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「あっ…っ…」
「……父さん、もうちょい腰上げて」
「もっ…あっ……んっ」
うっすらと街頭の光だけが部屋を照らしている。
汗と白濁の液にまみれた二人はただ本能のまま重なり合っていた。
どのぐらい繋がっているだろうか。
有志が仕事から帰ってきたのが夜8時で、それからご飯も食べず智希の部屋へ直行し息をつく間もなく始まったから、4時間程か。
有志は気絶しそうになっていた。
実際動いているのは智希なのだが、力の有り余っている高校生に30を過ぎた男が勝てる訳がない。
空腹と何度訪れたかわからない絶頂感に目眩が。
しかしすぐ、簡単に、呼び戻される。
「父さん…好き」
「あっ…智……」
全て計算ではないだろうか。
意識が飛ぶ寸前で智希は有志をきつく抱きしめ耳元で甘く囁く。
愛おしい。
離れたくない。
でも流石にもう…。
「んっんっ…智っ…智…ほんとに…明日立てなくなるからっ」
「…いいよ。明日休みじゃん。ずっとベッドの中いよう」
「だっ…ダメっ…だっ…買い物っ洗濯っ…掃…除!」
後ろから腰を掴まれ深く奥まで息子のソレが挿っている。
もう有志の中は智希の形を覚え、イイ所に当たると嬉しく踊るようにうねり跳びはねた。
自分のより大きく育ったソレを中におさめながら息をのむ。
気持ちいい。
あぁ、最低な父親。
でも今は世間体よりも、妻の影よりも大事なものがある。
「……智希…」
「…なに?」
「…この体制……お前に抱き着けっ…ない」
「っ……父さん…それ、反則」
智希のソレが中で大きくなった。
ベッドに肘をついて髪を乱し、尻を突き出して汗と涙で濡れた顔で振り返ると有志はキスをねだった。
当たり前のようにそれに答え、腰の動きを止め智希は口を突き出す。
「はっ…んっんんっ」
求めてくれる。
父さんが、俺を。
智希は有志の両足の付け根を掴み、繋がったままグルリと回転させた。
「ああっ!」
その刺激に耐えれず、有志は体を震わせ達してしまった。
もう出す液がないのだろうか、液は薄く勢いがない。
チョロチョロと先端から溢れ、時々勢い良く出る程度。
しかし快感は衰えず有志の体を巡っていく。
だらし無く開いた口と、羞恥などとっくに越えた下半身。
真っ赤な顔は生理的な涙を零し荒く息を整えている。
誰が見ても卑下したくなるような恰好だというのに、智希には最高の興奮剤なわけで。
「……父さん……綺麗…可愛い」
「っ…っ…はぁ…あっ…みっ見るなっ」
両腕で顔を隠そうとしたら簡単に手首を掴まれ振りほどかれた。
息子に片手で拘束され頭の上で押し付けられる。
あぁ、情けない。
「……イっちゃったんだ」
「もっ…もう出ない…からっ」
「中で回転させた時、イイ所に当たっちゃった?」
「とっ智希っ……!」
つつっと、自分の液で汚れた有志の腹を指で撫でる。
イった直後でさらに敏感になっている有志にとって、今触られる感触はまるで剣山に触れているよう。
ピクリ、ピクリと体が揺れる。
「父さんの好きな所は……ココ、だよな」
「ああっ!」
有志のへそ下に中指を押し付けると同時に、ぐっと腰に力を入れソノ部分を刺激する。
「はぁあぁっ!」
「ね、ココ?」
「あっあっあっ」
「ココ、だろ?」
「あっあっ…やっ…っソコ!」
イヤイヤと首を振りながら、有志は力を振り絞り智希に抱き着いた。
その振動でさらに奥深くにはまりまた声を高くする。
「あーっあっあっ…智っ智っ」
「んっ……もう…やばい…」
抱き着かれバランスを崩したが、智希は有志の首に手を回し甘いキスを落とす。
何度も舌を絡ませながら有志の頭を撫でると、深く息を吸いながら腰を動かし始めた。
卑猥な音がさらに大きくなる。
「あっあっ…くっ…智っ…あっ」
「っ…父さん……気持ちイ?」
「イ…イ……気持ちイっ」
答えるように中を締め付ける。
本人は無意識のようだが、智希にはまるで拷問のようで。
そんな顔して気持ちいいって言って中締め付けられたら……。
「あっ」
「っ…たまんねぇっての」
