目の下の隈がとれない。全く良い子だから早く寝たというのに、寝た気がしない。
意識に直接ドッキングするような接触のせいで、夢のまどろむような感じもなし、はっきりとした記憶がある。

『安心しなさい、ヒントは意外と身近なところにあるものだ』

ヒント…ヒントねえ…
朝に起きて、風呂の鏡で背中を確認したところ、発狂した。
蛇のような真っ黒な紋様が、肌の上でうねっているのだ。いや、動いて見えたのは気のせいだと思うけれど。俺の悲鳴で駆け付けたシノも俺の背中を見てまた叫んだ。
ぎょええっていう変な声だった。朝から耳が死にそうだ。

どうしろってんだまったく…『死』を直前して(いるらしい)恐怖心が湧くとか、少しでも気持ちに変化が起こるものだと思っていた。
しかし、現実味が無さ過ぎる。焦ることもない。

とにかく眠いのだ。

「あっすみません、」
廊下をぼーっと歩いていたら誰かと肩がぶつかった。

…げ、
「…生徒会長…」
今最も会ってはいけない人間な気がする。そもそもコイツにはダガーの隊長としての顔を見られているし、今眼鏡をかけているとはいえ、バレてもおかしくない。
ましてや、コイツとは任務の時の女装姿を見られている。

「お前…」
これは、バレたか…?
「どこかで会ったことあるか…?」
コイツ、馬鹿だ。

コイツは正真正銘のアホだろ。
「新歓の時に、お見掛けしたかもしれませんね。しかし、ここは学園ですし、校舎の中ならば見たことのある顔なんてごまんといるでしょう」

そう言うと、視線を上の方にやり考える素振りを見せた。
「…」
「…それもそうだな」
コイツがアホで良かった…ここでバレたらまずい。なにより、俺の精神にもまずい。
女装していたことがバレた瞬間、俺の人権はなくなったも同然だ。

ぶつかってすみませんでした、と一礼をしてその場を去ろうとした。
「…あの…」
左腕ががっしりと掴まれて、その場を去ろうにもこの手を振りほどかなければならない。ビクともしない腕力に腹が立つ。どいつもこいつも、腕力ゴリラかよ…

「…実戦授業、俺と組め」

どいつもこいつもめんどくせえ奴しかいねえのかよ…!どんなモテ期だコンチクショー!!と、内心半泣き状態だ。
「いえ、もうペアが決まってるので…」
「誰とだ」
お前んとこの腹黒副会長(笑)だよ!!生徒会には横暴な奴しかいねえのか!

「残念、タクト。この子は俺が先に捕まえちゃった」
背後から抱き込むように腕を回され、後から聞こえてきた声にまた事がややこしくなるような人物が現れたことに、絶望する。
「どういうことだよ、エイノ」

…なんで、アンタがいるんだよ。副会長…


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