※裏表現有り









「……いざやくん?」

津軽の家から帰って来たのは23時を少し回ったところで、怒られるかも知れないとびくびく震えながらサイケは臨也の家へと足を踏み入れた。だが玄関先から直ぐに見える仕事場兼リビングは物静かで、だが明かりだけが点る室内にサイケは首を傾げ、キョロキョロと見渡しながら入る。
デスクには居ない、キッチンにも勿論いない。まさかと思い黒ソファーの方に近寄れば静寂に浸透するような寝息。

「ただい、ま…」

恐る恐る言葉を投げかけてみる。返事は返って来ない。サイケは僅かな安堵を吐き捨ててソファーの手前に回った。
やはりそこに居たのは紛れも無く、この家の主である臨也の姿であり、手が置かれた胸元には書類の束が乗っている。きっと仕事途中で寝てしまったのだろう。そう言えば徹夜続きだったと臨也が話していた事をサイケは頭の中で思い出した。
眠りに着く臨也の傍にゆっくりしゃがみ込み、その表情を覗き込めば普段はサイケとは違う赤茶けた瞳は瞼できっちと覆い隠されており、薄く開いた口から赤い舌先と規則の正しい寝息が漏れる。
──トクンと、サイケの胸が高鳴るのを感じた。コードと同じ瞳をやんわりと細めて息をコクリと飲み込む。

サイケは臨也が好きだった、それは臨也も同じ。だけど違ったのは"好き"の種類。それに気付いたのは津軽からの告白。
臨也が笑ったから、サイケは津軽と付き合った。彼が望むならば何でもしたいと、だけど、だけどだけど、サイケはそこまで我慢強い訳でもない。臨也が好きなのはシズちゃん、それは、分かっているのだけど──


気付いたら、サイケは薄く開かれた臨也の口に自分の唇を重ねていた。

「ん……ふ…っ、」

鼻を掠った声が臨也の口から零れるのをヘッドフォン越しに聞き、宛てがうだけだったその口づけを深いものに変えて行く。ただ臨也の瞳はきっちりと閉じたまま、眉だけが息苦しそうに寄った。
可愛い、自分と同じ顔を見て率直に思う。だがそれは臨也だからであって、きっと自分がそんな表情をしてもサイケは可愛いとは思えないだろう。早まる鼓動に心地好ささえ感じながら舌で唇を上下にこじ開け咥内に侵入させる。臨也の舌とぶつかりまでほんの数秒、唾液を絡ませた。

「んん…っふ…ぁ…」

無意識に漏れる吐息と甘い声はサイケの鼓膜を酷く犯す。徐々に激しいものへと変わるにつれ臨也の頬は朱に染まり酸欠の状態を訴える。
──このまま酸素ごと奪えてしまえばいいのに、物騒ではあるが純粋な気持ちで思えばサイケは咥内に蓄積された唾液を臨也に口移しで流し込み、徐に口を離した。飲み込めなかった唾液が臨也の口端に伝う。起きる気配はなかった。
サイケは悪戯げに、けれど少し哀しみを含んだ顔でニコリと笑う。

「起きない、いざやくんが悪いんだからね…?」

まるで自分に言い聞かせるように呟いて、ソファーに乗り臨也の身体を跨いだ。素肌を隠すのは黒いインナーただ一つで捲りあげただけで色白い肌は外気に晒される。跡の付かない綺麗な肌に手を這わせ、胸の飾りに指先で触れれば臨也は僅かな反応を見せた。それに気分を良くして指と指で摘んだり爪で引っ掻いたりと遊ぶ手つきで弄れば、ぷくりと立つ突起。赤く色付いてきたそこに濡れそぼつ舌小刻みに触れ、時に咥内へと含む。──甘い吐息が上で聞こえるのを感じて。

「ひ…ゃあ、…んっ」

快楽からか臨也は身を捩り、逃げようとする身体をサイケは押さえ込んで尚も咥内で犯す。腫れ上がるまで、指先で転がして、反応を楽しんだ。

結局サイケが突起から舌を離したのはすっかり赤く腫れ上がった後で、散々弄ばれたそこは触るだけで痛みを伴うのか痛々しげに臨也は眉を寄せ、サイケは上唇を舐めた。浮かばれるのは通常見せる事のない情欲に満ち溢れた表情で。

「……はんのーしてるね、」

手で肌を伝いながら、未だズボンの生地で隠されたそこにたどり着けば、直ぐに分かる猛りに、サイケは嬉しげに言葉を紡ぐ。カチャカチャと無機質な音を立てさせ金具を外しジッパーを下げる。服と変わらぬ下半部を隠す下着事一緒にずり下げれば直に晒される自身。それを包むように触れて上下に扱くようにすれば、先程まで突起に刺激を与え続けてた御蔭か包む手に伝う先走り。感じている事を明白にする白く伝う液体を恍惚とした笑みで見下ろし、サイケは嫌悪することなくその液体を舌で舐めとった。

