voice of mind - by ルイランノキ


 全ての始まり6…『幕開け』

 
目を閉じていてもわかる程の眩しい光に、目の奥が微かにズキンと痛んだ。
静寂な時間が流れ、次第に人の息遣いが聞こえてくる。良子は、恐る恐る目を開いた。
 
そこには、胸章を身に付けた、青や茶色や緑色のコートを身に纏った男達が30人程、良子を取り囲むように立っていた。周りを見回せば、さっきまで自宅付近の屋外にいたはずなのに、何処かの室内だった。壁も天井も真っ白な部屋に、金色の刺繍でアルファベットのような記号と、漫画などでよく見掛ける魔法円が大きく描かれた赤い絨毯だけが敷かれ、その中心に良子は立っていた。
 
「おんな……?」
 そう呟いた短髪の男性の腰に、刀が見えた。
 不可思議な状況に、良子は思わず身震いをした。
「え……何? ここ……どこ?!」
 

──理解出来るはずもなかった。
 
ごく普通に平凡な日々を過ごしていた私が、夢の世界に入り込んだのだから。
君が嵌まっていた夢のような世界に。
 
でも
ファンタジーなんてもんじゃないよ。
 
故郷の世界で、君は冒険もののゲームに夢中だったね。
主人公の力が尽きても、何度でもやり直せて、全てをクリアして、
最後は平和な世界が訪れてハッピーエンド。
 
でも
その作られた夢の世界が現実なら、
 
どれほどの血が流れ、どれほどの命と引き換えに、世界は救われるのだと思う?
 
終わりが見えない現実。
でも必ず終わりはやってくる。
 
それが
ハッピーエンドだろうが
アンハッピーエンドだろうが、始まりがあれば必ず……。

 

リセット出来ない物語が今始まる
 
Voice of mind
 
幕開け

 
第一章 全ての始まり (完)

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