2. 不協和音


まだ処女だった紫乃の綺麗な体を無理矢理奪って
一応避妊具は着けてみたものの
己の欲を剥き出しにしてーーー汚した

勿論紫乃にとって俺は
誘拐犯で強姦魔の悪魔に見えただろう

でも俺はそれから、紫乃に
与えた傷以上の愛を与えてたつもりだった

紫乃が欲したもの望んだもの
広い生活空間や長い休息時間
見たこともない都会や自然の景色
全てを紫乃に捧げる為に

今まで以上に危険な仕事にも挑み
ただの子分だった階級からも出世した

お前の大好きな本だって沢山買い与えたのに
隙を見てはあの出会った遠く田舎町へ
一人でひっそりと帰ろうとする

そうやって最初の内は何度も何度も
逃げ出そうとしていた紫乃

抱く度に嫌々と頭を振って、全身で拒絶される
だからこそこちらも躊躇しながらも
鎖で繋ぎ止めるしか方法はなかった

そんな生活が一ヶ月過ぎたある日
紫乃は急に大人しくなった

俺が「愛してる」と言えば
紫乃も同じ言葉を返してくれた
あんなにも嫌がっていたセックスだって
恥じらいながらも受け入れてくれるようになった

『だから、私とこのままずっと一緒にいたら
遊馬さんが不幸になっちゃいますよ…?』

「少なくとも今のとこは問題ナシだ
むしろ今の俺は幸せで、金運も仕事運も…
恋愛運だって絶好調だっ!」

『…っ///』

すっかり自分の愛を分かってくれたんだと
やっと紫乃と想いが通じ合えたんだと

少しずつではあるけど紫乃 に自由を与えてやって
繋いでいた鎖も外して”鳥籠”から放ってやった


ーーー鎖を外されて間もなく、携帯電話を渡された

出かける時は必ず一人で、何処に何時までに帰るを伝え
家についたら電話をかけるという
いわばGPS付きの監視用通信機器

彼は私を愛してくれている、私も愛している
だから大丈夫、だから信じてほしい
これまでそうやって自分にそう言い聞かせてきたのに
彼の束縛はエスカレートするばかりで…

バンっ!

大きな音を立てて勢いよく車のドアが開いた

遊馬は静まり返った車内に乗り込んできて
血の気の引いた顔の私の腕を掴むと
外に停めていた自分の車まで引き摺られた

途中で中津川さんの顔を確認しては
ギロリと鋭く睨みつけていた

『嫌っ、やめて遊馬っ!』

玄関先で遊馬の荒い息がかかる
痩せすぎの細い紫乃の体は簡単に押し倒されて
着ていた衣服も切り裂かれた

また手を鎖に繋いで拘束して
今度は足枷も付け加えられる
今から遊馬は私を無理矢理抱こうとしている

『こんなのって…ただのレイプだよ…ね?』

「レイプ?なんで?紫乃は俺の女だろ?」

片手で胸を乱暴に鷲掴みにされて
紫乃の口から悲鳴が洩れた

冷たいナイフの背で頬をさすられ首を滑らせながら
遊馬は目を見開き紫乃の反応を愉しんでいた
いや、睨んでいた

「紫乃は、俺に嘘をついたんだ
裏切ったのはそっちだろ?」

『ご、ごめんなさい…』

ブラじゃーのフロントをナイフで切り取られる
遊馬は怯える紫乃の胸の膨らみを乱暴に揉み
突起まわりを指先でさすりながら
怒りのままにナイフでパンツまで切り裂いていく

