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連載主とマルコとエース

2010/09/26 04:27

「むひっ」

奇声が聞こえた。
なんだ、と思って振り返るよりも早く、腰と首に強烈な一撃をくらう。
書類片手に倉庫の在庫確認をしていたおれは、あまりの勢いに負けて目の前にあった樽に頭を強打したうえに、持っていた書類を床にぶちまけた。

「あ」

「ごめん」

聞き覚えのある二つの声に、ビキリッと青筋が立つのが自分でもわかった。

「何しやがる!」

まず、顔の近くにある黒いくせ毛の頭を鷲掴む。

「エース!!」

次に、腰辺りにある黒い猫っ毛の頭を鷲掴む。

「チビ助!!」

「「ぎゃー!ごめんなさい!」」

頭を握る手に力を込めると、二人揃ってわたわたと慌てておれの手を剥がそうともがきだした。二人とも後ろにいるせいで正確な様子はわからないが、バタバタうるさい足音がするからまあ、もがいているんだろう。
おれはため息をつき、ぎゅうっと一度強く掴んでから、ぱっと手を放した。

「いてェよ、マルコ!」

「マルコひどいー!」

「それはこっちの台詞だよい!」

じんじんと痛む額を押さえながら振り返り、そして、固まった。

「なっ…」

ふわふわした、白い…うさぎ、と、同じくふわふわした、黒い…ねこ……の姿をしたチビ助とエースが、いた。
いや、いやいや、これでは語弊がある。
正しくは、うさぎの着ぐるみを着たチビ助と、ねこの着ぐるみを着たエースがいた。

って、そうじゃねえ!

「なっなんて格好してんだよい!!」

「「え?」」

キョトンとしておれを見上げる二人に、なぜかくらりとした。
なんの目眩だ。
……ああそうか、かわいいのか…って、だからそうじゃねえ!

「かわ…いや、なに変な格好して…」

「え?うさぎ、変?」

「かわいいよい」

ことり、と首を傾けたチビ助を反射的に抱きしめる。ふわっとした生地は、肌触りがとてもいい。思わずすり、とチビ助の肩らへんにほお擦りをした。

「あー!マルコ!おれはかわいくねえってか!?」

ぎゃん!と騒ぎ出したエースに目を向ける。
そういう作りなのか、すらりと長い足を持つはずのエースが今日はずいぶん短足に見える。もふもふという形容詞がぴったりと当て嵌まるかわいらしい着ぐるみに、幼さの残るそばかすの散った笑顔。
…いや、まあ、かわいいっちゃあ、かわいいか…。
だがしかし、もうすぐ二十歳をむかえようかという男に、かわいいというのもいかがなものだろう。ちらりとエースの顔を見ると、キラッキラした期待の篭った目でおれを見ている。
これは、言うしかないのか…。
おれはため息を一つついて、エースの頭に手を置いた。

「かわいいよい」

「お!かわいいか!?」

「はいはい。かわいいかわいい」

「チビ!かわいいってよ!」

「うん!エースかわいいよ!」

「チビ!」

「エース!」

わあわあぎゃあぎゃあと騒がしく二人の世界に入ってた着ぐるみ二人に、もう一つため息をつく。
改めて、二人を見てみるとやっぱりかわいいとしか思えない。我ながら、親バカ兄バカすぎるだろう。
苦笑は禁じ得ないけれど、悪くない。

ああ、悪くないな。




気分転換にバアッと勢いのまま書いたんですが…これは、ひどい…


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