自らは悪い人間なのだと嘯いた※なまぬるいですが性描写があるので16禁とさせてもらいます。
※円←風ベースにモブ風描写が多分にふくまれておりますので、苦手な方はご注意ください。


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「でさあ、これ、これが欲しいんだよなあ……」

部活帰りに風丸と円堂はスポーツ用品店に来ていた。正しくは、風丸が円堂に連れてこられた形であったが同意の上であったので差ほど違いはないだろう。
その円堂が興奮気味に指差すのは27000円もするスパイクで、とてもじゃないが中学生に手が出せる値段ではない。

「親には頼んだのか?」
「そりゃあもう。土下座までしたけど駄目だった」

何も知らない人は、土下座までしたなら買ってあげてもいいじゃないか、と親に対して思うだろう。しかし、こう見えて円堂はサッカー用品には目がなく、つい先月スパイクを新調したばかりだったのだ。それを知る風丸は呆れたようにため息をついた。

「ならもう諦めろよ」
「ええええ……」

落ち込んでいる円堂を見て、風丸は自業自得だと考える。それと同時にどうにかして気を持たせてやりたいとも思った。つまり、風丸一郎太という人間はつくづく円堂に甘いのだ。

「小遣いだってもう一年分前借りしちゃったしなあ……」

はあ、と円堂は落ち込んだように息を吐く。辺りも暗くなってきたし帰ろう、そう風丸が提案するまで円堂はスパイクから目を離すことがなかった。
何も言わずに二人はとぼとぼと歩く。どうしたら円堂が喜んでくれるのか。その為に自分は何をすべきなのか。風丸はそればかり考えていた。



「本当にいいのかい……えっと、風丸、くん?」

そう尋ねる中年の男を見て、風丸はくすり、と笑う。いいもなにも誘ってきたのはそっちではないか。度胸も覚悟もない人間は風丸にとって嫌いな部類に入る。
ただ、今は好き嫌いを気にしている場合じゃない。お互いに利害が一致したのだから、もう他に問題はないだろう。

「いいですよ……何て呼べば?」
「あ、あぁ。呼び方は好きにしてくれて構わないよ」
「じゃあ、おじ様」

“おじ様”、は小綺麗な格好をした普通のサラリーマンのように見えるし、実際そうなのだろう。ただ、性的嗜好が少し変なだけの。
円堂と道を別れたあと、風丸は家とは反対方向の街へと向かった。最初はただアルバイトか何かを探すつもりだったのだが、そんなときに男から声をかけられた。「おじさんと遊ばない?」、なんてテンプレートな言葉を吐かれた時は悪寒しかしなかったが、その後の「お金なら欲しいだけあげるよ」という言葉に風丸は目の色を変えた。風丸が提示した金額は27000。それに男が応じ、今は安っぽいホテルに居る。

「で、おじ様」

親に帰りが遅くなる旨のメールを送り、携帯を棚の上に置く。色っぽく話しかける風丸を見て、男は息を荒くした。
同年代の女の子よりも、いや、どんなAV女優よりも妖艶なその笑みはおそらく天性のものだろう。末恐ろしいな、と男は頭の隅で考えた。

「俺は何をすればいいんです?」

ベッドに腰掛けた風丸が前に立つ男に尋ねる。軽く首を傾げる姿は愛らしいが、それも全て計算済みなのだろう。
男は風丸のペースに呑まれてはいけない、と風丸をベッドに押し倒し、その手を自らのネクタイで縛り上げた。一応は同意の上で有るのだから拘束する必要はない。それなのに動きを封じたのは征服欲か、それとも他の何かの理由なのだろうか。
ともかく、風丸は特に抵抗もせずそれを受け入れた。

ぷつり、ぷつり、と風丸のシャツのボタンを外しながら男は問いかけた。

「風丸くんは、こういう事なれているのかい?」
「いいえ。全然。知識としては知っていますけど」

特に関心もなかったので。と、続ける風丸に男は少なからず驚いたがそれは致し方ないことだ。だけれど、風丸がこんなにも上手く男の欲を高めていくのは天賦の才としか言いようがない。
ただ、関心がない、というのには少し嘘が混ざっている。風丸は常々とある人に抱かれたい、と考えていた。その人に抱かれたら死んだって構わないと思っていた。だから、初めてが目の前の男に奪われるのだ、と理解し、少し涙がでた。

