「なんぞ、まーたわざわざ家まできおって……ワシはお見合い写真の選別に忙しいんじゃ」
「そんな無駄な作業に勤しむ暇があるならマダラを殺して来たらどうだ」
「そうやって、自分に出来ないからってワシにやらすのはやめんか」
出来ないわけではない!!!!!
「あーうるさいうるさい。鼓膜が破れるであろうが……出来ると言うなら、とっとと実行に移すが良い。大体貴様らが五月蠅いから、『敗者は勝者の命令に従う』という条件つきで、しかも貴様一人でマダラを相手取るは荷が重かろうと二対二で戦う機会を与えたはずぞ。ジジイと言えど、もう忘れたのか。それで負けたのだから、いい加減大人しくマダラと共存の道を探るがよかろう」
「トバリがあやつの味方をしなければ勝っておったわ! あのクズ、仮にも恋人を肉盾として使うなど、如何いう神経をしてるんだ。それに従うトバリもトバリ、洗脳されているとしか思えん」
「共闘相手にヒルゼンを選んだのも悪かったのう。貴様からすれば気心知れて組みやすい相手なのじゃろうが、トバリにとっても手の内が知れた人間。まあ、端からオッズは低かったぞな」
「やはりナルトに協力を仰ぐべきであったか」
「ああ〜そうじゃな、それが一番確実じゃったろうなあ。実際にナルトが協力してくれたかどうかはさておき、少なくともトバリより若い忍と組むべきだったのう。何故そうせなんだ」
「未来ある若者に、いい年したおっさんが孫娘の交友関係に首を突っ込む様を見せるのはな……」
「貴様は昔から、そうやって謎の見栄を張るから負ける」
「いつ、誰が、どこで見栄を張った?」
「年下の前だといっつも見栄を張るじゃろ。そういうとこはトバリも同じだの〜! 貴様も、ナルトでなくとも、サクラかシカマルあたりに頼めば良かったんだとは分かっておろう」
「それは……ナルトたちは若く、体力・時間共に余裕があって今最も多忙な世代であるし、」
「はいはい。要するにナルトたちに良いカッコしたかったんぞ? ナルトの前で『トバリ? は〜(クソデカため息)ま、気が合わなくはないですけど?』みたいな態度しとるから『トバリと結婚するのはワシだからマダラと破局させるためにマダラを殺すのを手伝って欲しい(迫真)』とか言えなかったんじゃろ。ナルトたちであれば、トバリも色々と躊躇し、隙が出来たであろうに」
「トバリのほうこそナルトたちの前では『二代目さま? は〜(思わせぶりなため息)ま、幼い頃からずっと尊敬してきた方と暮らすのは色々と学ぶところが多くて、充実してるっちゃあしてる……のかな?(後頭部で両手を組み、頬の裏側を舌で押す)』って態度ではないか。ワシが何か注意するとすぐ『おじいさまは鮮度が落ちてらっしゃるから』とか言ってマダラの家に逃げ込む癖に」
「似た者同士か。大体ワシだってマダラ殺すの大変だったのに、トバリのことで錯乱状態にある貴様に殺せるはずがないんぞ……まあ、もう済んだことよ。開き直ってマダラと仲良くするがよい」
「……確かに兄者の言うとおり、済んだことをウダウダと言うのは男らしくないな」
「ようやっと納得してくれたか。帰れ。座るな。腰を上げろ
「しかしだな兄者、組手をしてからというものトバリがワシを構ってくれんのだ」
「帰れ。ワシはツナの縁結びで忙しいと言うてるのに何故ソファに身を預けた。トバリと話せ」
「それが避けてるは避けているのだが、ワシがグーパンしたのを根に持っているのだと思う。毎日ワシの朝食にグーパンしたアンパンを差し出しおって……まあ、別に食事など必要ないのだが」
「貴様、あんだけ可愛い可愛い言ってた孫に男女平等パンチ出来るの凄すぎぞ。ワシは無理」
「顔は避けた。みぞおちに決まった。あの時は兎に角トバリを行動不能にするのが優先された」
「そこまでしておいて、毎朝律儀にアンパンくれるだけ恵まれているのでは」
「それが……落ち着いて聞いてくれ、兄者。困ったことに根に持つ様子が可愛いんだ」
