1. 悪魔が引き寄せた出会い


逢坂 侑李(17)人生初の一目惚れだった

それは雪の降る夜
予備校帰りに迷い込んだラブホ街の裏通り

ブロンドヘアーに色素の薄い瞳
それらも綺麗に結い上げて後ろへ伸ばし
冷たい風にサラサラとなびかせている
顔立ちは白肌のまるで白人ハーフのようで
歳は自分と同じ17歳位の少女

4〜5人の屈強な男達に囲まれて
怪しげな裏路地へと連れ込まれていく
身長も170cmギリギリで細身の体型
小学校の時に少林寺をかじった程度の
自分の力では到底敵わないだろうけど

それでも気付いたら彼女を助けようと
身体が勝手に動いていた

「おっ、お前ら…こんな若い女性を無理矢理…
どうする気だぁっ?!」

「はぁい?お前だれ〜?
まさかこの子の彼氏とか言わないよねぃ?」

「うわーその制服あの有名な金持ち進学校の
お坊ちゃんじゃーん」

案の定ハナから相手にされず馬鹿にされて
オマケに何発か顔や体を殴られた
しかし鞄から飛び出た学生証と財布に入っていた
親の名刺がこぼれ落ちてそれを見るなり
男達は逃げるように立ち去った

「…はは、なんだか分からないけどよかった
君、大丈夫?」

『大丈夫も何もアンタねぇ…
あたしの大事な客逃がしてくれて大迷惑
3万×5人で15万、あんたに請求していい?』

侑李は女性の言葉に唖然と立ち尽くしてた
すると少女は侑李の腕を組むなり
大通りへとズカズカ向かって歩いていった

『せめて寝る場所位は確保してもらわないとね
あんたん家どこ?』

「…えっ?うちに…泊まるの?」

『当たり前でしょ、あんた17歳の女の子を
野宿でもさせる気?
あーあたし早乙女いのり、よろしく』

侑李は頭が真っ白のまま、まるで
連行されているかのような面持ちで帰宅した


ー辺りは閑静な高級住宅街のその一角ー


門から玄関までの広い敷地の庭先には大きな池
開放的なベランダにはセンスのいいカフェテラス
建物はエレベーター付の三階建てに屋外プール付

正面玄関の高い天井からぶら下がるシャンデリア
惜しげもなく敷かれたいくつものペルシャ絨毯
凡人には価値の分からない絵画や骨董品の数々は

まさに別世界だった

『すご…なにこれ、あんた何者?』

2階まで突き抜ける螺旋階段を黙々と駆け上る
家政婦達は束になって口々に噂をする

「ちょっと!あの侑李様がこんな時間に
女性の来客をお連れしたんですって?!」

「相手は凄く美人だそうよ…モデル…?
お見合いの方かしら?」

「あらじゃあ静香様とのご婚約はどうなったの?」

異性間でも高校生が夜に家を行き来するのって
果たして世間一般常識ではなかったのか
それより明らかに場違いな空気が痛々しい
これなら我慢して家に帰った方が良かったかもと
いのりは少し後悔した

『…は、はやくあんたの部屋まで案内しなさいよ』

侑李は周囲を見渡し親の気配がないのを察知して
いのりを自分の部屋へと招き入れた

シンプルな内装ながらも、窓際にある
気品漂う白いグランドピアノが
非日常な世界であることを実感させる

本棚は何やら難しそうな書籍で埋め尽くされて
デスクトップPCは無駄に3台もあり
一般家庭のリビング以上の大型TVが
中央のソファ前にドーンと構えている

「メイド達には口止めしておくからくれぐれも
親にだけは、バレないように静かにしてね」

案外こんなに上手く事が運ぶもんなんだと感心した

寒い冬の長い夜
ふかふかの上質な白い羽毛に包まれ
なんだか落ち着かない

『ねぇーイイよ、あたしが床で
なんかフワフワすぎて落ち着かないし』

「いいから、黙って寝なよ」

『じゃああたしもあんたと
一緒に下で寝よっかなぁー!』

いのりは悪戯に侑李の体に飛び掛かった
いのりの柔らかな胸に圧迫されて
侑李は顔をみるみる紅潮させる
いのりは侑李の火照った身体にピタッと密着し
案外男らしい胸板に頬をくっ付けた

侑李は素早くいのりの身体を引き離すと
お姫様抱っこでベッドへと持ち上げて
ぐるぐるに布団に包んで縛った

『へぇ…小柄な割に意外と力持ちなんだね』

「そっそりゃ、君みたいな細い身体なんて
これでも一応男なんだから、余裕だよ!」

『ははーん、すぐに顔赤らめちゃって
免疫ないなあーアンタもしや可愛い顔して
女の子にモテそうだけど…まだDT?』

「…っ?!」

侑李は顔から火を吹きそうになって
ベッドの中へと顔を沈めていった
いのりは侑李が眠りについたのを確認すると
お礼の意味を込めて額にチュッと
軽くキスを落とした

翌日、目覚めるといのりの姿はなく
侑李が親に高校の入学祝いで貰った
高級ブランドの腕時計がなくなっていた

そんな侑李の頭は時計どころではなく
いのりのことでいっぱいだった
自分があの時助けに入らなければ
いのりはあの複数の男達を相手に
行為に及んでいたのだろうか

客商売ってことは援交?いやあの数相手にまさか…

男の手がいのりの衣服のボタンを千切り
ボタンが1つ2つ3つ…と床へ落ちて
白く透き通っているであろう素肌が晒される

『ひゃっあぁっ!乱暴にしないで下さい…っ!』

強引に唇を奪われ言葉を遮られ、首筋や鎖骨
胸元に男が群がりまるで蟲のように吸い付かれる
そして下半身に男達の手が伸び
やがて巨大な男根が秘穴の裂け目を割って
押し入っていく…なんて…

ダメだ想像しただけで吐きそうだ
彼女が好き好んでそんな自ら淫らな行為を
体を差し出すはずがない


自分は大物政治家である父を尊敬し
いつも親に敷かれた安全なレールの上を歩いてきた
それでも受験戦争、派閥争い、権力に媚びる大人達
それなりに上手くやってきたつもりだった

高校生活も本当はひっそりと過ごしたかった
親の名前一つで校内を歩けば、お辞儀や挨拶の嵐
まるで学園を牛耳る独裁者のような
そんな扱いに優越感など感じるわけもなく

推されるままに就いた生徒会長という
名ばかりの役職も、何かと拘束時間が長く
貴重な勉強時間が制限されて億劫だ

人生の中でも大事な高校生活
決して何時間何分だろうと
無駄に出来ないはずなのに


侑李はそれから昨日いのりと出会った同時刻
裏通りやその周辺を歩き回り
彼女の姿を自然と目で追うようになっていた



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