「あっあっ激しっ…あっあーっ!」
「っ……っ」
一段と早くなった動きに有志はついていけず、口を大きく開き痙攣しながらまた、絶頂を迎えた。
その光景をばっちり目に焼き付けながら智希も有志の中に放出した。
「……腹減った」
「ん、ちゃんと作ってるよ」
「……ってか動けない」
「……オッケ、持ってくるよ」
ベッドに寝転びずっと有志の頭を撫でていた智希は、枕に顔を埋める有志のこめかみにキスを落とし部屋を出て行った。
バタンとドアが閉まる音が聞こえると、もそりと顔を上げ上体を起こす。
「つっー……ててっ…」
腰を押さえ顔を歪める。
慣れてしまったせいか、痛みは全くない。
フルマラソンをしたような疲労感と、ツったような感覚の腰。
そりゃ何時間もあんな体制してたらな…。
はぁ、と大きくため息をつきベッドについた肘に力を込めて起き上がる。
ベッドの端に座り体にまとわりついたたくさんの液を見てまた、ため息が出る。
「こんな……性欲強い方じゃなかったんだけどな…」
ポソリと呟くと階段を上がる音が聞こえた。
智希だ。
ガチャっと扉を開け、良い匂いと共に部屋の電気に明かりが点った。
「あ、起きてて大丈夫なの?」
「辛いよ」
「……ごめん。はい、ご飯」
「……ん」
やりすぎてごめん、か…。
トレーごと渡し有志のすぐ隣に座る。
有志は温かい湯気の匂いに腹をグゥと響かせ箸をとった。
今日はおでんだ。
「最近寒くなったよなー。暖かいもの食べて体冷やさないようにな」
「……ん」
相変わらずどっちが父親なんだか。
ちょっと、凹む。
10月も過ぎれば本当に肌寒くて、今週末は更衣をしようと思っていたのに。
こんな腰じゃろくに動けないだろうなぁ…。
よく煮込まれた大根をホクホクしながら頬張り、ぼんやり視線を泳がせていた。
だがしかし、週末の『コレ』は有志が勝ち取った智希最大の譲歩なのだ。
週5。
30過ぎの大人と、やりたい盛りの17歳が夜の生活でお互い満足いくわけがない。
有志には仕事がある。
朝の9時から遅い時は夜10時頃まで。
いつも通りに仕事が終われば夜7時過ぎには帰れるのだが、有り余っている高校生の性欲に対応できるわけがない。
しかも男同士だ。
負担は大きい。
そこで有志が出した提案は土曜日の夜、のみ。
もちろん、智希が納得するわけがない。
何時間も話し合い、出た答えが…。
「土曜日は何度でも、何時間でもシていいから、平日は挿入なし……か」
「っ……なななんだ、急に」
卵が喉に詰まりそうになった。
有志もその事を考えていた為焦りどもってしまう。
箸を置いてお茶の入ったマグカップに手を伸ばす。
ゴクゴクと喉を鳴らす光景を智希はじっと見ていた。
「……土曜日だけとか、やっぱ拷問なんですけど」
「し、仕方ないだろ。俺だって仕事あるんだから」
「………」
ムスっと口を尖らせ片膝を立てて頬を乗せる。
こういう所はちゃんと子供だ。
「………それに毎日やったって飽きるだろ」
「飽きないよ」
「っ……」
今度はお茶を吹き出しそうになった。
背筋を伸ばし真剣に有志を見つめ即答する。
「ずっと父さんと一緒にいたいし、ずっと繋がってたい」
「………」
たまに、眩しすぎて目眩がする。
こんなに強く、熱く愛されたのは生まれて初めてだ。
高校まで地味で目立たず全くモテなかった。
イジメられていた…暗い過去もある。
でも沙希と、智希の母親と出会い、生まれて初めて恋をして、初めて家庭を持って、初めて最愛の人を失った。
そして沙希を越える最愛の人物に気付く。
沙希が死んで、失う怖さを知って。
智希が生まれて、強い独占欲に気付いて。
誰かに認めてもらおうと思ってるわけじゃないし、これが正しいとは思っていない。
俺は死んだら…地獄に行くんだろうな。
でも智希だけは…智希だけは…。
「……父さん?」
「…ん?」
「大丈夫?一瞬飛んでたけど…気分悪い?」
「ううん、大丈夫……ご飯、おいしいよ」
「………」
精一杯の笑顔で答えたけれど、もちろん智希には引っ掛かっていて。
「……父さん」
「ん?」
智希が用意した食事を全て食べ終えると、口を拭いながらトレーをテーブルに置いた。