「頼む、錯乱状態にある弟から『落ち着け』と言われる兄の気持ちを汲んでくれ」
「拳の形に凹んだアンパンをワシに供してから、トバリはじっとワシを見つめてくる。恐らく謝罪が欲しいのだろう。そして、あわよくば自分とマダラの仲を祝福して貰おうという打算があるに違いない。天地がひっくり返っても祝福なぞしないが、疑惑と不満の入り混じった表情でこちらを見つめる最中、時折目を瞑って恍惚としてるのが極めて愛らしい。分かるか兄者、幸せそうなんだ」
「見合い写真とか忙しいとかそう言うのを抜きにしても本当に帰って」
「これが組手の前なら、形ばかりの朝食を終えるなりマダラのところへ消えてしまうのに、腹パンしてからというものワシのあとをついて回って――疑うなら、兄者もツナを殴ってみると良い」
「そんな愚行に及んだら、ツナがついて回るとか回らない以前にワシの体が霧散する」
「不服そうなんだ」
「誰だって祖父に腹パンされたら不服ぞ」
「しかも、根に持っている」
「こうまで露骨に謝罪を要求しているのに一切の謝罪もないのは根に持って当然ぞ」
「今日なぞ、ワシのあとをついて回って、痺れを切らしたのか『なにか私に言うことがあるのでは?』と謝罪を急かしおった。膨れ面だ。膨れ面で、しかもワシの上着の袖を掴んだあたりに『今日こそ絶対謝罪させる』という意気込みが見えた。馬鹿な奴だ……可愛いだけだと言うのに」
「ワシの生前はこんな風ではなかったのに……サルと戦った時も……第四次忍界大戦の時も……」
「そして、またうっかり自分に都合のいいことを考えたのだろう。至近距離での恍惚は凄い。目を瞑り、幸せを――まあ、その幸せは成立しえないのだが――噛みしめる。最早可愛いの権化と言っていい。嫁に行かす気は完全に失せた。ずっとじいじと一緒に暮らそうと言うところであった」
「言うところだったというか、それよりヤバい発言をしまくっとることに早く気付いて欲しい」
「そういうわけで何かの間違いを犯してしまいそうになったから暫く兄者の家に世話になりたい」
「良いから貴様はさっさと家へ帰ってトバリに『腹パンめんごめんご(てへぺろ)ワシにも腹パンして、それで手打ちにして笑』って言うてこんか……ちゃんとごめんなさいするんぞ……」
「兄者に腹パンされたのであれば、無論アレは根に持たなかったであろう。そうでなければあの大蛇丸とやら相手に談笑出来るはずがない。正直トバリが大蛇丸と仲良くしてるの引く」
「貴様、孫娘の信頼を土足で踏みにじった自覚ある?」
「トバリがワシに殴られたのを根に持つのは、おじいさまは絶対酷いことをしない、おじいさまは私が不服な様子を見せれば謝ってくれるという甘えが存在する証拠だ。可愛いが過ぎる」
「兄弟のなかで一番利発だった貴様が、ごめんなさいも出来ないジジイになってしまうとはな」
大体トバリもサルに金的したのに謝罪してないし、ワシも別にする必要なかろう
「突然の正論は止めんか。実際、痛覚が鈍っていると分かっていても、やはり金的は怯むな……」
「正直言って養父の股間をなんの躊躇いもなく蹴りあげるあたり何らかの遺伝を感じた」
「そういえば千年殺しも貴様が思いついたのだったか。祖父と孫とは名ばかりで、大して血の繋がりもないくせに何故短所ばかりが受け継がれているのやら……まあ褒められた戦術ではないものの、金的で怯ませてから挿し木の術で物理的に動きを止めるのはワシもちょっと感心した」
「サルは火水風土雷全ての忍術が使える上にフットワークが軽いのが強み。最前線を好むのは兄者と同じだが、一撃で敵を掃討する攻撃力がない代わりに細々とした技巧が得意だな」
「貴様は後方で相手の出方を伺うタイプじゃし、サルが止められると否が応でも隙が生まれる」
「……一番の敗因はリサーチ不足だ。寧ろマダラ一人を相手取ったほうがよっぽど動けたわ」
「ああ、そういえば貴様はマダラの戦術とか癖とか気持ち悪いレベルに調べ上げとったな」
