春浪学園とは、俺達が在籍する松ヶ丘学園と姉妹校である。どうやら、この学園の腐れ理事長の親戚が統べる学園であるらしい。あの理事長の親戚なんぞたかが知れているが、こちらは美作あたりに探りを入れさせてみるのが吉であろう。

その春浪学園の生徒会の長である、白田雷光(シロタライコウ)という男。どうやらコイツが「ヒロ」のことを探しているようだった。奴は、チームGlareの総長であり、その生徒会はほとんどがチームのメンバーであると美作は言っていた。

どうやら、俺がまだ正式にチームvillainのメンバーとして活動していた際に奴らは「ヒロ」のことを知ったらしい。確かに、「ヒロ」の名前はかなり広がっていたようだし、族をやっているアイツらが知っていてもおかしくはないのだろう。だが、なぜムタとタツミを調べてまで俺を呼び出そうとしたのか、それはまだわからないのである。

なんにせよ、奴らが「ヒロ」に対して喧嘩を売っている、という事実は変わらない。こちらとしては木端微塵どころかこの世からDNAの一片すらも抹消してやりたいのだが。

頭の中である程度の情報の整理をしていると、原先輩の様子が少しおかしい。
「原先輩…?どうかしたんですか?」
いきなり話しかけられて驚いたのか、はたまた己が話しかけられると思っていなかったのか怯えに近い反応をされて。こちらもびっくりする。
「い、や………」
そこから黙りこくってしまった先輩に俺は、やっと懐いてくれた犬が飼い主離れしてしまった気分を味わい寂しくなる。飼い主離れってなんだ、という話であるが。

その前に、ヒロとしてやることはたくさんあるけれど、今考えるべきことはほとんど決まり始めていた文化祭の予定がほとんど白紙に戻ってしまったということの方が優先だ。

「…永束、諦めるんですか?」
俺がそう、挑発するように煽ると、永束は「まさか、」と言った風に口角を上げた。
「あちらの学園より、こちらの方がはるかにレベルの高い事をしていると見せつけるいい機会だ、期間は短いがやれること以上のことをする」

永束がそう言えば、ぶーたれていた月乃と花沢も、「しょうがないなあ」なんて言いながら、各々仕事に取り掛かる。

――さて、俺もやりますか、

俺は、なにか少しばかり浮上した違和感を忘れないように、生徒会としての仕事を始める。



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