まだ体はベタベタしていて、正直早く風呂に入りたかったが智希が真剣な顔をしていた為思わず再び腰をベッドに降ろす。
下着もつけず一枚だけシャツを羽織り、なんてだらし無い大人だと思ったが最近の夜の生活のせいか、ま、いいかとも思ってしまう。
慣れとは怖い。
「どした?」
「………バイトしていい?」
「ダメ」
「えぇー」
最近智希はよくこの話をするようになった。
有志も、なんとなくこの話になるだろうなと思っていたため大きなため息をつく。
「…もう何回も言ってるけど、お前の本業は学業だろ、それに部活もあるしバイトなんかやってる場合じゃない」
「でもっ」
「…お金が足りないならお小遣増やしてやるから」
「っ……!そんなんじゃないんだってば!」
「っ……」
驚いた。
智希が怒鳴った。
子供扱いされたくない。
それが智希の本音。
でもそれを言ったら子供みたいだから、絶対言わない。
怒鳴ってしまい一瞬ハっと我にかえった智希だが、しかしまだ諦めない。食いつく。
「絶対部活休まないし、勉強も成績落とさないよう努力するから」
「……ダメだ」
「…父さん!」
低く唸ると、有志はシャツ一枚のまま立ち上がり歩き始めた。
有志の腕を掴み損ねた智希はタイミングを失い右手が宙を舞う。
「…なんでそんなにバイトしたいんだ」
「っ…もう17だし、バイトの経験ぐらいしとかないと…」
「………」
有志は立ち止まり振り向くと、ベッドに座ったままの智希を見下ろした。
嘘をついている。
父親だ、もちろんわかる。
「……大学卒業すれば嫌でも働かないといけなくなるんだ。今はたくさん学生生活を満喫しなさい」
「とっ……」
低く、小さくそう言うと音をたてて扉を閉め出ていった。
「っ………くそっ…なんでこんなに…」
有志も嘘をついていた。
バイトしたいと智希が言うのなら、社会勉強のためだと簡単に許していただろう。
こんな関係になるまでは。
しかし、今は。
失いたくない今は。
「…やっぱバイトには女の子いるよな…接客ならさらに女の子と…話すよな…」
トボトボと階段を降りながら思いを吐き出す。
最低な父親だな、と自虐な笑みを浮かべながら。
もちろん、それだけではない。
特待で学校に入ったというのに最悪怪我や何かトラブルに合ってしまうと、退学または普通科に強制変更させられてしまう可能性もある。
智希の今までの苦労が泡となる。
実際、学校側もバイト禁止とまではいっていないが、特待生は普通科に比べ申請を出したり規制もされている。
それと。
「なんで…バイトする理由…嘘つくんだよ」
何故嘘をついているのかわからない。
しかし絶対に何かを隠しているということが有志の気持ちをへこませる。
全て話してほしいのに。
お金が必要なら、なぜ必要なのかはっきり言ってほしいのに。
「……相手にこんな求めるのって…重いのかな…」
わからない。
有志は生まれてこれまでこんな想いをしたことがないから。
「はぁ…風呂入ろ」
今ではすっかり着替えを取りに行くだけになった自分の部屋に入り、ブツブツ呟きながら何度もため息をついた。
思いは、口に出さないと伝わらないもので。
「あーやっぱダメかー」
有志が去ったあと、智希は体を大の字に広げながらベッドに倒れ込んだ。
カチカチと動く時計をぼんやりしながら見つめ、ここでも大きなため息が一つ。
「理由…言えるかよ」
ボソボソ呟くのは、独り言なのか有志がドアの外で聞いていると思ってなのか。
「……クリスマスにプレゼント渡したいなんか…」
視線を天井に変え、拗ねたように口を尖らせる。
「好きな人にプレゼント渡したいのに、好きな人からもらってる小遣い使えるかよ」
呟き、今度は目を閉じた。
暗いけれど、昔の闇に比べれば全く怖くなんかない。
「……でもごめん父さん…もうバイトする場所…決定し…た」
急な眠気に襲われ目を閉じた瞬間魔法にかけられた様に眠りについた。
これから起こる出来事なんか知るよしもなく、今はただ有志が喜ぶ姿を夢見ていた。
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