「……んんぅ…っ」

何を思ってか不意にサイケは人差し指と中指を臨也の咥内に無理矢理突っ込み舌の腹を押す。くぐもった声が鼓膜に届くのを至極愉しげにして唾液を絡ませた。暫くの間そうしてから又唐突に指を引き抜くと身体をずり下げ臨也の脚を掴めば思い切り開かせる。そして自身よりも奥まった個所にある蕾に指を宛てると躊躇う事なく侵入させた。

「ひっ…ぐ…」

苦しげな吐息が臨也の口から溢れる、開拓された事のない場所に許可もなく意識も定かでない時に入れられたのだから当たり前であるが。それでも気にも止めずサイケは狭いそこを広げるように無理に指を動かし溢れる苦痛を含んだ息に満足を覚えた。
指は動かしたままにサイケはゆっくりと自分のズボンに手を掛けて音を静かに立てさせ下着と一緒に膝位置まで下ろす。露にされたのは明確な欲望をさらけ出した下半部。
人差し指と中指で蕾を広げ、熱を篭った自身を宛てがう。

そして、躊躇などする様子もなく、サイケは小さなそこを遠慮なく貫いた。














「ひぁあああアあァあああ゙あ゙あ!」

あまりの痛さに臨也は叫びに似た悲痛な声をあげ閉じていた瞳を見開いた。突然強制的に起こされた脳は正常に機能する筈もなくただ訪れる痛みと裂ける感覚に見開いた瞳からボロボロと涙がとめどなく頬を伝う。何が起こっているかも分からず息すらできない。苦痛しか起きない感覚の中、確かに見えたのは無邪気に微笑むサイケの姿。

「いざやくん、おはよう」
「い…は…っァ…あ」

愛おしむ表情でサイケは臨也に語りかける。だが臨也の口からは息にすらならない声が漏れ、折り曲げられた脚は痙攣を見せた。
サイケの手が頬に触れる。

「だいじょうぶだよ、いたいのはさいしょだけだから」

「さい…け…、ぇ?」

訳が分からない。過去吸になりそうな息を気力で落ち着かせ、それでも理解が出来ずサイケの言う言葉に首を傾げる。そして自然と痛みにいく場所に目を下ろした。だがそれが臨也に絶望を感じさせた。

見下ろした先に、目に映ったのは、晒された自分の下腹部と、そこに埋まる目の前の彼のもの。
寝起きの頭でさえ、なにをされているのは分かった。

「どう?おれといざやくん、繋がってるの」

「な、んで…う、そ…」

嬉々とした態で問い掛けるサイケとは違い臨也は顔面を蒼白にして、嘘だ嘘だと身体を震わせる。瞳から零れる涙は止まらずに力無く頭を振った。

「い、やだ…やだ、抜い、て…ぬいてぇ…サイケ…!?」

「うわっ、あばれないで」

糸が切れたように突如臨也は暴れだし、サイケは慌てて両手で彼の腕を掴み頭上で固定させる。アンドロイドと人間の力の違いなんて明らかで直ぐに臨也の抵抗は無為に帰す。それでも押さえられない脚をはだつかせ叫んだ。

「やだやだやだやだぁ…!おねが…いたい!抜いて…ぇ…っ」

「…っなんで、いざやくんはいやなの?おれと繋がるのはいや?きらいなの?」

「嫌だ、やだぁ…嫌い、きらい…っ」

どちらが子供か分からないほどに臨也は声を荒げいやいやと頭を振る。それに戸惑い聞き返したサイケだったが彼から返された単語にピンク色の瞳を見開いた。
言われたことのない、意味だけは知ってたその単語。大好きな人間から言われた瞬間、浮かばれていた笑みが崩れる。

否定される気持ち、
サイケの中で何かが弾けた。

纏め上げていた手をコードで縛り上げ、未だ暴れる脚を掴み、臨也の胸元までつくように折り曲げ広げさせる。息を飲み込む音が逸れる鼓膜に反響した。


「さい、け…?」

怯えた声が彼から落ちた。

「……俺はね、臨也君が望んだから全部ぜーんぶその事をしてきた、我慢強かったって思ってたの、なのに、なのに、臨也君は俺を否定するんだね」

表情は見えない。それでも淡々に紡がれる言葉はまるで彼のものではなく普段の幼児さを含まない声。耳に残響するその声は聞いた覚えなんてなくて臨也は情けなくも身体が怯えを見せた。


「だったら、もう──」







あげた先に居た彼の瞳は怖い程に無が映し出され、何かを紡ぐ前に貫かれたそこに痛みと快楽を混じえた感覚に、臨也は視界が真っ白になるのを見た。


──壊したっていいよね?






したっていいじゃないか
(俺を好きになってくれないなら君なんて大嫌いだよ)




end


後書きみたいな

サイケが天使じゃない(>_<) 最後を見て分かるようにこのサイケの幼児言葉は造りです。あはっ。なんか臨也が臨也じゃないけど後悔はしてませ(ry

(愛したって、)
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