売春、性描写を匂わせる表現があります。
また、風丸がいろいろとおかしいです。
ご注意ください。

これ※R16の続きっぽい。








「え、五万…?」

「そー。やっぱ良いグローブは高いよなー。練習でじいちゃんの使うわけにはいかないし」

「あ、ああ。そうだな」

円堂にスパイクをあげてから一月。結局俺から円堂への頼み事は保留になった。正しくは俺の意気地がないせいで内容を告げられなかったのだが。
そして、今円堂が狙っているのはグローブだそうだ。確かに円堂が使っているグローブはだいぶ古いようだが、それでも五万は高い。きっとまた母親に言っては断られるのだろう。
夏の茹だるような暑さの最中、教室での雑談での円堂の言葉は俺の頭から離れなかった。部活の時間にもそれは変わらず、意図せずに円堂の姿を目で追ってしまう。グローブを見てみるとやはりぼろぼろみたいだ。この分なら遠からず新しいものを勝ってもらえるだろうが、どうせ安物だ。円堂が欲しいものは手に入らない。
それから円堂のスパイクを見る。俺がプレゼントしたスパイク。毎日の練習に円堂がそれをはいているのを見ると心が満ち足りた気分になる。もし、円堂の身に付けている物すべてが俺からのプレゼントになればどうだろう。…考えると胸がどきどきと破裂しそうになる。なんてことだ、まるで俺が円堂の一部になるみたいじゃないか。それはきっととても素敵なことだろう。

「風丸さーん?どうしたんですか?」

あまりにボーッとしていたのだろうか、後輩に尋ねられてしまった。「悪い悪い」、と答え練習に戻りながらも脳内ではいろいろな事がぐるぐるしていた。


帰り道、円堂と別れてからまた前回と同じ地区へと自然と足が向いてしまった。回りを見渡しながら挙動不審に歩く。心の奥底には怖いという思いがあるが、不思議と帰ろうとは思えなかった。前の時とは違い今回はまだ早い時刻で人通りも多い。とりあえず、とジュースを買い近くにあったベンチに腰かけるとやはり声をかけられた。
まだ太陽も照っているというのにバカなやつもいるものだ、そう感じながらも恐怖心はまるきり消えていた。緑川風に言うと、喉元過ぎれば暑さを忘れる、か。




「…撮影、ですか?」

今度の人は若く、せいぜい久遠監督くらいの年に見えた。見た目も悪いわけではなく、好青年風できっと女性にもモテるだろう。それなのに、なんで俺なんかに声をかけたのか。…いやまあ、こっちにしたら好都合なんだけれど。

「そうだよ、五万、欲しいんでしょ?」

いやらしく笑うその人は手際よくビデオカメラをセットする。それから、がさごそと鞄をさぐりセーラー服を取り出した。それをこちらに投げる。

「…着ろ、ってことですか?」

「うん。あと、これからは俺のこと、お兄ちゃん、って呼んでね」

前言撤回。この人は変態だ。そしてきっと女性にはモテない。

シャワーを浴び、セーラー服に着替えると男は満足げに頷き、自らもシャワーを浴びに出掛けた。
することもなく暇なのでベッドに腰かけると、辺りに散らばった男の私物が目に入る。アダルトグッズ、いわゆる大人のおもちゃというやつか。
存在は知っていたが実物を目にするのははじめてだ。手に取るのは躊躇われたのでじっと眺めるだけにしておいたが、やはり"お兄ちゃん"は相当マニアックな趣味をお持ちのようだった。

タオルで頭を拭きながらでてきた男はおもむろにビデオカメラをベッドの正面に置き、なにやらピントを合わせるように覗き込んだ。
俺は手持ちぶさたなので無意味にビデオカメラのレンズを見据える。無機質なそれに今はどうしようもない嫌悪を感じた。逃げられない、そう最後通諜を突きつけられているような気さえした。

「じゃあ風丸くん、自己紹介してくれるかな」

調整が終わったのか、男は俺にそう言った。何のために、理解はできなかったがビデオカメラの機械音に急かされるようにして声を絞り出す。

「風丸一郎太、十四歳…えっと、中2、です」

「部活は?趣味とか」

「……………サッカー部、です」














それから先はよく覚えていない。
男…お兄ちゃんはやたらと俺に色々なことを強いてきた。自分の性癖を網羅したビデオを作りたかったのだそうだ。なんて自分勝手なんだと思ったが、自分勝手度なら俺もいい勝負だろう。
数日後俺宛に一通の封書が届いた。中身はあの行為がおさめられたDVDだった。こっそり見てみたが、なかなかよく撮れてるじゃないか、なんて他人みたいなよくわからない感想を抱く。…これを円堂に見せたらどういう反応をするだろうか、抗いきれない好奇心が沸き上がった。






「円堂、これ、お前が欲しがってたグローブ」

「…え、風丸…なんで、また…。どうしたんだよ!?」

「円堂に喜んで欲しくて、ちょっと、な」

「風丸…」

「……………その代わり、といっちゃなんだけど、このDVD見てくれないか?」

「……」



頼むから拒絶しないでくれ。

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