姐さんのえるちき大事件!
あの時、私はコンビニの味覚的戦略に素直にハマり、無性にフライドチキンが食べたくなっていた。
家の近くにはローソンがやたらあるせいか、頭の中は某Lが付くチキンで溢れかえる始末。
四限終了のベルが鳴り響くと同時に教室を抜け出せば、気付いた慶次が追いかけてきた。
「どこ行くんだよ孫市!」
「コンビニだ。ついて来るなウザい」
目敏い慶次に内心舌打ちしながら一瞥し、私は急ぎ足で校舎を後にした。


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ついでに昼食も買っていってしまおうと何点か持ってレジに並ぶ。
丁度昼時だからか店内は賑わっていて、ぶつかってくる人間に多少苛立ちを覚えていれば可愛らしい声で「お次にお待ちのお客様ー!」と声をかけられた。

「あとLチキひとつ」
「…はいっ!えるちきお一つですね!」
レジ担当の人懐っこい笑みに、今日は当たりだなと財布を出しながら思う。
「袋は別にしておきますか?」
「いや、一緒でいい」
「はいっ、では763円丁度頂きます!ありがとうございましたー!」

「お次の…」と、最初と同じ声を聞きながら店を出る。
気分良く買い物を終えた私は、五限目が上杉の授業の為、サボりたい衝動を抑えながら再び学校へと…いささかめんどくさい道を戻り始めた。



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「あれ、孫市がチキン食べてる」
「悪いか」
「そんな事言ってないだろ…って、ん?」
なにやらゲームしている奴らの輪には入らず、屋上のフェンスに寄りかかりながら件のチキンを食べていると、寄ってきた慶次がそれを見て首を傾げている。
「小猿の真似事をしてもやらんぞ」
「だっっ、そうゆうわけじゃねぇよ!なんか書いてあんだって!」そりゃあ、キリトリ線とか他なにかしら書いてあるだろうさ
私は相手にしない事にした。

「さ…いや、ち?ち、き…あ、あぁ、えるちき!」
判明したらしい。慶次の顔がパッと明るくなるが、次の瞬間には再び首を傾げている。

「なぁ、孫市。他にもなんか買ったの?」
「ガムとお茶」
答えたにも関わらず更に首を…今度は逆側に傾げている。


「てか、行ったのって裏門出てちょっと行ったとこのコンビニだよな?」
そろそろ苛ついてきたところで、今度は私が首を傾げた。

「回りくどいぞ…何が言いたい」
「いや、あそこファミマだったよな…?」
「…」
「あっ…ちょ!孫市?!」

――衝撃的事実だった。
呼び止める慶次の言葉など気にとめる事もなく、私は校舎を平常を装いながら駆け下りる。
足音は聞こえないので追いかけては来ていないだろう。
とりあえずは、この赤くなった顔を見られなくて済みそうだ。
二階まで降りたところで廊下に出る。
ポケットから鍵を取り出し、角を曲がった突き当たりのドアを開ければそこは非常階段。
パタン、と閉じるドアの音を聞きながら…孫市はひとりうなだれたのだった。



20111220


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