「風丸くん?」

男は風丸の涙を見て心配そうな顔を作る。しかし、手はしっかりと風丸の肌を撫で上げているのだからその姿は滑稽にしか映らない。

「なんでもないです、おじ様」

そう言ってまた風丸はにこりと笑う。ねっとりとした愛撫の嫌悪感の中、風丸はどうしたら初めてを奪われずに済むか、それだけを考えていた。いっそ女の様に嫌だと懇願してみるか。しかし、それで機嫌を損ねられてお金が手に入らなかったら元も子もないな、と風丸は考えるのを放棄した。

自分の気持ちなどどうでもいい、今一番大切なのは確実にお金を貰うことなのだ。肌を撫でる手はいつの間にか舌に変わっていた。
はあはあと息づかいの荒い男を下に見つつ、風丸は自分自身の息も荒くなっていることに気づく。こんな行為でも体は必死に快楽を得ようとしている、なんて。

「ん………あ、っ」

声が出てしまった。慌てて手で口を押さえようとして、拘束されていたことを思い出す。風丸が恥辱に顔を赤らめると、男はやっと顔をあげ、にやりと笑い掛けた。手の動きを封じたのはこの為だったのか。男は相当の加虐嗜好のようだ。キモチワルイ、風丸にはそうとしか感じられなかったが顔に出さないようになんとかして表情筋を保つ。

「かわいい声だね、風丸くん」
「…は、ぁ……。や、やだぁ」

男はカチャカチャと慣れた手つきで風丸のベルトを外し、ズボンを下ろす。そして右足首を掴み、ベルトで太ももと固定、さらに左足首も掴み上げて風丸はM字開脚のような体制にさせられた。覚悟していたとはいえ懇願するように首を振る風丸を見て、男はさらに興奮しているようだ。我慢が出来ないというように焦る手つきで自身を取り出した。赤黒く先走りによってぬらぬらと光るそれを見て声にならない悲鳴を上げる。

「怖がらなくてもいいんだよ。そうだ、風丸くんは初めてなんだよね。大丈夫、おじさんが優しく教えてあげるから、大丈夫だよ。痛いのは最初だけだから、すぐに風丸くんも気持ちよくなるから――」
「や、やだぁ……やだ、やめて、や、……やめてください。おねがいします……ん、うぅ……」
「何言ってるのかな、やめるわけないじゃないか。風丸くんだってほんとは期待してるんだよね」

にやにやといやらしいえみをつづけるそのおとこが、かぜまるにはえたいのしれないなにかにみえた。


気がつくと性の臭いが充満した部屋には風丸しかいなかった。後処理もされ、服もきちんと着ていた。しかし、風丸にはその記憶がないのでおそらく男が気絶した風丸に対して勝手に行なったことだろう。気持ちが悪い。ふと横を見ると、携帯を重石にして万札が三枚置いてある。それだけで風丸にとって今回の行為は大いに意味のあるものへと昇華した。
「円堂……」

お札を適当にポケットに突っ込み、携帯で時刻を確認すると午後8時30分少し過ぎ。さすがに親が心配するだろうと風丸は急いでホテルを後にする。腰の鈍痛は気にしないふりをした。



「円堂、これ」

満足気な笑みを浮かべた風丸に対し、円堂は疑念を感じながらも手渡された箱を開く。そして、円堂の疑念は驚きに変わった。

「え、……どうしたんだよ」
「円堂にあげるよ」
「い、いや、こんな高いもの貰えないって」

風丸の手渡した箱には円堂が欲しがっていたスパイクが入っていた。てっきり円堂は大喜びするだろうと思っていた風丸はその困惑する様子を見て何故だろうと考える。

「円堂の為に買ったんだぞ?」
「で、でも、27000円もするんだから!普通には貰えないだろ!!」

そうだ、と風丸は折衷案を告げてみる。

「じゃあさ、俺が円堂にそれをあげる代わりに、ひとつお願いがあるんだ」
「え、……うん、ああ。それなら、いいの、かな」
「あのな、円堂――」



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以下ちょっとしたあとがき。

















な が い わ。
ここまで長くするつもりは無かったんですが、いやあモブとの絡みが大好きですいすい進みました。反省はしてます、後悔はしてません。
ちなみに、「おじ様」呼びは最近見た男性向け同人誌から。背徳的な感じがたまりませんね。

さて、真面目な話ですが、風丸さんは円堂さんの為ならなんでもしそう、という観念の基このお話は成り立っています。ちなみに円風ではなく円←風です。本当は矢印100個くらいあってもおかしくない。
最初は風丸さんが体売ることも全部分かっててスパイク欲しいアピールをした円堂さんでしたが、考え直しました。というか、より風丸さんが絶望する方を選びました。満足です。




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