6. 赤いナイフに染まる日A


もう、このまま永遠に目覚めなければいいのに……。

そう思っていたのに再び目を開いてしまった。視界は暗いまま。ここはどこだろう?体を起すとギィとベッドの軋む音がした。そうだ私、両親を殺されて礼央に犯されたまま…。

さっきまでいた家の執事室の景色とは違う。6畳ほどの小さな木造のつくりの部屋に、今いるのは薄い板でできた簡素なベッドの上。

ドアが開いていたので抜け出してみると、奥にはさらには厳重に施錠されていた鉄の扉があった。冷たい石畳の階段を上っていくと、頭上に鉄格子の填め込まれた窓が見える。

おそらく夜だろう。窓から照らされる月明りを頼りに、鉄の扉へと手を掛け脱出を試みるものの、当然鍵がないと金属の錠は開かない。

仕方なく弱った身体を堪えて何度も何度も扉を叩いた。誰でもいいから誰か気付いて欲しい。そんな思いが通じたのか、しばらくして扉越しから靴音がする事に気付く。誰かがこちらへやってくる様子を、鉄格子の窓から伺おうと背伸びをした。

その瞬間、ガチャリと金属の錠が開く歪な物音がした。目の前に立っていたのは、月明りにぼんやりと照らし出されたうっすら赤い髪に同色の瞳。かつて私に仕えていた人物。


「…紗世、駄目だよ部屋から出たりしたら。せっかくお嬢様に相応しい部屋を、わざわざ用意してあげたってのに……。」


礼央は暗闇に潜む紗世の姿をまだ目ではっきりと捉えきれておらず、紗世は開いた扉の背後へとペタリと張り付いて、ひっそりと身を隠しながら上手いこと逃げ出した。

石畳の階段を駆け下りて部屋を見渡すも紗世はいない。他に逃げ場や隠れる場所もなく、考えられる逃げ道はひとつ。


ざさ‥ざ……

風を横切り裸足のまま必死に森の中を駆け抜ける紗世。するとすぐ横を通り過ぎた木の幹に、何かキラリと光る鋭利な物が刺さった音がした。紗世は恐る恐る視線を向けると、打ち込んだナイフを引き抜く不機嫌そうな礼央の姿があった。


「はぁ…逃げたところで、いずれ誰かに殺されるってのに。俺は一応お前のこと、信じていたのに酷いねぇ…。」

『………っ!アンタなんかに縋って生き延びるくらいなら、死んだ方がマシよっ!』

「俺についてりゃお前に変な虫は寄りつかなくなるけどね?…放っといたら逆に死ぬって。」


礼央は如何にも愉快そうに笑いながらも、怜悧な口調で切り返す。それはただの脅しなのか、それとも本当に自分は不特定多数に狙われているのか。どこへも逃げ場のない紗世を弄ぶかのよう様に、礼央は再び鉄の扉へと引き寄せ石畳へと叩き付けた。

階段から崩れ落ちて腰を強く強打し起き上がれない紗世を、礼央は馬乗りにして覆い被さった。赤い瞳が冷たく見下ろしている。


「紗世が悪いんだ。」

『ひぁぁっ…‥や、嫌ぁっ…!』


顔色ひとつ変えない礼央に腕や脚を掴まれて、首筋や胸元にキツく噛みつかれた。手のひらで紗世の頬を数度軽い程度に叩くと、まだ濡れてもいない秘部へいきなり指を三本深くまで埋め、礼央は紗世の苦痛に歪む表情を愉しんだ。

ナカの粘膜を何度擦り上げても、今までとは違ってなかなか蜜が溢れてこない。恐怖に強張って緊張でもしているのだろうか?


