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▼ 送りウサギ

「あ、ハンサムだぁ〜」

バーで飲んでいるから迎えに来て、歩けない、と連絡が来て迎えに来てみればすっかり出来上がった彼女がいた。

「やっぱり来てくれた〜」

上機嫌で僕の腕に絡みつく。胸元のあいたワンピース、グロスのとれた唇、潤み赤みを増した目元。


「帰りますよリツ」

「えー、ハンサムも一緒に飲も?」

ね、と首をこてんと倒し視線を絡める。

「飲みませんよ。車で来てるんですから」

やれやれとため息をつきながら彼女のカバンを取り、腰に手を添え帰宅を促す。


「まったく、アナタぐらいですよ僕を足に使うのは」

「えー、でも虎徹さん呼んだら怒ったじゃん」

「それは……」

「あとアントニオとかキースとか。ハンサム以外呼んでもなぜかハンサムがくるよね?」

だから今回は直接あなたを呼んだの。

そうアルコールのせいで舌足らずなリツはへらりと笑った。

僕に連絡が来るのは当たり前だ。ヒーロー全員に根回しをしているのだから。

「ねえ、ハンサム」

「僕はバーナビーです」

「え、名前呼ぶとかなんか照れる」

さんざん他のヒーローの本名を呼んで置いて僕だけは『ハンサム』


「ハンサムはカッコイイからハンサムなのー」

ふふ、と笑い尻をつかまれた。

「ちょっと!何してるんですか!」

「ネイサンがね、拗ねた男の対処法は尻を掴むか撫でまわすかって言ってた」

なんてことを吹き込んでくれたんだあの人は。


「やめてください」

「良いではないか良いではないか」


にひひ、とおよそ女性とは思えない下卑た笑いを浮かべる。

こんな女性と一緒にいるところをパパラッチされたらたまったものではない。

僕はため息をついて彼女を抱き上げた。

「おおっ?ハンサム力持ちー!」

「黙っていてくださいね」

黙っていればこの人は美人なのに。
僕は足早に車に戻り彼女を押し込めた。

「うえ…ハンサムきもちわる……い」

「ちょっと!吐くなら外でーー!」

なんでこの人に惚れたのかはわからない。
でも、彼女にいつか『バーナビー』と呼んで欲しくて、
酔った彼女を誰にも任せたくなくてこうして世話を焼く自分がいる。

「うっそー☆」

僕は怒りに任せて急ブレーキをかけた。






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