■起承転結


私は都会の深夜の暗闇の中をただ一人
がむしゃらに走っていた

『…っは、ハァッ、はぁ…っ!』

足が縺れて地面に倒れる
遠くから私を追って駆けて来る足音が聞こえる

その足音はまるで私の居場所を認識しているかのような

(あ…、あ…っ!)

この機を逃したら、もう遊馬から
逃げる機会なんて無いだろう

最後の希望は捨てずに走るけれど
なぜかタクシーさえ見つからない
携帯は遊馬以外へは繋がらない

この近辺の地理に疎い私にはどこへ逃げようと
いずれ彼に捕まってしまう事が分かってしまい
次第に逃げようとする意欲も遠退いていく…

それでも裸足であるという痛みに呻く間も無く
硬いアスファルトを必死に蹴り上げながら
心の中で叫び続けた

(助けて…!誰か…っ!)

当ても無いままとにかく彷徨ってると
反対車線を走る、車のライトに気が付いた

私は咄嗟に近くの物陰に身を隠し
その車種を伺うように目を細め
その持ち主が分かった瞬間…

『…っ助けて、助けて下さい…っ!』

私は転げるように物陰から飛び出した
目の前で止まった車から降りてきたのは
やはり、あの中津川さんだった

体が勝手に縋るように腕を伸ばしていた

電灯の明かりが照らしているとはいえ
薄暗い道路ではイマイチ判別が出来ないのか
彼は私の目をじっと見つめながら
一年以上もの前の記憶を探っているようで

「……ああ、君か!どうしたの?!」

やっと記憶の中で目の前の私の素性に繋がったのか
何故夜中に一人でこんな場所にいるのかと尋ねてきた
こんな場所で長々と説明しているような余裕はない

あぁ、これで助かる
車を持ってる中津川さんならば、少しの間
私をこの街から消すくらい簡単なはず…

『助けて…下さい…っ!
どうか私を、匿って下さい…っ!』

何もかもを投げ捨てて中津川さんに
委ねようとした…その時だった

「…よォ、紫乃、こんなとこで何してんだ?」

背後から嫌というほど聞き慣れた声を聞いた瞬間
最後の灯が全て灰になって消えてしまった

カタカタと芯から体が震え、額から止めどなく汗が伝う
あまりの絶望に膝が崩れ落ちそうになったと同時に
背後から伸びてきた両腕に引き寄せられて

私の体はあっさりと捕らえられてしまった

「……約束を破ったら仕置だって
あれ程言ったよなぁ? 紫乃」

後ろからすっぽりと覆い被さるように
私を抱き締めながら、耳元で妖しく囁かれるその声
本来ならば蕩けるほど甘く優しいものなのに
今の私には恐怖を煽るものでしかなくて