「ワシが好きで調べていたかのような口ぶりはやめろ。何の裏付けもないくせ兄者が如何してもマダラは帰ってくる、ワンチャンあるとか言うから、ワシが万一に備える他なかったのではないか」
「分かっとる、分かっとる。だから、ちゃんとワシもマダラを殺したろうが」
「当然だ。尾獣を他里に分配しておいて、自里には何も残ってません、尾獣に対抗しうる木遁使いは初代火影以降一人も産まれませんでしたでは、後の世の者たちに顔向けが出来ない」
「ワシとて、いつまでもマダラを野放しにしておくことは出来まいとは分かっとったが……貴様、やっぱりワシに『早くマダラを殺せ』とせっつくために五影会談の実現に奔走したんぞ」
そうだ。半世紀以上も忍界を引っかき回した特級戦犯の排除をせっついたからといって、何か問題はあるのか。ワシも詰まらん欲を出さずに、さっさと奴を火葬するべきであった
「掛け替えのない友を自らの手で殺した兄に対して、労りの気持ちはないのか?」
「ない。しかし、木遁使いと本気で戦った経験が一度もないのは困りものだな」
「この時代はヤマトとトバリで二人おるが、ワシらが生きてた頃はほんにワシだけだったしのう」
「何せトバリがまともに戦う姿を見るのも初めてのこと。それも、最も身近な木遁使いであるところの兄者とは、まるで戦い方が違う。一度、じっくり手合わせ願いたいところだ」
「腹パンの恨みがある限りは無理じゃろうな」
「兄者ほどの火力が望めないのもあって、戦闘スタイルはサルに似ていたな。やはり影響を受けているのだろう。ただサルと比べれば、体捌きに無駄が多いのが難点か。先達てはそれが有難かったのだが……どうも抜刀術に現を抜かして、体術は疎かにしていたらしい。いや、体術を極めるのは良き師に出会えるか否かが大きいから、あながちあれ一人の怠惰とも言い難いな」
「ワシらの世代は良くも悪くも父親かもしくは親類の何れかが一族の威信をかけて熱心に指導してくれたが、核家族化の進んだ時代に体術を極めるのは困難なのであろう。致し方なし」
「……体術が苦手、無駄な動きが多いかと思えば、突然人体可動域を無視した動きを取るし、妙にすばしっこいし、耐久力高いし、バテないし、怯まないしで、対処し辛いことこの上なかったわ。あれが男であれば、兄者に負けずとも劣らぬ忍になったであろうに――惜しいものよ」
「痛みに耐えることが出来、人間離れした回復力があるとはいえ、体は正直じゃの。女子のそれは、如何しても男より脆いものだ。トバリの能力には天井がない分、ワシやツナの使う“創造再生”より時間が掛かるのであろうが……それを差し引いても、あの無尽蔵のチャクラは十分な脅威ぞ。増して頭を使って攻撃してくるから困るものよ。サルと違って多種多様な忍術で相手を翻弄できるわけではないが、あの渋とさでは、確かに貴様の言うとおり一撃で終わらせる他ないな」
「そうだ。それ故、ワシに出来ることは一つしかなかった」
だから思い切り腹パンしたと
だから思い切り腹パンした。仕方あるまい。兄者かマダラのようなパワー系ゴリラでなければ、トバリは止められない。トバリを止めなければ、マダラを殺すことが出来ない」
「ゴリラじゃないもん。人間だもん」
「ワシは“千手トバリ”という一人の忍に対する精一杯の敬意を込めて全力で腹パンした。それを、誰に咎められる謂れもなかろう。手合わせの最中に何が起ころうと、それは自己責任だ」
「肉を切ろうとした挙句の骨折り損で、当のトバリに『殴った!』と嫌われてれば世話ないぞな」
「嫌われてはいない。ちょっと不貞腐れているだけで、ワシのことが好きなんだ」
「全く……昔っから貴様は他人より賢く立ち回っているようで、結局は一時の感情で全てをフイにするのが得意よな。ワシより長く生きても、その損な性分を改めることは出来なんだか」
「突然真っ当な説教を始めるのはやめろ」
