text

  • 金曜日、こころおどる私 2/2

あたしと同じだと思った、純粋に二人の事を祝福している、共感が持てて嬉しかった。
彼となら、2次会の幹事も出来るかもしれない、そう確信した。
「私も同じ気持ちですから」そう言うと彼はとても安心した声で「よかったー」とだけ答えた。

その後は事務的な会話。
仕事の都合を聞いて、休みの日を確認して、待ち合わせの場所を決めて電話を切った。

待ち合わせ当日。
仕事が中々スムーズに進まず、予定の時間を少し押してしまった。
初日に遅刻はまずいと、駅からヒールの靴だったがダッシュして待ち合わせ場所に向かった。
着く頃には息が上がって、まともに呼吸が出来ない程だったが腕時計を確認すると約束の時間ジャストだった。「良かった…間に合った」ほっとして、息を整えながらあたりを見回す。
相手が自分の顔を知っているとはいえ、あたしは彼の事を知らない。
あの子は「イケメン」としか言ってくれなかったし、しかもイケメンって結構幅広いし曖昧じゃない?何もそんな抽象的な特徴を言わなくたって…とイライラが募っていると、10メートル程離れた場所に、長身のスーツ姿の男性があたりを見回していた。
とても整った顔立ちの人だった。周りの女性が皆振り返り、こそこそと頬を染めて話をしている。あたしもつい見とれてしまう程、正直、かっこよかった。
ふと我に返り、「ま、あの人じゃないよねー」何て考えながら走って乱れた髪の毛を整おうとした時、その彼と一瞬目が合ってしまった。
「しまった」こんなかっこいい人の視界に、髪もぼさぼさの息を切らした女の姿を入れるなんて恐れ多い、何故か後ろめたい気持ちになって、目をそらそうとした時、彼は嬉しそうな顔でこっちに近づいてきた。
え、何で?どうして?パニックになりかけた時、声をかけられた。
「如月です、こんばんは」
「…へ?」

…待ち合わせしていた彼そのものだった。
呆然としてしまう。ちょっと待って、イケメンって…確かにイケメンって言ったけど、イケてるメンズじゃないでしょ、これ。美形っていうでしょ、普通!!
とこの場にいない友人にどつきたくなった。

「ごめん、急がせちゃったかな?」
「いえ、あたしの仕事の都合ですから、全然」
「うん、でも間に合ってくれてよかった」
「え?」
「ほら、来なかったら不安になるでしょ?何か事故でもあったのかなーとか」
「あ、…そうですね」
「もちろん、相川さんはすっぽかすような人じゃないって分かってるからそういう心配はしないけどね」
「…どうして?」
「あいつが…ほら新郎、俺の同期の、太鼓判押してたよ、すごく良い子だって」
「それは…どうも」
恥ずかしくなった。何をあたしの知らない間にそんな話をしているんだ。
でも、ありがとう、感謝する。

いや、そんな美形にあったからってすぐ恋に落ちるような女じゃないですよ?
でもさ、やっぱキレイな男の人に褒めてもらえるのって、単純に嬉しいじゃない?
と心の中で自分に言い訳なんてしてみたり。

「じゃ、あそこの店で話をしようか」
「はい」
指定されたのはおしゃれな喫茶店だった。
二人並んで歩きだした時、突然呼び止められた。
「ちょっと待って」
「え?」
慌てて足を止めると、彼はあたしの前に立ちはだかり、何をするかと思えば突然頭を下げだした。

「ちゃんと挨拶してなかった、ごめん」
「はい?」
「如月仁といいます、これからよろしくお願いします」
そう言って手を差し延べてきた。
まるで…告白タイムみたいな行動に、無性に恥ずかしくなった。
街を歩く人たちが、こっちを見ながらくすくす笑っているのが見えた。
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
恐る恐る手に触れると、ばっと勢いよく頭を上げて、満面の笑みを向けた。

何て屈託の無い笑顔だろう。
同じ年なのに、失礼にも「可愛い」と思ってしまった。
そして心臓が押しつぶされてるかのように、苦しくなった。

まさか…ね。
こんな事で恋が始まるなんて都合が良すぎる。
しかもこんな美形相手に。

そう思いながら、彼との打ち合わせがあたしの平凡な日常を潤してくれるのは目に見えていた。




(どうかした?)
(いえ、何でもないです)
(…同じ年なんだから、敬語禁止ね)
(え…う、うん、分かった)



next

[*prev] [next#]

PageTop

.


.





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -