voice of mind - by ルイランノキ


 ゲーム王国2…『選抜メンバー』

 
アールがルイに連れられて屋敷に戻ると、カイ、スーを連れたヴァイス、シド、ベン、ジャック、ジョーカーがテーブルを囲むように立っていた。テーブルの上には最後の本《ゲーム王国》が置かれている。
アールとルイが戻ってきたのを確認したテトラは、よっこらせと椅子から腰を上げ、杖を持って歩み寄ってきた。
 
「今回は随分と大勢で行くんじゃな」
「問題ありますか?」
 と、ルイ。
「いや、どうじゃろな。大勢で“参加”するのは有利じゃが、不利になることもある」
「どゆこと? どんなゲームに参加すんのさ」
 と、カイは欠伸をしながら言った。
「色々じゃ。チーム戦もあるが、君たちはチームとして機能しているのかい」
「…………」
 一同は目を合わせた。
 
組織と別行動ならともかく、ひとつのチームとしてなにかに挑むとなると不安がよぎる。
ジャックが率先して提案をした。
 
「またお前たちで行ったらどうだ? 人数が必要になればあとから入ればいい」
「残念じゃが、今回の本には後から参加は不可能じゃ」
「なんでだよ……」
「それと言い忘れておったが、命の保障も出来ん」
「命に関わるゲームなのか?!」
 と、一同は怪訝な表情でテトラを見遣った。
「そういうものもあるということじゃ。嫌なら参加しなければよい。参加するゲームは選べるからの」
「…………」
 
なんだか厄介そうだ。ゲーム王国というタイトルからして遊べそうだったが。楽しみにしていたカイの表情も心なしか曇ってきた。
 
「どうする」
 と、ベン。「必要な人材だけ連れて入るか」
「誰が人材を決めるのです?」
 と、ルイ。
「アール、お前が決めたらどうだ」
 ジャックがそう提案した。
「私?! なんで私……?」
「お前は絶対に行くんじゃないのか? 仲間にだけ行かせておとなしく待ってられないだろう」
「…………」
 よくご存知で、と言いたくなる。
「では、アールさん、どなたを連れて行きますか?」
「責任重大……。くじ引きじゃだめ?」
「チーム戦があるのでしたら、アールさんが信頼できる方を選ばれたほうがいいかと」
「私だけが信頼していても……」
 
会話を聞いていたテトラがため息をついた。
 
「決まったら言うておくれ」
 と、椅子に座る。
「テトラじいちゃんさぁ、ゲームの詳しい内容までは教えてくんないの?」
 カイは面倒くさそうに訊く。
「本を開くたびに変わるからな。ただ、ポイント制であることは変わらんじゃろうな」
「ポイント?」
「いくつかのゲームをしてポイントを貯めて欲しいものを手に入れるんじゃ」
「ポイント貯めて金のプレートゲットすんの? 楽しそうじゃん。やるゲーム選べるなら危なそうなのは選ばなきゃいいし。案外気軽にメンバー選んでも大丈夫じゃないのん? 俺は絶対入れてよね!」
「…………」
 
アールは困り果て、腕を組んでひとりひとりを眺めた。
 
「念のために言っておくが」
 と、ベン。「組織の中からも選べ。集めた金のプレートをちょろまかされたら困る」
「金のプレートだけちょろまかしたって意味じゃない……。でもまぁ……わかった」
 
自分たちの知らないところで行動されるのが嫌なのだろう。監視下に置いておきたいのはこちらも同じだった。
 
「私の仲間はみんな連れてく。組織からは……」
 
誰が役に立つかどうか考える前に、真っ先にシドを選びたくなる。シドだけ選んだらなにか言われるだろうか。その前にシドが嫌な顔をしそうだ。
 
「ベンさんと、シド」
 
2人、引き抜き。
せっかく戻ってきたジョーカーだったが、謎の行動が多すぎて信用は全く無い。ジャックは失礼ながらあまり役には立たないのではないかと思った。
 
「じゃあその6人だな。──俺も行きたかったが」
 と、ジャックは少し残念そうに呟いた。
「ごめん……」
「ジャック、お前はジョーカーを見張ってろ」
「え……お、おう……」
 と、ベンに言われ、ジョーカーを一瞥するも、仮面を被っている彼の表情はわからない。
「ジョーカー、お前はもう勝手な行動はするな。仲間の信用をなくしたらどうなるかわかっているな? 三部隊の頭はシドだ。シドや俺に報告できないようなことでもしでかしてみろ。いつでも切れるんだぞ」
「わかっている」
 ジョーカーは短く答えた。
「じゃあじいさん、頼む」
「うむ。頑張って最後のプレートを手にいれるんじゃな。命は落とさんよう、気をつけなさい」
 
テトラは注意深くそう言って、杖を翳した。
アール、ルイ、カイ、ヴァイス、スー、シド、ベンは本の中《ゲーム王国》へと入っていった。
 

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