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- 土曜日、手帳を眺める私 1/3
「ちょっと、一言物申す」
「何よ、唐突に」
如月さんと出会った翌日、友人をあたしの部屋に呼び、開口一番こう言った。
リビングのテーブルに向かい合い、真剣な眼差しで見つめるあたしに、友人はあっけらかんとした顔であたしが出したコーヒーを飲んでいる。
いや、聞いて、あたしの必死の訴えをちゃんと聞いて。
「あれは、イケメンとは言わない」
「あれ?…あぁ、如月さんの事?違った?かなりのイケメンだと思うけど」
「そこ!!イケメンを多様しない!!」
指をさして友人に訴えると、何をそんなに怒っているのか皆目検討もつかないのか、更にきょろんとした顔であたしを眺めていた。
いや、確かにあたしの言い方が悪いかもしれない、でも言いたい、文句の一つでも言いたくて仕方ないの!!
「イケメンって、かなり幅広いよね?」
「んーそんなもん?かっこよければイケメンじゃないの?」
「ちがーう!!イケメンってイケテルメンズって事でしょ!?」
「何それー、ちょっと古臭いよ?」
楽しそうに笑う友人をよそに、更にあたしの主張は続く。
「あーいうのは、美形っていうの、イケメンとは言わない」
「美形とイケメンの違いって?」
「だから…今時の男性っていうよりは…その…整った顔というか…キレイというか…中世的というか…か、かっこいいというか…」
「何だ、かっこいいんじゃない」
「納得しない!!あたしの初めて会った衝撃を返せ!!」
「もーいいじゃん、何でそんなに怒るかなー」
そしてまったりとまたコーヒーを飲み始めた友人。
暢気だ…あたしが昨日どんな思いで如月さんと話していたかなんて知ろうともしない。
明るい性格の友人が少しうらめしいよ…
「だって、いい男でしょ?如月さん」
「う、それは…断言出来る」
「何か不都合でも?」
「ある、緊張する」
「いい男過ぎて?」
「…そう、いう事です」
だってそうでしょ?
初めて会って、これから幹事をやるっていうのに、あんなにキレイな男の人を見た事も話した事もない人間がいきなり仲良く協力して…なんてあたしにはそんな勇気ない。
だって、あたしは見た目も中身も普通だし、本来なら如月さんのようなきれいな顔立ちの人とは、友人なんて滅相もない、10年に1度お目にかかれればラッキーくらいのものだ。
それが、これから毎回連絡を取り合い、二人で友人の結婚式の二次会を計画し、やりくりするなんて…想像するだけで眩暈がする。
いや、一緒にいるだけで眩暈がするのだ。
「いいじゃん、彼だって七海の事気に入ってるんだから」
「はぁ?何でそうなるのよ」
「だって、七海の事知ってるって話、すごく笑顔で彼に言ってたみたいよ?」
「…ん?」
「笑顔の素敵な方だったね、ってさ、だから如月さんにあたし側の幹事は七海にまかせたいって話を彼に話して、如月さんに伝えたら嬉しそうだったって言ってたもん」
「いや、まさか、そんな、ありえない」
「ありえないって、何でそんな自分に自信がないかなー」
「自信なんて、如月さんの前じゃぼろぼろと零れ落ちるわ」
「いや、何もそこまで…」
あたしの発言に信じられない顔をして眺められてしまった。
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