『ごめんなさい…あの人は前にお世話になってた
旅館の人で、街でたまたますれ違って
車内で話し込んでいただけなの…
本当に何もないの、ごめんなさっ…ひっ…!』

遊馬の指が割れ目を滑り、蜜口に捩じ込まれる
指が入れられただけなのに、強張って
力が入り酷い痛みを感じた

このまま易々とは許してはくれないだろう

「ここは、触らせてないみたいだな…キスは?
されなかった?手は?肩は?どこも触られなかった?」

遊馬の指が濡れていないソコを
確かめるように上下左右、乱暴に掻き回す

さっきも何もなかったと正直に答えたのに
遊馬の表情は変わらず険しいまま

「夜道は危ないから迎えに行ったら、お前は
知らない男と車でイチャイチャしてましたー」

怯える紫乃を、遊馬は嬲るように責め続ける
玄関先で声を上げられないのは分かってるくせに
指を二本三本と増やされる

もう痛みはなくなってきていて快楽に支配されて
声を出したいのに出せないもどかしさ
クチュクチュという、虚しい水音だけが響く

「で、俺には連絡もよこさず、門限になっても
連絡ないから電話したら、今一人ですぐ帰るって
嘘までつきやがって!」

『ひゃ…んっ!』

遊馬は、こんな私を愛してくれている
だから、不器用ながらもこんなに心配してくれている

我慢の限界だった私は、急に優しくキスされて
思わず顔が蕩けそうになった
愛撫も優しくなって、遊馬の表情も揺らいで
優しく頭や頬を撫でてくれた

もしかして許してくれた…?

そのままお姫様抱っこされて、ベッドへと運ばれる
短いキスを何度も交わしながら…きっと
私をこんなに愛してくれる人は遊馬以外にいない
そう何度も何度も自分に言い聞かせて

「どうすれば紫乃は俺のものになる?
どうすれば俺を愛してくれる?」

『んっ…でも…こんなの…だめっ…!』

既に怒張していた自身にゴムをつけ
我慢できないとばかりに、遊馬は私の中に
いきり勃つソレを突き立てた

もう怒っていないと薄々は思っていたけど
これまでにない激しい律動だった

『あす…まっ…はげ…し…はぁ…ぁあんっ!』

まるで私は自分の所有物だと言うように
それを身体に刻み付けるかのように
体の深の奥の奥まで激しく揺さぶられる

熱く痺れて、身体中が性感帯になったみたいに
私は遊馬に支配されていく…

「俺にはこうする以外方法がないんだ…!
だから俺を拒絶しないでくれ…っ!
紫乃…紫乃が欲しいっ!」

呼吸さえ許さない、貪るような舌を絡めるキス
同時に乳房の先端も同時に責められる
私は全部、全部、遊馬のもの
そう思うだけで意識が飛びそうになる

「…紫乃、…紫乃っ!」

『ゃ、ぁ、遊馬っ、だめっ、わたしもう …っ!』

激しい快楽の渦の中で何度も何度も名前を呼ばれ
イキそうって感極まって目尻に溜まる私の涙を
遊馬が優しく舌で舐めとっていく

「いいよ、イけっ、お前は俺だけ感じてろ…」

私が果てたのと同時に
ナカに遊馬の思いの丈を吐き出された

まだ射精が終わらない内からゴムをそそくさと替えて
遊馬は再びピストンを開始させる
こうなれば彼はもう止まらない


後日、中津川さんとまた道でバッタリ会うなり
この前の彼に引き摺られた状況の説明を求められ
私は包み隠さず正直に答えた

「はぁ?それで強姦されたのですか?」

『ご、強姦じゃないてすよ、最終的には…同意の上です』

すると呆れたと言わんばかりに
目の前で大きく溜め息を吐かれた

「今の君の彼氏は異常ですよ
一刻も早く別れた方がいい…」

なんで、中津川さんが私なんて心配するんだろう
私はこんなにも遊馬に愛されて幸せなのに

幸せ…?

「普通じゃない、あの人、そのうちエスカレートして
取り返しのつかないことになりかねない」

『彼は少し独占欲が強いだけですから…』

「少しじゃないからこうして心配してるんです」

中津川さんの表情があまりにも真剣なせいで
少し考えさせられてしまう

大丈夫なのに、私が遊馬を好きでいて
不安にさえさせなければ
この先もうまくやっていけるはずなのに…

でも彼はただの誘拐犯
私をきっと自分の所有物として愛していても
それは人間の恋人同士の愛なんかじゃない


そのことに、愛の形に、私はようやく気が付いたーーー



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