「…力抜けって。俺の、たぶん今日特にデカいんだわ。」

『ひぃっ…‥や‥……ゃあっ…!』


そう言って剥き出して見せつけられたのは、普通の人の倍以上ある長さ、それに見合った太さのまるで凶器のようなペニス。誰が礼央の体格から、ここまでの凶根が想像ができるだろうか。


「もういいや、我慢できないしこのまま挿れるわ。落ち着いて息吸って…そう、力抜けよ…あと3分の2くらい!」


礼央は紗世の両足を限界まで広げ抱え上げると、猛った雄を捩込んだ。腰を前後に動かして少しずつ紗世のナカを拡げていく。いつも指や舌で慣らされていても大きすぎるソレは一度で入り切らないのに、増して濡れてもいない秘部へと力任せに侵入してくる。


『あっ…ぁがっ……くっ……ぁ……かはっ!!』

「よし、半分まで入ったぞ。……っ!」


ずくずくと半分まで挿入すると、礼央は指で秘部を左右に開き一気に根元まで押し込んだ。おそらく紗世の子宮口あたりまで礼央のペニスがおさまり、下腹部を抉られるような痛みに襲われ悲鳴を上げる。


「…‥ホント、紗世の中は具合がいいわ。勿体無いなぁ〜。いつまでもこうやって、ぐっちゃぐちゃに掻き回したくなる…。」

『イヤァァァあ…っ!…あ…あぁっ!もう殺してえぇぇ!』

「ダメだ、まだだ。出すぞ…ほら……中に全部出すからな……っ!」


ビクビクと自身を痙攣させながら、礼央は目一杯の自分の欲を紗世のナカへと注いだ。全てがおさまりきらず肉の棒を引抜いてもなお、ゴボゴボと白濁を溢れさせている光景に、礼央は満足げに目を細めた。

繰り返し繰り返し突き上げられて堪え切れず、泣きながらもう止めて殺してくれとまで叫んだのに、自分のナカに親殺しの憎き殺人犯の子種を、強制的に吐き出された行き場のない絶望感。

礼央は意識の遠退きかけた紗世をがくがくと揺さぶり、乳首を抓ったり肉茅を摘んで刺激しながら、更に激しい律動で紗世を蹂躙する。


「だからまだだっつってんだろ!今日は俺が楽しむ番だ。しっかりヨガってイカせねぇと、今すぐぶっ壊すぞ!」


簡素なベッドが大きく軋む音と、痛む腰を引き寄せて埋められたまま、次第に大きくなる結合部からの卑猥な音。何度も私の中で礼央のモノが膨張して絶頂を迎えている。虚ろな視界に凍てつくような、それでいて燃えるような視線と左目の傷跡が頭から離れない…。

たったの数秒、一呼吸の僅かな時間だった。礼央は一旦私の体から離れて煙草に火を点けた。この馴染みの煙の中で、ただゆっくりと眠りたい。全てが夢かもしれないのだから……。


