voice of mind - by ルイランノキ |
──ねぇ久美
月日が流れるごとに、お互い新しい生活が忙しくなって、自然と連絡を取り合う頻度が減っていったよね。
それが凄く寂しかったんだ。
だけど、久美には久美の時間があるからと、我慢したの。
本当は逐一話したかった。仕事でこんなことがあったとか、雪斗との惚気や愚痴も、家族の事も。
でも返事が遅いことが寂しくて、久美の中で私の優先順位が下がっていることが寂しくて、私から連絡することも減っていったんだ。
大学生活はどうですか?
大学で新しい友達が出来たりしたのかな。
私も新しく友達を作った方がいいのかな。
私は今でも久美が一番の親友だと思っているけれど、そう思っているのは私だけだったりするのかな。
「…………」
「どうした?」
と、雪斗が私の顔を覗き込んだ。
「ううん、久美から連絡来なくて寂しいなって」
顔を上げると、テレビには雪斗が嵌っているゲーム画面が映し出されている。私にはよくわからない冒険もののゲームらしい。
「忙しいんだろ」
「うん。わかってるけど……」
「会いに行けば?」
「え、東京に?」
「うん。なんなら俺もついてくけど」
「ほんと!?」
久美が東京から帰ってくる日を心待ちにしてばかりで、自分から会いに行くなんて考えもしなかった。
最近は雪斗とデートらしいデートもしていないし、旅行も兼ねて会いに行くのもいいかもしれない。
「迷惑じゃないかな……」
「村富ん家に泊まるわけじゃないなら大丈夫だろ」
「え、宿取る? どうしよう! 久美に連絡してみる!」
私は久美に会える嬉しさと、初めての東京と雪斗との旅行に胸を躍らせながらメール画面を開いた。
【久美! お元気ですか?
この前、彼氏さんと別れたってメールくれたけど、あれからどう?
私は雪斗となんとか順調に交際を続けています。
でも雪斗ってだらしないから掃除とか料理とか任されて正直嫌になる……。
でも、久美が応援してくれた恋だし、家政婦扱いされてもがんばろうと思う。
ところで、急なんだけど、雪斗と東京へ旅行に行こうと思っています。
久美に会いたいんだけど、迷惑じゃない?】
「ねぇー腹へったー」
と、ゲームのクエストを受けながら雪斗は言った。
「今メール打ってるからちょっとまって……」
打ったメールの内容を読み返して、愚痴の部分はやっぱり消すことにした。つい「私は〜」と自分語りをしてしまう癖をやめたい。
【久美! お元気ですか?
この前、彼氏さんと別れたってメールくれたけど、あれからどう?
ところで、急なんだけど、雪斗と東京へ旅行に行こうと思っています。
迷惑じゃなければ会いたいな。秋頃とかどう?】
「これでよし」と、メールを送信した。
すぐに飛びついて「いつ来る? 早く会いたい!」なんて返事が来るんじゃないかと思って期待していたけれど、相変わらず久美からの返事は遅かった。
メール見てくれたのかな、まだ見てないのかな。
そんな風に思いながら、仕事と恋愛の両立に勤しんだ。
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結局、久美からの返事は来ていない。
雪斗と会いに行ってもいない。
その前に、私がこっちの世界に来てしまったから。
Thank you... |