アジア予選一回戦が近づくある日の放課後。部活から帰ろうと校門を潜った私の体に、勢いよく何かがぶつかって私はあっけなく地べたに転がることとなった。


「ちょっとリカ!みき転ばしてどうすんだよ!」
「久しぶりに会えたんが嬉しくてつい……。みき許してや」
「え、塔子ちゃんと……リカちゃん?」


腰をさすりながら起き上がると、そこにはすこし離れたところで暮らす友人の姿があった。
驚く私に悪戯が成功したかのように笑う二人。どうやら私を驚かす為にずっと校門で待っていたらしい。


「円堂たちの陣中見舞いに来てな。さっき綱海を海に送って来て、そっからみき来るのずっと待っとったんよ。肝心の円堂たちは部屋から出れんらしいし」
「え、綱海くんが海に?それに円堂くんたちが部屋から出られないってどういうこと?」
「ああもう!説明するならもっと分かりやすく説明しろよ。みきが混乱してるじゃないか」


試合まであと何日もないというのに、イナズマジャパンの皆は練習を禁止されただけでなく、部屋から出ることすらままならないらしい。
そこからなんとか抜け出した綱海くんを、塔子ちゃんとリカちゃんは海まで送って来てところのようだ。
大事な試合前の練習場所に海を選ぶなんて、とても綱海くんらしく思う。

選手は部屋から出られないけど、マネージャーの皆はそうではないらしい。
リカちゃんに手を引かれ、宿舎となった学校校舎に足を踏み入れると、久しぶりに会う秋ちゃんたちがいた。


「あらみきちゃん。どうしてここに?」
「そりゃあ、皆にエール送り来たに決まっとるやん。美少女応援団やで。……まあ、誰もおれへんけど」


秋ちゃんの後ろには春奈ちゃん、それに見たことのない制服を来た女の子もいる。
首を傾げると、秋ちゃんがすぐに紹介してくれた。


「こちらは久遠冬花さん。久遠監督の娘さんなのよ」
「はじめまして冬花ちゃん。私はよこうちみきです。雷門でチアリーディングをやってます。よろしくおねがいします」
「あ、こちらこそ、よろしくおねがいします」


綺麗に下げられた頭にこちらのほうが恐縮してしまう。
私より一足先にここに来ていたというリカちゃんたちはもう馴染んだもので、そんな丁寧にしてあんたら見合いかっ!と鋭いツッコミが飛んでくる。


「せっかく来てくれたのにごめんね。今から晩御飯の準備をするところなの」
「え、秋ちゃんたちだけで皆の分を作ってるの?大変じゃない?」
「大変だけど、皆もがんばってるもの。私たちもがんばらなきゃ」
「じゃあ私にも手伝わせてくれない?」



そうは言うが、秋ちゃんたち三人だけで十人以上のご飯を作るのは大変だ。
私に手伝わせてくれたら十人力……とはいかないが、ちゃんと一人分の働きは出来る。
もし迷惑でないなら手伝わせてほしい。そうすれば私も秋ちゃんと話せる時間が出来て嬉しい。
思ったとおりを伝えてみれば、秋ちゃんはすこし考えた後、頷いてくれた。


「ならお願いするわね」
「よっしゃ!うちらも円堂たちのために腕振るうで!お好み焼きなら任せときや!」
「うちらって……あたしは料理なんて出来ないからな」


料理は得意ではないと言いながらも、塔子ちゃんは早速秋ちゃんに指示を仰いでいる。
私のせいで二人まで巻き込んでしまって申し訳ないけれど、こんなふうに皆で料理が出来る機会なんて早々ないだろう。素直に喜んでおこう。


「冬花ちゃん、まず何から手をつければいいのかな?」
「あ、ここに今日のメニューが……」
「ありがとう」


そのメニューを軽く頭に入れて、とりあえずお湯を沸かして、野菜を切るところからはじめることにした。

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