのことも心配だが、シドが一緒なら大丈夫だろう。しかし、アールが言っていたことが気にかかる。
ルイは携帯電話を取り出し、連絡が来るのを待った。
 
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「どっち行きやがった?!」
「この辺りにいるのは確かだ。俺は向こうを見てくる」
 と、住人達が去って行く足元を見送ったカイ。
 
物置と化した他人の家の倉庫。使わなくなった本棚や工具、リアカー、自転車などの中に、脚が一本折れてしまっているベッドが置かれていた。その下に、寝そべるようにしてカイは身を隠していた。
 
「危ない危ない……」
 と、カイはベッドの下でごぞごそとポケットを漁る。「あれ……? 電話がない……」
 
逃げている最中、どこかに落としてしまったようだ。一気に気分が下がる。
 
「これじゃあ誰にも助けに来てもらえない……」
 
助けが来るまでここでじっと身を隠していようと思っていただけに、ショックは大きい。
こんな場所にいては仲間にすら見つけてもらえないと思った瞬間、ライズのことを思い出した。
 
──ライズがいたら鼻を効かせて俺を見つけてくれるはず……。だけどライズは今どこに……。
 
ライズがいたとしても、今は人間の姿に戻っているため、残念ながら鼻は効きそうにない。
 
なんか知らせる方法はないだろうかと頭を悩ませるカイは、なにがなんでも助けにきてもらいたいようだ。
 
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──あの日、シドが運転するバイクの後ろに乗りながら、テリーが言っていた言葉を反芻していた。
 
属印者だから弟は死んだ。
弟のみならず、全員死んだ。
 
私さえいなければ彼の弟は殺されることはなかった。
彼は私の存在が死を招くのだと言っていた。
 
 
今ならよくわかる。
私と彼等は決して無関係とはいえない。不本意だけれど。
 
だって沢山死んだから
あいつもあの人もあの子も
 
属印は私の敵である印し──
 

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