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お互い肩で大きく息をしながら床に倒れ込む。
しかし若い智希はすぐ起き上がると、乱れたズボンを直し洗面台に向かった。

「また風呂、入らなきゃね」

自分の腹についた有志の精液を指ですくい何故か嬉しそうにそう話す。
まだ起き上がることのできない有志は仰向けになって目を閉じると、喉を通り胃に溜まる自分の息子の精液を深く感じていた。

どんどん変態じみていく

性に関して疎い有志だが、自分の思想があまりにも世間とかけ離れているのではないかと最近思うようになった。
親子でセックスをしている時点ですでに世間の常識は越えているのだが、自分がまるで人間じゃないような、ただの性欲の塊のように思える。

「どうしたの?まだ起き上がれない?」

コップに水を入れた智希が戻ってきた。
だらしなく足をあずけ達したままでまだ下着も直していない有志。
胸を上下し呼吸する体からは熱が籠もっていて、うっすらと汗をかいていた。
智希はまた下からこみ上げてきそうになり、コップを持った手にぐっと力が入る。

コップをテーブルの上に置いて有志の隣に座ると、一緒に持ってきたタオルで首元の汗を拭いてあげた。
その瞬間ビクリと体を震わせ目を開けると、すぐそこに智希がいることに安堵したのか嬉しそうに目を細めた。

「父さん…先お風呂入る?」

智希もつられて笑顔になったが、このまま見つめ合っていたらまた盛り上がってしまいそうだ。
必死に話題を変えようと 目を反らしたというのに、汗で湿った有志の手が伸びて智希の腕を掴んだ。

今度は智希がその瞬間、ビクリと体を震わせる。

「智…これからも俺は何度も悩んで、この出した答えに疑問を持つと思う。すぐヘコんで、智希の為とか言い訳して自分が傷つかない道に進もうとすると思う。だけど、その時は、そうなった時は、お願い、その時は」

どんどん溢れ出てくる。
両親のこと、妻のこと、智希の将来のこと、10年後の自分たち、20年後の自分たち、50年後の自分たち。
考えただけで震えが止まらず嘔吐しそうになる。
でもただ、この手を掴んでいるだけでそんな悩みは一瞬にして吹き飛び何もいらないと思えてしまう。

この手さえあれば。


「その時は、抱きしめて」


「っ……」

弱々しい言葉は智希の胸に突き刺さり、溢れ出る涙をお互い拭わずきつく抱き合った。
首筋に顔を潜り込ませて声無く号泣する。

不安が消えたわけではないし、最良の選択をしたとも思わない。
だけどただ、こうして抱きしめあっているだけで幸せになれる。

まだ肌寒いリビングの上で、二人は何時間も抱き合い温もりを確かめ合った。









「東條さんにお礼言わないとな。今度うち、呼ぼうか」

「えー」

翌日にはいつも通りに戻っていて、朝の食卓が明るく賑わう。

有志の提案に全身を使って拒否をすると、こら、と小さく怒られ身を固くする。

「なんでそんな東條さんの事意識するんだ。いい人だろ」

「いい人だけどさーいい大人過ぎるんだもんー」

今のところ東條に勝っているのは若さだけだ。
他は全部劣っているように思う。

「そうだな、俺より大人だもんな」

有志はコーヒーを飲みながら眉を下げ苦笑すると、時計を見て慌てて食器を流しへうつす。

「智、もう行かないと。朝練遅れるぞ」

「えー」

折角昨日いい雰囲気になれたのにさ、今日ぐらいずっと一緒にイチャイチャしてたいのに。

大人になると誓った智希だが、早速そんな子供じみた事を思い頬を膨らませる。
でもそれを言ってしまうとまた有志を困らせてしまうから、ぐっと堪え我慢することを覚えた。


「…そうだな、今日ぐらいはずっと一緒にいたいけど、な」


「えっ」

「ほら、キャプテンが しっかりしないと下が育たないぞ」

甘えたような表情で呟いた有志は一瞬で、すぐ父親の顔になり智希をリビングから追い出す。

俺も、俺もずっと一緒にいたい!

と言いたいのだが、どうやらタイミングを逃してしまいパクパクと口が動く。


「…あのさ、父さん」

「ん?」

靴紐を結ぶ智希の後頭部を見つめると、少し考えているのか次の言葉がでてこない。
気にせず腰に手を置いて待っていると、立ち上がりスポーツバックを肩にかけ段差のおかげで目線が同じぐらいになる有志に笑いかけた。

「父親だから、とか、年上だから、とか、考えないでね。いっぱい俺に甘えてね。わがまま言ってね。その方が何倍も嬉しいから」

その顔があまりにも穏やかで澄んでいたから、有志は思わず涙が溢れそうになった。

「うん」


ダメだなぁ。年を取るとほんと涙腺がおかしくなる。


有志が頷くと、満足したのか智希は鼻をすすり照れたようにはにかんだ。

「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」


いつもの、触れるだけのキスをして、今日も一日が始まる。



END

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