蒼衣が死んだ。 IGOの検査室で検査を終えた直後、薬剤の投与で眠っている最中の事だった。 何がそれを引き起こしたのか。いつも通りの眠りの途中、彼女の魂はふとその身体を脱ぎ捨て、そのまま戻らなかった。 蒼衣が気持ち良く目覚める事ができるように、蒼衣の好きなあの花を摘んで枕元に飾ろう。 そう思ってココが病室を抜け出たほんの少しの間の出来事だった。 ココはベッドに横たわる蒼衣を、ただただ眺めていた。 『容態が急変したのは』『投与した薬の作用が』『心拍の異常値が』と、IGOの医師が数人、ココの後ろから彼を取り囲むように立ち、話す。 医師達は皆、恐れていた。 彼を。彼が起こすであろう最悪の事態を。 皆が皆、言い逃れのように過去のデータやら検査の結果、彼女の欠陥を口々に話していた。話していたが、一人としてココに近づく者はいなかった。 ココはそんな医師たちの言葉を、眉一つ動かさず、静かに聞いていた。 ……ココの手には、蒼衣の好きなあの花が握られていた。 枕元に飾るはずだった花は時の流れに逆らえず、徐々に萎れていく。 それでもココは微動だにせず、蒼衣の横顔を見つめていた。 → |