「アンタ、何様のつもり!?」
何様のつもりもございませんが…貴方の方こそ、人を呼びつけておいて何様でしょうか…
「エイノ様と付き合うなんて、おこがましいのよ!」
待て、あのクソ副会長とは付き合ってないし、そもそもなんでお前らが口だしできる問題なんだ…
「Sクラスだからって調子乗らないでよね!」
乗ってないよ…

ちょっと校舎で一人になってみたら、小柄な生徒たちに囲まれた。これが親衛隊という奴だろうか…わざわざご苦労なことで…
男のはずなのに、顔だけ見れば女にしか見えないような奴等ばっかりだ。俺とほとんど背は変わらないし、体つきも大分ひょろい。これで、本当に軍事学校の生徒なのか…?と、首をかしげてしまった。俺は人のこと言えないのだけれど。
どうやら、この学園は金持ちが集まる傾向にあるらしいので、『親の力』とかもあるのかなあ…なんて邪推してしまう。これで、この国の軍事がますます心配になってしまった。

「ちょっと!なんとか言いなさいよ!」

言い返すも何も、低レベルないじめ過ぎて言い返す気が起きない。だが、次の授業があるので、さっさとどいてほしいといのが本音…

「貴方達!何をしていんですか!」

聞いたことのある声が、鋭く飛んでくる。俺の元まで、人を掻き分けやってきたのはノアで、思わず抱き着きたくなった。なんだ天使か?コノヤロウ

「隊長…」

自身の隊長の出現に、やはり分が悪いのか悔しそうにしている連中。すげえな、ノア…。一年だというのに、この人数をまとめているのだから。

「制裁は禁止、そう決めたはずです。先輩方。」
静かな、しかしはっきりとした口調のノアに、先輩と呼ばれた親衛隊の隊員達は一瞬怯む。
「ッ…でも、エイノ様と付き合っているだなんて、許せない!」
「貴方方は勘違いなさっている。僕たち親衛隊はどうあるべきか、よく考えてください!」

王族の血が流れているからなのか、ノアの実力なのか、上に立つべき人間であろうその凛々しい姿に俺は感服した。

「…この尻軽ビッチが、偉そうに…」

その一言に、耳が立った。

「三言、言わせてもらいますがいいですか?」
今まで向いていた意識がこちらに向いた。「なによ、平凡」うるせえ平凡で悪かったな。

「まず一つ目、俺と副会長は付き合っていない」
「嘘をつかないで!」
すかさず飛んできた野次を睨みつける。すると、声がしたであろう方向から「ヒッ」という小さな悲鳴が上がった。

「二つ目、この状況を見て副会長がどう思うかとよく考えて行動した方が良い。じゃないと、これはただのいじめで、愚かしい行動だ。」

飛んでくる視線が鋭くなり、剣呑な雰囲気がさらに濃くなる。集団心理が働いて、思考停止に陥っているこの馬鹿どもの目を覚まさせるというのは難しいし、それは俺がやることではない。しかし、これで俺やノアに被害がふりかかるのは願い下げなので、腹にくすぶったいかりを壁にぶつけた。

壁にめり込んだ拳が、血に塗れ、そこから手を離すと砕けた素材がぼろぼろと落ちた。

「三つ目、この隊長さんの言う事は、よく聞くように」

わかりましたね?そう言って今回の制裁の主犯格らしき生徒を睨みつければ、皆怯えた目を隠しもせずに頷いた。はあ、怖がらせたいわけでもないし、第一俺にはそのキャラは似合わない。あの暴君をイメージしてやってみたが、効果覿面だったようだ。

「こんなところで何しているの?」

キラキラオーラが声にも掛かっているとは末恐ろしい。もはやオーラが本体なんじゃないか?声だけで、その正体をわかってしまうのが、悔しい。

「エイノ様…」
「俺の恋人になにしてるの?」
「すみません!これは…」

主犯格の生徒たちが、おろおろしながらも必死に言葉を尽くそうとしている。その姿があまりに滑稽で俺は思わず同情してしまった。

「はあ…だから親衛隊は嫌いなんだ…別に無くしたって良いんだよ?親衛隊なんて、ねえ?隊長さん?」
「先輩、隊長さんは悪くないので、隊長さんを責めるのはやめてください」
「シキ、どうしたの?コイツに脅されでもしているの?」

本当に、この男は性格が悪い。今この場でノアと俺が友人ということがバレたくないというのをよくわかっている。知られたら、「隊長は、友達だから庇っている。贔屓だ」ということになり兼ねないのだ。

「とにかく、俺はなんともないですし、隊長さんは悪くありません。そもそも、貴方の親衛隊でしょう。生徒会役員なんですから、貴方がしっかり責任を果たすべきでは?」

一瞬、その美しい顔を歪ませた副会長は、また笑顔を貼り付けて「ごめんね?シキ。さあ、行こう。授業が始まっちゃうよ」と言って俺の肩を掴み、誘導する。その掴まれた肩は痛かったが。

ちらり、と見遣ったノアの顔色は悪い。

俺は友人をどうしたら護れるのだろうか、そう思いながらもこの横で作り笑いを隠そうともしない男にどう一泡ふかせてやろうか、考えあぐねていた。


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