パンはパンでも
たべられないパン
なーんだ

(原作二年前ぐらい)
「炎司さん。うしろねぇ、多分週プロ記者さんだよう」
 声を潜めて囁くと、エンデヴァーこと轟炎司は深々としたため息を漏らした。
「そのぐらい分かる。餌を与える気か?」
「じゃ、おばさんの病院嗅ぎつけられてるのは?」

「先週、駐車場に週プロの車留まってるの見ちゃった。誰が目的か分からないからほっといたけど、この道で鉢合わせるってことはやっぱりおばさんの療養先だって知ってるんだと思う」
「……家から付けて来たんじゃないのか?」
「そっちは週プロじゃないよ? 丁度入れ替わりになったみたいだねえ。週プロ編集は年功序列が特徴的で、足使う取材は若手しかやらないもん。おじさんストーカーのほうは事務所行くルートから外れたあたりで離脱したから、多分真っ当なメディアの記者か何かじゃないかな?」

「炎司さん、どうするぅ?」
「どうもこうも、メディアがプロヒーローの私生活を暴くのは深刻なマナー違反だ。そろそろ誰かが真っ当な抗議活動を起こすべきであろうな……馬鹿と話すは不快だが、直接注意する他あるまい」
「そしたら炎司さんには謝って、今日は帰るだろうね」

「でも多分人の好いおばさんに凸るんじゃないかなぁ。このところ調子が良いからよく談話スペースいるし、部外者が捕まえるのは簡単だと思うよ? むぎが編集さんなら、そうする。炎司さんに叱られた腹いせにもなるでしょう」

「……むぎねぇ、マスコミさんたちはそろそろ分を弁えるべきだと思うの」
「超人社会、プロヒーローというお仕事が社会に定着して万人に受け入れられたのは確かにマスコミの協力なくしてありえないし、だからずっとプロヒーロー側は何をされても“神対応”でなあなあにしてきたけど、もういい加減マスコミは痛い目を見るべきだって、むぎは思うのね」

「ね、炎司さん むぎのことぎゅーってして?」

「……大っきい餌ぶら下げて、あのゴシップ誌潰そうよう」

「それに、このままマスコミほっとけば何れしょうちゃんたちに火の粉飛ぶんじゃないかな? しょうちゃんは凄く目立つし、相変わらずオールマイトはプライベート流出厳禁の立派なヒーローだし、炎司さんを扱う記事や取材陣……ちょっとずつ調子づいてるよね?」
「オールマイトにゴシップ誌の処理なぞ出来まい。あれは痛々しいほど真っ直ぐな男だからな──わざわざ阿呆の玩具にするわけにはいかない」
「じゃ、炎司さんなら良いのう?」

「エンデヴァーはそういうキャラだから良い、その癖“プロだから大人の対応で流してくれる”って馬鹿みたいな甘え。大衆の代表者ヅラで特権だけ振りかざす幼稚な人間に、これ以上炎司さんを玩具にさせるのは反吐が出そう」
「それも一応は仕事のうちだ。気乗りしないのは確かだがな」
「炎司さんが気乗りしないのはいつものくせに。もう、病院に着いちゃう」

「……勝手にしろ」
「炎司さんも肩抱いてよう!」
「嫌だ」
「あれはイヤだこれはイヤだって、赤ちゃんかな?」
「お前の提案には乗ってやる。だが自分の意思で、冷以外の女を侍らす気はない」
「……良いもん! むぎ、一人でイチャイチャムード出しちゃうから!!」

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