『あのっ…!』

「すみません、彼女が迷惑をおかけしました
僕達はこれで…ほら、帰るぞ紫乃」

中津川さんには愛想よく頭を下げながら
横抱きに抱え直されて、自分の意志とは関係無く
また遊馬にこの身を攫われてしまう

そして私に向かって鋭い睨みをきかせながら

「紫乃、これ以上俺を怒らせんなよ…」

低く唸るような声で怒鳴りつけられた
その言葉に遊馬から逃れる可能性を
私は失ってしまったんだと

逞しい両腕で私の体をキツく捕らえる彼の腕の中
私は小さく泣きながら悟った

俺との大事な約束を、破ったんだ
だから、紫乃が悪いんだ

「もう絶対に逃げないって、言ったよな?」


ーーー深夜いきなり会長に呼び出された俺は
迷いながらも紫乃の「絶対に逃げない」
という言葉を信じて、そのまま自宅を後にした

だけど、手短な飲みの付き合いを終えて
自宅に戻ってみると、自分を待つ
紫乃の姿なんてどこにも無かった

ガシャン…

紫乃を部屋の大部分をキングベッドが占める
施錠付きの寝室へと閉じ込めた

『いやァ…来ないで…っ!』

放り投げられたベッドの上で
怯えた目で遊馬を見る紫乃から
視線を外さず自らの服を
一枚一枚と脱ぎ捨てていく遊馬

「紫乃がいなくなったとき思ったんだ
どうせ俺の手からすり抜けていくなら
いっそ共に死ねばいいんじゃないか…って」

遊馬の瞳の奥に暗い炎が灯り、それに気付いた
紫乃の体が一瞬びくっと震える

自分の指をぺろりと舐めながら笑みを浮かべ
遊馬は自身のスーツのズボンを下ろしていく

『やっやぁっ…!』

「…大人しくしないと…マジで殺すよ?」

遊馬は紫乃の首に手を掛けながら
衣服を引き裂いて、怒りのままに
威きり勃った肉棒を一気に突き入れた

『ああぁっ!あぁぁぁぁ!!』

紫乃の細い首を絞めるには片手で十分で
そのままぐちゅぐちゅと激しくを突き上げてやる

手に力を込めると反応するように
紫乃はナカをギュッと締めつけてくる
その締め付けに煽られるように、自身のペニスが
ナカでグンッと大きく膨らむのが分かる

グンッ…

苦悶の表情を浮かべる紫乃に
まだまだと手形が残るぐらいにキツく首を締め上げる
紫乃の苦しそうな呼吸に遊馬は更に欲情して
先走りを撒き散らしながらビクビクと痙攣させた

「うっ…出るっ…!」

どくどくと脈打つペニスから
紫乃の中に精液を注ぎ込んだ
もう今更避妊なんてしてやる必要もないだろう

ヒクヒクと収縮を繰り返すナカに指を突っ込み
愛液と精子とを丁寧にすくい取り
紫乃の顔の前に手を差し出すと
強引に嫌がる口内へと運んだ

「…ほら、お前のナカ…味わってみ?」

『んんーっ!…ハァッ…ぁっ!』

紫乃は涎と涙を流す牝犬となって
既に何度も逝き狂っていた、だから
かまわず先端を、濡れそぼった秘部へと沈めていく

『…っもう殺して…くださ…ひぎぃっっっ!』

物分りの悪い牝犬を躾けてやるかのように
喉元に強く噛み付いてやった
肉を削り取られているかのような激痛に
紫乃は悲鳴を上げる

血塗れの喉元を構うことなく手で押さえ
首を絞める力を強めては緩める作業を繰り返す
窒息寸前の紫乃の顔は徐々に血色を失っていった

この上なく異常な状況の中で
際限もなく興奮は高まっていって
遊馬は箍が外れたように激しく腰を打ち付ける

「…っ!」

やがて紫乃の最奥で再びはじけ
熱い欲望の塊を爆発させた
いつまでも射精が終わらずに
ペニスがヒクヒクとうち震えている

遊馬は虚ろな目で行為の余韻を味わっていた

呪いの人形?

あぁ確かに呪いに取り憑かれたかのように
俺は今もこうやってまるで人形のようなお前に
異常なくらい執着しきりだな…

紫乃のナカは俺のことが好きとでも言うように
熱くうねり俺のモノを締め付けてくる
一度ナカに挿れると理性がふっ飛んで
激しいピストンを繰り返してしまう

それでも何度体を繋げても
紫乃の愛に飢えて満たされない
むしろ体を繋げれば繋げるほど
紫乃の胎内を俺の精液で溢れさせるほど
その飢えが酷くなっていくのを感じた

その理由は分かってる
互いに愛し合っての行為じゃないからだ

時が経つにつれ
俺を見つめる紫乃の目に光はなくなり
以前のような笑顔が向けられることもなくなった

それに気付いて絶望した俺は
紫乃に愛されない虚しさを埋めようと
さらに強引な行為に及んでは犯す
毎日がその繰り返し


こんな日々から紫乃が逃げたくなるのも
当然なのかもしれないーーー


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