ーーーなんて、些細な夢物語でさえ許されないのだろうか。


私は礼央に将来の夢を語った。それを聞いてふっと鼻で笑われた。それも当然、誰が聞いても果てしなく遠いどこかの別世界だと。


「お前如きの力で施設の組織を変えたいだぁ?それならその身で俺の元で…一生、罪を償いますくらい言いなさいよぉ…?」

『……私は一生、礼央のことは…受け入れられないから……。』


礼央の茶化すような冗談とも最後の問いかけともとれる言葉に、紗世は率直に今の自分の思いを伝えた。

だからいっその事、今すぐ殺して欲しい。それで私の一族の犯した罪を償うことで、礼央とその仲間達の気が済むのなら。

礼央は赤く染まったナイフを、躊躇いなく私の喉元へと向けた。


『礼央は、私とずっと一緒にいたのは…全部藤宮家への復讐の為?』

「何度も言ってるだろ。俺はあの施設を作り裏で子供相手に手を汚してきた……その一族に復讐したいだけだ…。俺の仲間……新しい家族も……皆お前らに殺されたんだ……!」

『そう…だから礼央は私にナイフの切先を向けるんだね……。』


恐怖に顔を引き攣らせる、次第に全てを受け入れるかのような穏やかな表情へと変化していく。かつての愛しい俺の性欲処理機。

何故、恐れる?俺はただ、お前に君を罪を償って欲しいだけなのに。今更何を恐れると言うのか。


「心配するな、楽に逝かしてやる…。」

『ふふ……冗談……なわけないよね………。』

「……私が冗談なんて紗世様に言ったことがありましたっけ…?」


互いの鼓動の音まで聞こえる。見つめ合い、近付く二人の目と目。礼央の目から溢れ出すのはまるで赤い血の涙ーーー。

礼央の深い傷を負わせた赤い瞳に私はいない。そのことが私の心を酷く胸を締め付ける。今の私の目の前には礼央しかいないのに…。


『さようなら……礼央……。』


礼央はニコリと微笑んだ。ナイフの平たい面で紗世の頬を優しく叩いただけで、紗世の身体がビクリと震える。

強がりからか表情には出ていないが、言葉も出ないくらいに怯えている。こんな紗世の姿もそろそろ見納めか。


「お前の死をもって沢山の尊い犠牲者が報われる……そうだろ?」


そっか、答えられほど紗世は怯えているんだっけか。その怯えた顔さえ今はなぜか愛しくて、切なく惜しい。


『…れ……お…、ご、めん……な…さ………。』


紗世の腹部にズプズプと刺さっていくナイフ。礼央の手にはドクドクと腹部から流れる、鮮やかな血痕に染まっていく。

愛しい紗世の赤い艶めいた血液。一瞬それだけでも興奮した俺はパラフィリア、いやもはや人間でさえないのかもしれない。

下腹部を貫くように一気にナイフを縦に動かすと、紗世の小さな叫びが部屋に響いた。礼央はナイフを突き刺したまま、自分の方へ倒れてくる紗世の体を優しく抱き締めた。


「紗世…。」


名前を呼んでももう返事はない。

同時にジンジンと熱くなっていくのを感じる自身の異常な下半身。紗世の体が欲しい。死後硬直で硬くなってしまう前に、今すぐに紗世の体を自分の手で穢したいと心の奥で叫んでいる。

赤く染まったナイフを抜き取った。白と赤のコントラストを描いた、綺麗な体が晒け出された。


「紗世…何度見てもお前の体は綺麗だな…。」


ズボンのチャックを開け下着のボタンを外すと、張り詰めたペニスが更に自身を主張していた。もう限界だった。

紗世の両足を広げナカに指を入れた。さっきまで行為に更けていたというのに、微動だにしないソコ。礼央はソコに顔を埋め舌を突き出し、何度も割れ目を舐め上げた。自分の唾液によって再び美味しそうに濡らす紗世の可愛い一部。

いつもだったら勝手に嫌というほど濡れ出てくるのにな。でも今の俺にはお前の可愛い喘ぎ声が聞こえている。お前は生きる世界が少し変わってしまっただけ。俺だけの脳内だけで生かしてやる。


「そろそろ…紗世も限界か?クっ…そんなに締め付けたら…直ぐにイってしまうだろ!」


ズプッと濡れた紗世のヴァギナが礼央を何の抵抗もなしに受け入れていく。纏わり絡みつくのは愛液ではなく、自身の先走り。

いつものように両胸を手荒く両手で揉みしだき、腰は絶えず激しく上下に輸送して再奥をコツコツと突いてやる。すると紗世は甘く溶けるよな喘ぎ声を上げる。


「紗世、気持ちいいか?だったらもっと鳴いて、喚いていいんだ。もう誰に遠慮することも、我慢することもない。」


礼央は何度も何度も白濁色の液を紗世の奥深くに放出し、反応の返ってこない紗世の体でさえも堪能した。


「 気持ち良かったな、紗世……。次はもっとお前をヨガらせて、沢山酷い事してやるからな……?」


紗世の涙の伝った跡が残る頬を撫でながら、礼央はふと本来の目的を思い出した。ナイフで慎重に紗世の左目を、紗世の体から離していく。柔らかいような硬いような、意思のない紗世の眼球。


「ああ、そうだった…、お前の片目…貰っていくな…。」


礼央は横たわる左目の眼球の無くした亡骸に優しく微笑んで、その頬と唇に口付けた。生死を彷徨う紗世にお別れのキス。


藤宮 紗世、本名かも定かではない暁月 礼央が二番目に愛した人。


お前は、お前だけは、俺のこの手で…。ずっと傍にいてくれるよな?答えなど聞かずとも、いてもらうから。アイツの笑顔はもう俺の幼い記憶の中で、朧げでボヤけていくんだ…。





2020年 4月 九条 紗世ーーー某児童擁護施設 代表責任者 就任
女性初の代表者となり、一躍各界に衝撃が走った。紗世はこれまでの病院や製薬会社との裏取引の一切を闇に葬り、関係を切り離した。


彼女の生涯のパートナーは、一族を皆殺しにされながら片目を失いながらも、紗世を一生守り抜くと誓い夫婦となった、九条 鷹司で間違いなかったのかもしれない。





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