頂き物 | ナノ

日常的な非日常




「はいグリーン、あーん。」

「…………。」

「食べないの?あーんしてくれないとあたしの手作りケーキ食べられないわよ?」

「………………。」

「口開けるだけじゃだめー。」

「……言わせたいだけだろ…。」



あのさ、最近漸く結ばれた2人なんだから、いちゃつきたいのはよく解るよ。
うん、解るぜ。俺だってブルーに片思いしてた訳だから正直辛いけど、まぁ理解してやろう。

だけどな、お前らいい加減にしろよ?


──俺を挟んでそのやり取りをするな!!!



「…あのさ、グリーン、ブルー?」

「あ、レッドも食べたい?」

「うん、食べたいけどちょっと待て。何で俺を間に置いてんの。」

「特に意味はないだろ。」



ああそう、意味は無いんですかそうですか。
なら尚更質悪りーよ、なにこれ嫌がらせ?



「じゃあ、はいレッド!」

「え?」

「グリーンが食べてくれないから、レッドにあげる。はいっ、あーん。」

「え、いや、あーんて、」



すいませんブルーさん、貴女の恋人、つまり俺の親友からの視線が刺さるようでものすごく痛いです。



「…いらないの…?」

「うぐっ…!!!」



なにこれ、デジャヴ?
絶対断れないパターンだよな、これって。
いやでも、グリーンは人を殺せるような目で俺を睨んでくるし。

どうしよう、どうするべきだ俺。



「…あたし、頑張って作ったのにな…。」

「頂きます!」



あ゙あ゙ああ、俺の馬鹿野郎おおぉぉお!!!!
何無意識に反応してんの、いい加減懲りろよあの涙は作り物だっての!!

そうだよ、ブルーは冗談でしか言ってないけどグリーンは本気なんだ!

何だこれ、完璧な死亡フラグじゃねーか!!
ちょっとくらいの死亡フラグ(「必ず戻るから待っててくれ!」くらいのもの)ならクラッシュ出来る自信あるけど、ここまで酷いとさすがに無理だ!!



「レッドならそう言ってくれると思った!はい、あーんして!」

「あ、あはは…い、頂きます。じゃあ、あーん…」



グリーンの視線にひやひやしながら、俺はブルーの差し出したフォークに乗っているケーキを食べようとした。


──けど、俺の口に入る前にケーキはグリーン口に入った。
グリーンはブルーの手を掴んで、自分の方に向けている。
顔が良い奴って、何しても様になるから嫌だ。
だって今俺からケーキ横取りしただけじゃん。



「…甘い。」

「…な、何よっ、いきなり!?」

「別に。食いたかったから食っただけだ。」



ぺろ、と唇についたクリームを舐める姿まで何か特別に見える。
ブルーもブルーで、グリーンの行動と仕草に真っ赤になっていた。

俺、泣いていいですか。



「…食べたいなら、最初からそう言いなさいよ。」

「言っていた。お前が聞かなかっただけだろ。」

「そうじゃなくて、……もー、変なとこで子供みたいなんだから。」

「誰のせいだ。」



おい待て、何だこの空気。
俺完璧に邪魔者じゃん、ってかもうお互いしか見えてないよな。



「…お前ら、なぁ…。」

「?どうしたの、レッド。」

「人の前でいちゃつくなぁあぁぁああああ!!!俺の居場所無いだろうがぁあああ!!!」



がたんっ、と立ち上がり外に飛び出す。
グリーンは呆れた表情で、ブルーはきょとんとしてた。

勢いで出てきちまったけど、これからどうしよう。

そう考える俺の頭に、同じくバカップルに悩まされるゴー曰くクロワッサンヘアーな後輩の姿が浮かんだ。
そうだホウエンに行こう、そうしよう。

プテに乗り、俺はため息をついた。
これが日常的になりつつある今、俺は一生振り回されるんじゃないか。

憂鬱だ、と思うと同時にそれも良いかも、と思う自分がいた気がするが、空に上がり冷たい風に当たることで考えを改めた。

そんなの、絶対ごめんだ!




そんならの非日常




結局俺の居場所はグリーンとブルーのところしかない、なんてあの2人が話していることを、俺はまだ知らない。



白石由様から頂きました!
緑青が一番なのは変えられないけど真白三人組も大好きである。
一人でも欠けたら駄目なんだろうなぁ。






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