パンはパンでも
たべられないパン
なーんだ

「むぎちゃんさあ、一人暮らしの男の部屋に上がって何の感想もなし?」
「マカロンと一緒に暮らしてるってゆった」
「残念ながら同居人として扱うほどの量はありません。二箱しかないのに勘違いさせたね」
「むぎは量より質の女
「その割りにジャンクフード食べてるとこしか見たことないけど……はい、どうぞ」
「いただきます
「ほんと、美味しそうな顔で食べるねえ」
「だって美味しいもん これは今期マカロンチャートNo.4
「そこそこのやつだ」
「ささ、ホークスさんもお食べなさいな」
「ん〜そういうのは好きじゃないんだよ。だからむぎちゃんにあげようと思ったんだし」
「名探偵むぎちゃんとマカロンの謎」
「余計な知恵を働かせなくてよろしい」
「お菓子が好きでないホークスさんの下に大量のマカロン……! 味がそこそこのやつ……!」
「名探偵のくせに全然知恵が働いてない」
「こないだホークスさんがここで押し倒してた女の人からのプレゼントとみた」
「急に話を詰めてくるのやめよ?」
「うぬぬ? 女の人とエチエチをした上にお菓子をせしめ……?」
せしめてません。あれはただ昔の学友が保険営業に来ただけで、そこで俺があまりの疲れからたまたま滑って転んでそうなってしまった最悪のタイミングでむぎちゃんが来ただけ」
「せしめてない」
「せしめてません」
「そしたらホークスさんは女の人とエチエチした上にお菓子をせしめたハッピーヒューマンではなく、ただむぎにマカロンを取られた世にも可哀想なひとになってしまいまんム」
「むぎちゃん、ない頭を捻る暇があるならマカロンをお食べ」
「んん……おいしい
「良かった良かった」
「とってもおいしいからホークスさんもお食べ」
「言うて今期四番目なんでしょ」
「本当においしいマカロンを食べたとき、そなたは食べず嫌いでしたと悔いるであろう」
「謎に食い下がるねえ」
「だって……だってなんだか、なんとなくホイホイ来てしまったけど、誰かがホークスさんにあげたわけで、それをむぎが『そこそこ』とか言いながら食べるのは良くない気がするのだもん」
「そうだね、他人にご馳走してもらっといて『そこそこ』はあんまり良くなかったね」
「お顔が可愛いばかりか舌も肥えていてごめんなさい……!」
「そういう問題じゃないけど、本当に誰の気持ちも入ってない──強いて言うなら『むぎちゃんに食べて貰おう』って俺の気持ちしか入ってないから、何も気にしないでいいよ」
「ホークスさんがやさしい」
「……前から俺は、むぎちゃんにはかなり優しくしてるよ?」
「うれしい お礼にあ〜んしてあげるう
「むぎちゃん、そこまでして俺にマカロンを食べさせたいの……? 何か仕込んだ?」
「一人で食べてるのつまんない
「じゃ、むぎちゃんの指ごと食べていい?」
「ゆび」
「下手な店のマカロンよりそっちのが美味しそう。ま?ダメなら良いよ、むぎちゃんがお食べ」
「……噛まない?」
「むぎちゃん、結構変な交換条件出されてるって自覚ある?」
「むぎもむぎの指が美味しいか気になるしい……?」
「わートカゲの自切だ」
「少なくともこのマカロンよりは美味しいはず」
「斜め上のプライド」
「んとんと、むぎねえ、チョコといちごの好きだから、だから抹茶のあげるね」
「そこそことか言っといて選り好みしてる」
「優しいホークスさんには通好みの抹茶をあげましょうね あ〜ん
「じゃ、毒味と味見を兼ねてお相伴に預かります」
「ん」

「んん」

「……噛みましたねっ」
「ごめんね」
「信じて味見をさせてあげたのに」
「なんていうか、抹茶が強くて美味しいんだかなんだかよく分からなかった」
「まっ! なんてこと……むぎちゃんの指をペロペロしておきながら美味しいの一言もなく!」
「むぎちゃん、むぎちゃんは一応人類であって食べ物じゃないからね」
「はーあ、むぎちゃんの白魚のような人差し指が粉々に折れちゃったナ」
「……ごめんて。お詫びにマカロン食べさせてあげるから、ほら」
「ふむ」
「まだ沢山あるから一口で食べてい、」

 かぷ

「そう……そうくる……?」
「信じていた相手に指を噛まれたむぎの心痛、お分かり頂けたでしょうか!」
「ああ、うん」
「あんまり美味しくはなかったのね」
「22歳成人男子の指だからね」
「でも何となく咥えて吸ってると安心する
「むぎちゃん、今家族でも親戚でもない……強いて言うなら単なる友だちの22歳成人男子の家にあがりこんでその指を舐めたり吸ったりしてるんだけど、そこについて何か思うところは?」
「イテテ……! ああ……むぎの可憐な人差し指さんが跡形もなく消し飛んで……!」
「それはごめん」
「しかも一緒に美味しいものを食べよって言ったのに食べなかったしい」
「本当にごめんなさい」
「も〜お顔を背けるう……! むぎの目を見て謝って!!」
「むぎちゃん、もしかしてお酒か何か飲んだ?」
「ん……? そいや喫茶店でホークスさん待ってる時に、知らないおじさんがサバランくれたあ」
「むぎちゃんは何でもお口に入れちゃうねえ……?」
「指はホークスさんのしか食べないもん! あっ逃げるつもりなのねえ」
「仕事柄、未成年飲酒には深く関わりたくないんでね。とりあえず今回だけは見逃してあげるけど、酔いが覚めるまで一人で良い子にしといで。この部屋のものは好きに使って良いから」
「むぎちゃんはいつも良い子ですのに!」
「じゃ、一人で良い子にしてるのなんて朝飯前だね。俺は暫く寝室でメール返信とかするから」
「むぎも行く! むぎ、ベッドじゃないと眠れないし、あと毛布と抱き枕と子守歌とお」
「はい、おやすみ〜」

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