Dream | ナノ

Dream

ColdStar

Usually

様々な世界から様々な経緯で集まった彼らは、自分の知らない世界の自分の知らない常識で生きている人間たちの生き様や生活に興味を抱くことも多々ある。
特に、他の時代の人間たちは知らないであろう「神機使い」の生き様に興味を抱く者もいるわけで、そんな話をソーマやアリサ、リンドウが持ちかけられることも決して少なくはなかった。
とは言え、ソーマは何を聞かれても特に興味がない風にあしらうことが多かったしリンドウはどこか飄々とかわしてしまうことばかり。
必然的に、そんな話を振ることがあるとしたらアリサが相手になることが増えていた――そして、その日も。

「その腕輪が、神機を使うのに必要ってことなのよね?」
「そうですね。腕輪からオラクル細胞……アラガミに対抗できる偏食因子を身体に取り込んで、腕輪を通じて神機と自分自身を接続するんです。腕輪の制御がなくなるとオラクル細胞が暴走して、人間ではいられなくなる――今のところ、腕輪を失って人間の姿を維持できているのはリンドウさんくらいのものですよ。リンドウさんも一度はアラガミ化してしまったんですけど、まあ色々あって助かったと言うか」

雑談のように春麗から振られた話に、アリサはにこやかな表情を浮かべて答えている。
その話を聞くともなく、戦場の様子を見ているソーマ――まだ迫る敵との距離は相当に空いているとは言え、あまりのんびりしている場合でもないだろう。
そんなソーマの考えに気付いているのかいないのか。春麗とアリサの会話はまだ続いている。

「つまり、その名残があの右腕ってことね」
「そうなりますね」
「でも、取り外せない腕輪がそんなに大きいんじゃ色々不便じゃない?着替えの時とか」

春麗の一言に、アリサは分かってくれるかとでもいいたそうに大きく頷き無意識に自分の右腕に嵌められた腕輪を指先で撫でる。それに釣られたのか、春麗の左手も彼女の両手首に嵌められた棘つきのバングルにそっと触れていた。
勿論、春麗のバングルはアリサ達の腕輪のように取り外すことができないと言うわけではないのだが、ともすれば「これが外せないとしたら」と言うようなことを考えているのかもしれない。春麗は僅かに眉根を寄せ、面倒そうねと小さく呟いていた。
ソーマの視線の先では、確かカイトやブラックローズと同じ世界から来たと言われていた化け物がトウマとシリルに襲い掛かっている。もう少し様子を見て、トウマ達の手助けをした方がいいかなんてことをぼんやりと考えていたソーマはただ無言。
そして、ソーマと同じようにそこまでは無言だったモリガンがふと何かを思いついたように声を上げた。

「ねえ、今の話聞いていて思ったことがあるんだけど……アリサ、貴女恋人はいるの?」
「……は?」

モリガンの問いかけの意味が分からなかったのか、アリサは素っ頓狂な声を上げる。この女は何を言い出すんだ、なんてことをソーマもちらりと考えはしたが別にそこに口を挟むようなことはない……だが、この調子では自分たちが動けるようになるにはまだもう暫く時間はかかるだろう、なんてことを考えてソーマは会話を続ける3人に背中を向けていた。

「いえ、その……いません、けど」
「そう……じゃあ、ソーマに聞くしかないわね」

くすくすと小さく笑い声を漏らしたモリガンが自分の名を呼んだことに気付いたのだろう、ソーマは言葉がないまま視線だけをモリガンの方に向ける。
敢えて口には出さないが、言いたいことがあるのならはっきりと言えと表情だけで訴えかけてやると、モリガンはとても楽しそうに笑みを浮かべながら言葉を繋いでいった。

「ソーマには恋人がいた筈よね?それも、貴方たちと同じ神機使いの」
「だったらどうした」
「大したことじゃないの。でも、ふたりともに外せない腕輪がついたままじゃ……愛し合うときに邪魔なんじゃないかしら、なんて思ったの」
「だからモリガン、生臭い話は止めなさいってあれほど……」

はぁ、と呆れたようにため息をついた春麗に構うことなく、モリガンは相変わらず妖艶な笑みを浮かべている。
モリガンの言葉の意味が判ったのだろう、アリサはどことなく顔を紅くして言葉を発することも出来ずにモリガンの方を見ているだけだし――アリサは、モリガンや春麗の知らない「ソーマの恋人」の顔を知っているのだからモリガンの言葉にリアルに何かを思い浮かべてしまったのかもしれないしそれを責めることもできないだろう。
だが、言われた当のソーマのほうは阿呆らしい、と短くだけ返して、ソーマは再び視線を戦場へと送った。
現れた増援により、トウマとシリルの状況は先ほど以上に危機的な様相を呈している。呑気におしゃべりをしている場合ではなさそうだ。

「そんな話してる場合じゃねえ。行くぞ、アリサ」
「え、ああ……はい」

モリガンの問いには答えを返さず、アリサだけに呼びかけて歩き出すソーマ。戦場の風に翻る濃紺色のコートに、残された2人の視線が向けられていることなど全く気にもしていないように足を進める。
 ――邪魔も何も、腕輪のない女抱いたことねえしそもそも藍音以外知らねえのにそこまで考えたことがあるわけねえだろうが。
口にしたら何を言われるか分かったものではない返事は、ソーマの胸の中にだけとどめておいたままで。


「ねえ、春麗」
「何なのよ。私たちもトウマ達の手助けをしに行かなきゃいけないでしょ」
「……アリサや、私たちの知らない『ソーマの恋人』、それに『リンドウの奥さん』……そんな人たちに比べたら、貴女十分普通の女の子だと思うわよ」

モリガンが告げたその言葉に、春麗は僅かに表情を曇らせながらも黙って歩いていく2人の背中を見つめているだけだった。

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