■第四幕

生徒会長らにも姦されて、ついに私の周りは敵だらけなんだろうか。葵はふとそんなことを部屋で考えながら宿題をしていると、教室にノートを忘れたことを思い出した。


『優〜世界史のノート借りるぞー!』


トイレに入っていて返事はなかったが、勝手に優の机をいじくった。すると一枚の女子高生の写真が出てきて、一緒にメモ帳やファイルまで出てきた。それらが殺人事件と目した題名に、思わず後ずさった。


「なーに人の机勝手に開けてんの?」

『いや……世界史のノート…見せてもらおうと…。』

「ふーん。アンタいつも男のフリして、気丈に振る舞って意地らしいけど…怯えることもあるんだ。」


あちゃー優にも女だってバレてたのか。まぁそれでもこいつはおそらく、黙っててくれるだろう、根拠はないけど。強請るような真似もしないはず…。葵がそう思ってた矢先、力任せにグィっとネクタイを引っ張られて、優は冷たい目で言い放った。


「あんま部外者が深入りしない方がいいよ?この学校、強姦死姦の殺人犯がうじゃうじゃいるから。」


あまりの衝撃的な優の発言に自分の耳を疑ったが、その凍てつくような眼差しに、あながち嘘でもなさそうで。この近辺で昨年起きた女子高生殺人事件は記憶に新しい。確か犯人は近所の無職のオッサンだったような。その被害者の子の名前は確か…。


「……殺されたのは藍原 梢。俺と血の繋がった妹だ。」

『え……っ?!妹……さん?!』

「そして俺の”今の親”は警察上層部。もう大体の真犯人や詳しい死因は把握してる。俺もお前より少し前に転校してきて、この学園の隠蔽組織の仕組みが分かってきたとこだ。」


優は続け様に淡々と話してはいるが、真犯人?隠蔽組織?強姦死姦?後から頭が追いつかない。


「お前も”わざわざ”この学園へ裏口で転校してきたってことは……それなりに何かありそうだな。」


そう言いながら薄ら笑いを浮かべる優。私は殺人犯を突き止めるとか、そんな危険な使命じゃないけど…。むしろこの学園について詳しいなら、聖をイジメてる奴らを教えてほしいくらい。


「弟?あぁお前にそっくりの奴か。俺はいちいちそんなイジメのお遊びみたいな現場に立ち合うほど、暇じゃないんでね。」

『……っ!』


聖がされてる仕打ちをお遊びとか言った優に、カッとなった私は気付いたら頬にビンタを浴びせてた。すると背後から強引にベッドに押し倒され、片腕でいとも簡単に首を締め付けられる。優を振り払おうとするが、びくともしない。


「お前くらいの女が。男に抵抗しても無駄だって。」


優は暴れる葵を難なく抑え込むと、そっとその手を離した。私より少し身長が高い位の男にも敵わないなんて…。


『やっぱり男子校に潜入なんて…無謀すぎたかな。』

「あぁ、早いとこ撤退しな。今度の休みには弟連れて、実家でも帰ってのんびりしてさ。」

『うん、そうするよ…。なんか、色々聞いちゃってごめんな。』


そして祝日を入れての3連休。葵は聖を連れて、片道3時間の遠く実家まで帰った。聖は電車内でも相変わらずスマホやらピコピコしてるが、顔色は元気そうだった。


『ただいまー!』

「おかえりなさいー!葵!聖!」


久しぶりに帰る子供達に、母は盛りだくさんの料理を用意してくれた。私はペロリと平らげるが、病弱な聖はいつも少食だった。やっぱり自宅のお風呂やベッドなんかは良いねと聖と語り合いながら、それぞれの部屋に寝床についた。

私は次の日は地元の友達と約束があった為朝早くから外出。聖はいつも部屋でPCと引きこもったきり、一応誘ってみたけど出てこようとはしない。確か紫外線にも弱いんだっけ…?同じ双子ながら私ばかりがこんなに健康体で申し訳ないと思いつつ、久々の地元の集いは大いに盛り上がり夜には帰宅。


「おかえりー、あっ僕ご飯はいいよ。母さんにもそう言っといて。」

『うん分かったー。大丈夫、調子悪いの?』


目にクマができて顔色が悪い。どうせまたPCのやり過ぎだろうけど、ここまで不健康な生活だと何かと心配してしまう。それにあのイジメの痣…。もうほとんど薄くなったかなぁ?と期待を膨らませて、聖の入浴中に押しかけてみた。


「うっわっ!!姉さん!急に入んないでよ…っ!」

『いやーすまんすまん。ちょっと眉毛のお手入れしようと思ってさぁ〜風呂場に剃刀ない?』


と言いつつチラリと聖の背中を覗いた。なんだこの痛々しい跡は。どう見たって酷くなってる。流れ出るのも冷たい水で、赤黒く水ぶれに深い傷跡、お湯なんかとてもじゃないけど掛けられない状態。


『聖っ!どうしたのこれ!』

「……っ!僕…自分で自分を痛めつける…みたいな癖があるんだ…。だから、気にしないで…。」


なんなんだその言い訳は。どう見てもこれは昨日今日作られた傷や痣だ。ということは学校内のイジメじゃなかった…?聖の言い分は本当?もう一体、何が何だか分からなくなってきた。

その晩、なかなか寝付けなかった。聖はいわゆる自傷行為ってやつなの?あんな背中に?なら尚更、家族である私が止めなきゃいけない。

こうしてる今も自分を傷つけていないか心配で堪らない。私はそぉっと部屋を抜けて、薄明かりが付いている隣の聖の部屋のドアをこっそり開けた。目の前に信じられない光景があった。


『か、母さん……聖に何してるの?』


私は聖の背中を鈍器で殴りつけようとしていた母親を目撃して、ガクンとその場に項垂れ崩れた。


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