「…あれ、アキさん?」

前立腺を見つけ、コリコリといじっていたのだが、いつの間にか夢中になっていたようで彼から反応が一切ないことに気付いた。目隠しをそっとはずすと、彼の色気があふれる瞳は閉じられ、目元が赤く、泣き腫らしていた。
下半身からは、αのフェロモンが撒き散らされ、彼のペニスからはもったいないことに精液が溢れている。自分の後孔が疼き、どうにもままらない性交をしてしまったと多少の後悔。
このまま、彼のナカに突っ込んでも良かったのだが、どうせなら彼の口から「ほしい」と言わせたいので我慢する。睡姦してえ…次だな。

彼の腕にはめた手錠を外し、下半身を綺麗にしてやる。シーツも変えて、一通りの片付けを終えて、ぐっすりと眠る彼のすぐ横に横たわる。

普段起きているときは、不遜で俺様なアキさんだけれど、こうやって寝ているときは子供のようにかわいらしい。
こんな彼の一面を、俺だけが知っていればいい。

自分のうなじについた、噛み跡をなぞる。

俺は、そっと起き上がり、アキのうなじに噛み跡を飾った。

***

朝、少し開いたカーテンの隙間から見えるのは、しとしとと降る雫たち。

一度寝返りを打つと、いつもよりベッドが広い。毎日一緒に寝る彼がいあないからだ、と気付く。彼が寝ていたであろうところは、まだぬくもりがある。
手錠もなく、目隠しもされていない。あんなにデロデロだった下半身もさっぱりしており、彼が拭いてくれたのだとすぐにわかった。
彼は、昨日どんな顔をしていたのだろうか。尻に違和感はあるものの、腰の痛みまではないので、挿入まで至らなかったのかもしれない。途中から記憶がないけれど。

ふと、首に違和感を感じて手をそこにやると、身に覚えのない凹凸。少し痛むため、もしかして…この形と、この凹凸・・

勢いよく起き上がり、寝室から出るとキッチンに愛おしい彼の背中。

「おはよ」

サクは、いつだって寝起きが悪くて、朝飯は俺が作ることになっている。

「サク…?」
「今日はね、ちょっと俺が作ろうと思って」
「サク」
「なんだよ、俺が朝飯作るなんて変かよ」

「サク!!」

がばり、と後ろからサクに抱き着いた。俺より背の低い彼の背中は、到底Ωには思えないほどしっかりとした身体をしている。それでも、彼は俺のΩだし、彼の匂いを嗅げば欲情する。

「…な、んだよ」
「俺にはお前だけなんだ」
「…」

少し、赤みを帯びた首筋には俺が一年前に着けた番の証がくっきりとついている。これをサクは隠すことなく、大学に通っている。そんな姿を見る度、俺は嬉しかった。

「神が決めた運命なんて、どうだっていい。俺が選んだのはお前だ。…そうだろ?」

そう言うと、くるりと身体を反転させたサクがこちらを見る。その目は酷く揺れていて今にも零れだしそうだ。サクは手をのばして、俺の首筋へと指をなぞる。確認するように、昨晩ついたのだろう、証に触れ満足そうに笑った。自信家のサクには似合わない、弱弱しい笑み。

「そうだよ、アキさんが選んだのは俺。俺が選んだのも、アキさん。」

俺は、せめてこの彼の優しい心が少しでも安らぐように、力いっぱい抱きしめる。
それでも、彼の笑いながら「痛いよ」という声は、どこか頼りなさげだった。



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