「自分の感情を偽るのが苦手で、他人の感情の機微を察するのが苦手で――本当に、貴様は兄弟のなかで一番利発だったが、それと同時に一番の問題児だったわ。仮にも里長ともあろうものが真っ先に自らを危険に晒すなど、ワシが同じことをすれば貴様は烈火の如く怒るはずぞ」
「それは違うぞ、兄者。ワシはそもそも人の上に立つ器ではない。火影の名を継いだのは、兄者の次に相応しい忍が育っていなかったからに過ぎない。所詮は消去法で、無論ワシなりに最善を尽くしたつもりではあるものの、結局のところワシの役目は火影の名に相応しい人間を見つけ育てることだった。しかし、兄者はそうではない。少なくともワシの知る限り、兄者の代わりになる忍などこの地上に存在しなかった。兄者はこの里の象徴であり、切り札だった。マダラ相手には兄者以外太刀打ち出来なかったから仕方なく送り出したが……ワシと兄者では、話が違う」
「ヒルゼンたちからあれほど慕われておいて、そのようなことを言うのは自己卑下が過ぎる」
「ワシは事実を述べているだけよ。マダラが里に残っていれば、ワシは里長にはならなかった。そうしたら、兄者は未だ生きていたかもしれん。マダラ以外の人間に、兄者を殺すことは出来まい」
「いつまでも生き永らえて、やれ口煩いだのなんのと言われるのはお断りぞ」
「今まさにいつまでも成仏せずにやれ“しぶとい”だの“執念深い”だの言われているがな……」
それは貴様に言われたくないんぞ!? もう良いから、兄の真面目な話を茶化す余裕があるならさっさと家に帰らんか!! それで、トバリに腹パンのことを謝ってこい!!!」
「謝ったらまたワシを構わなくなってしまう。いつまでもワシに当てつけていて欲しいんだ」
「いや、そんなにトバリに構って欲しいなら尚更さっさと帰ったらよかろう」
「だから一線を越えてしまいそうだと言っているだろう」
「もう良い、勝手に越えてろ。どうせ出るものがあるでもなし、二人とも成人越えた忍なのだから、手淫でも口淫でも素股でも何でも自己責任で好きにするがよい。ただし貴様は腐っても二代目火影。十中八九マダラと修羅場る際には他人に累の及ばない山中か荒野で殺し合うように」
「ワシがトバリに向けるものは性行為で昇華されるような俗なものではない」
「じゃ〜もう、何がしたいんぞ?」
「……幼児退行したトバリを膝に乗せたり、オヤツをあーんしてあげたり、もじもじするトバリに『大きくなったらおじいさまのお嫁さんにしてくれる?』とか耳打ちされたり、頬に軽く口づけ手もらったり、一緒にお風呂に入って髪を洗ってやったり、兎に角はちゃめちゃに甘えられたい」
「うむ、分かった。なんかヤバい扉を開けてしまったのは分かったら一回閉じよう
「一度膝には乗ってくれた」
「扉間、もうその話は止めろ……老い先皆無の兄からのお願いぞ」
目覚めた
永眠して
「ワシの膝に座って、また口にすることが可愛い。頭を撫でるおつもりですか、と来た。曰く自分は疾うに成人していて、子ども扱いされるのは些か不満であると、しかしワシが家族に迎えたばかりの孫を膝に乗せた上で頭を撫でてみたいのであれば無論従いますと殊勝な面持ちで言うわけだ」
「で、撫でたらトバリがはちゃめちゃにデレて超絶ハッピーだと」
「いや撫でなかった」
「何て?」
「如何もこうも、頭を撫でられるものと思っていたのに撫でられずに不満を覚える孫が可愛いからに決まっている。昨日は“ナデナデシテー”と発する絡繰り人形を撫でながら『こう、頭を撫でることで謝意を示しても良いのですよ』と主張する姿が見られ、非常に愛らしかった」
「……貴様が幸せなら、兄ちゃんはもう何も言うまい。好きにするが良い」
「では暫く厄介になるとしよう。兄者と一つ屋根の下で暮らすのも久々だな、宜しく頼む」
「あのな、自分の好きにするのは自分の家のなかでのみにしてくれ」
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