手を引かれ連れてこられたのは、ホテルと見紛うほどのマンションだった。制服の自分が浮いているような気がして恥ずかしい。
 慣れた手つきでカードキーでエントランスに入り、そのままエレベーターに乗る。二人きりの空間だというのに、不思議と気まずさはない。短いような長いようなエレベーターという密室での時間。山蛇は一言も話さず、俺の方を見ようともしない。それでも繋ぐ手だけは熱くて、そこから溶けてしまいそうだった。


 お邪魔しますも言えずに、玄関からすぐの洗面所に連れ込まれた。服を脱がされ、「先にシャワーでも浴びてて」と言われる。大人しくそれに従ってシャワーを浴びていると、山蛇が入ってきた。
 肌は白いくせに、筋肉がすごい。腹筋だけではなく、胸も足も腕もすべて無駄なく筋肉がてついていることがわかる。着痩せするタイプなのかもしれない。

 溜まりきっていない浴槽に二人で浸かる。向き合うのではなく、山蛇を背凭れにして入るような体勢だ。山蛇が俺の肩に顎を置いているから首や鎖骨に、熱い息がかかる。
「…背中」
「ん?」
「その背中の入れ墨って、なにが書いてあるんですか」
山蛇の裸を見るのは初めてだった。その背中に背負うものは、観音菩薩だった。作り物だろうが、常に笑みを浮かべている山蛇が背負うものに興味が向いたのだ。

 「これは、騎龍観音(キリュウカンノン)と言ってね…」
 山蛇はそれを「雲中の龍の上に在す観音様」だと言った。雲を呼び、雨を降らせ雷を落とすことができる龍を自在にコントロールでき、人々に慈雨を与えるのだ、と静かに語る。

 一見善人にしか見えないこの人が今までどんな悪行をしてきたのかなんて知らない。この男が一体何を思って何を背負って生きているのかも俺にはわからない。
 俺とこうして何故共に風呂に入っているのかさえも。

 それでも、この男が背負っているものがとてつも大きな荷物であるのだ、と思った。
 


「イッ…!?」
こちらが真面目なことを考えているというのに、突然ぎゅっと乳首をつままれ大きい声が出てしまう。
「ね、そろそろさ、乳首気持ち良く感じてきたでしょ」
 爪で引っ掻くように突起を弾かれ、乳輪を指の腹でなぞられる。かと思えば、親指と人差し指で思い切りつままれる。
「気持ち、ッよくな、ンか…ッ」
 じんわりと快楽の二文字が頭に浮かび、泣いてしまいそうになる。乳首で気持ち良くなるなんてまるでそんなの…
「女の子みたいだね?」
耳元でクスクスと笑われ、羞恥心が湧く。左耳に舌を入れられ、そのまま掻きまわされる。脳を直接弄られているようで、おかしくなってしまいそうだ。ぐちゃくちゅくちゃぐちゅという音が脳漿を伝って脳全体を刺激する。
 胸をサワサワと揉まれ、柔い刺激を与えられれば背中辺りが震え、乳首に強い刺激を与えられると身体の芯が強く快楽に震える。
 浴室に自分の喘ぎ声が響いているのをどこか他人事のように聞いていた。縋るものがない手は山蛇の足に必死にしがみ付いていた。
「やま、ださ…も、もイかせて…ン、ふあ…ああッ…」
「んー?乳首と耳だけじゃ、まだイけないか…」
「アッ…!ッも、イっちゃ…お湯に、いッだしちゃうぅ…ッ!」
「もうずっとイきそうだったんだね、いいよイって」
白濁がお湯に受け止められる。ぼんやりと歪む視界で自分が吐き出した精液を眺めている。自分が泣いているのか、それとも汗で頬を濡らしているのかもわからない。

 その後の記憶はほとんど無かった。


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